本日行われた2024年 MLBドラフト 1st Dayにおいて、1巡目・全体26位指名権を持つニューヨーク・ヤンキースはアラバマ大学の先発右腕 ベン・ヘス(Ben Hess)を指名。
過去の1巡目指名選手
年度 | 順位 | 選手名 | PO | HS/CO |
2023 | 26 | George Lombard Jr. | SS | HS |
2022 | 25 | Spencer Jones | CF | CO |
2021 | 20 | Trey Sweeney | SS | CO |
2020 | 28 | Austin Wells | C | CO |
2019 | 30 | Anthony Volpe | SS | HS |
38 | T.J. Sikkema | LHP | CO | |
2018 | 23 | Anthony Seigler | C | HS |
2017 | 16 | Clarke Schmidt | RHP | CO |
2016 | 18 | Blake Rutherford | CF | HS |
2015 | 16 | James Kaprielian | RHP | CO |
30 | Kyle Holder | SS | CO |
ドラフト当日までは高校生ピッチャーに注力していると噂されていたNYY。
そして、本番直前になって大学生ピッチャーの1巡目指名を真剣に検討しているとの怪情報が流れたのですが、結果として怪情報通りのピックとなりました。
また、全体30位以内でピッチャーを指名するのはClarke Schmidt以来7年ぶり。
RHP Ben Hess (@AlabamaBSB) has a chance to cement himself as one of the premier arms in this year’s Draft class. Hess had a strong rookie campaign in 2022, pitching his way to a 4.54 ERA with 50 K across 33.2 IP. He was well on his way to a potential All-SEC and Team USA… pic.twitter.com/6HLqDGnKfb
— Peter Flaherty III (@PeterGFlaherty) November 3, 2023
Ben Hess
ベン・ヘス:45 FV
21歳9ヶ月(2002年9月生):196cm/115kg
SP/RHP:アラバマ大学(3年生)
Draft Prospect Rankings |
|
メディア | 順位 |
Baseball America | 38位 |
MLB.com | 44位 |
Joe Doyle | 47位 |
ESPN | 57位 |
FanGraphs | 58位 |
Baseball Prospectus | 47位 |
The Athletic | 24位 |
Perfect Game | 48位 |
Prep Baseball Report | 78位 |
Azad Earl | 57位 |
Luke Wortman | 62位 |
これまでMLBプレーヤーを2人しか輩出していない無名のチャールストン高校(イリノイ州)にて、6’5″・220 lbの巨体からMax 96 mphを計測するパワーピッチャーとして、イリノイ州高校球界トップクラスの評価を獲得。
ただ、高校最終年度に背骨を骨折したことでナショナル級の評価を集めることはできず、ここ10年間程度パッとしないSEC所属のアラバマ大学へ進学。
フレッシュマン・シーズンとなる2022年シーズンは、ホリデーシーズン(12月頃)に負った左腕の故障によって開幕から3週間程度出遅れ。
ただ、シーズン途中にブルペンからSPローテに回ると、強豪ジョージア大学を圧倒するなど才能の片鱗を見せ、シーズン終了後に参加したCap Cod Leagueでも支配的なピッチングを披露。
翌2023年シーズンは開幕からSPローテの一員として快投を続け、一躍2024年ドラフトの1巡目指名有力候補に躍り出るも、右腕屈筋の損傷によって3月限りでシーズンエンド。
前年に活躍を見せたCap Cod Leagueもパスする結果となりました。
Year | Age | Tm | Lg | ERA | G | GS | IP | H | HR | BB | SO | WHIP | BB9 | SO9 | SO/W |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2022 | 19 | Alabama | SEC | 4.54 | 11 | 8 | 33.2 | 23 | 6 | 19 | 50 | 1.248 | 5.1 | 13.4 | 2.63 |
2022 | 19 | Falmouth | CCBL | 1.64 | 3 | 3 | 11.0 | 7 | 0 | 5 | 15 | 1.091 | 4.1 | 12.3 | 3.00 |
2023 | 20 | Alabama | SEC | 3.22 | 7 | 7 | 36.1 | 28 | 7 | 8 | 49 | 0.991 | 2.0 | 12.1 | 6.13 |
2024 | 21 | Alabama | SEC | 5.80 | 15 | 15 | 68.1 | 60 | 13 | 35 | 106 | 1.390 | 4.6 | 14.0 | 3.03 |
Provided by Baseball-Reference.com: View Original Table
そして、今シーズンは開幕直前、犬の散歩中に足首を捻挫するも大事には至らず、初めてほぼフルシーズンをプレー。
特にシーズン序盤(開幕から1ヵ月間程度)に圧倒的なパフォーマンスを見せ、1巡目指名は確実なモノになったと思いきや、その後は球速低下や制球難に苦しみズルズルと成績悪化。
当然ながらパフォーマンス低迷に併せてプロスペクト評価も下落。
1巡目指名のスリーパーと考えるエバリュエイターも少なくはありませんでしたが、一般的には2巡目指名が有力視されていました。
つまり、NYYは1巡目(全体26位)にて相当なオーバーピックを行った形になります。
ちちなみに、アラバマ大学から1巡目指名選手が誕生するのはTommy Hunter以来17年ぶりとなります。
FF | SL | CB | CH | Cmd |
55 | 45 | 60 | 40 | 35 |
FF/be | FF/vel | SL/vel | CB/vel | CH/vel |
99 | 93.9 | 85.2 | 76.3 | 84.6 |
6’5″・255 lbのフィジカルサイズは今クラス上位指名候補のピッチャーの中でも最大クラス。
その巨体を目一杯に用いたハイエフォートなメカニクスは6.5 ftのロングエクステンションと5.5~5.8 ft Rel Zのロースロットを生み出し、ディセプションもそこまで劣っていない印象。
Four Seam – 50/55
2022年から2023年シーズンにかけて球速バンプを経験するも、今シーズンの球速はその中間程度の数字。
2300~2400 rpmのスピンレイトと90%後半のスピンエフィシェンシーによってライディングアクションに長け、5.8 ft Rel ZからAvg 18.9″ IVB・-4.64 VAAを計測。
また、Spin Axisが1:26と少し傾いており、SIのような水平方向成分(Avg 13.3″ HB)を持ち合わせている点も特徴的。
Year | Max Velo | Avg Velo |
2022 | 95 mph | 93.2 mph |
2023 | 99 mph | 94.7 mph |
2024 | 98 mph | 93.9 mph |
Whiff%、Z-Con%、Chase%は何れも優秀で、球速が2023年の水準に復活すれば、プロレベルにおいてもプラスピッチとなり得ます。
Slider – 35/45
小さく曲がるCTライクなピッチで、現時点でのクオリティは△。
一貫して1B(グローブ)サイドに投げ込んでおり、投球割合の18%を占めていますが、プットアウェイピッチとしては用いていません。
NYYはGerrit Cole、Carlos Rodon、Chase HamptonなどFF系ピッチャーにCTを投げさせることを好んでいるので、HessのSLに関しても今後は更にCTに近いピッチへ改造が施されるかもしれません。
Curve – 60/60
5.5 ft Rel Zのロースロットから投げ込まれる11/5 CBは球速に欠ける(Avg 76 mph)ものの、2600~2700rpmとソリッドなスピンレイトを計測し、-16.6″ IVB × 16.1″ HBの非常に大きな変化を見せるプラスピッチ。
2シーズン連続で50%を超えるWhiff%を叩き出しており、In-Zoneでも容易に空振りを奪取。
昨シーズンから今シーズンにかけて投球頻度を11%→18%を増やし、RHB/LHB関係なく2ストライクカウントにて多用。
今シーズン途中に改良を加えているので、これ以上伸び代があるかと言われると…
Changeup – 30/40
FFと10 mph程度の球速差があるCHはVBが小さなSIライクのピッチ。
Whiff%やChase%は平均を大きく下回っており、現時点ではプロレベルで通用するようなクオリティではありません。
投球割合も5%に留まっていて、今後の改善は必要不可欠。
Command – 30/35
高校時代にも制球難に苦しんだ経験があり、大学進学後にコントロールが安定したのは2023年シーズンの短期間のみ。
上述したスケールが大きなメカニクスはリピート性に欠け、特に生命線であるCBのコマンドに苦労。
特にセットアップポジションでメカニクスがバラつく印象で、制球難によってレイトカウントに達することが多く、今シーズンは1イニング当りに17.2球を要しています。
また、私が見た登板では終盤になって明らかにメカニクスを崩していたので、スタミナについても懸念が。
もう少し体を絞るべきかもしれせんね。
Overall – 30 PV/45 FV
結論として45 FVにギリギリ達するプロスペクトとの評価。
上述したようにハイクオリティなスタッフを誇り、スぺ体質と制球難を克服すれば、全体26位指名に十分値する素材。
ただ、ここ数年は大学生ピッチャーの育成に一定の成果を収めているNYYといえども、それが実現する可能性は低く、NYYがスルーしたRyan WaldschmidtやMalcolm Mooreなどソリッドな大学生野手と比べ、アウトカムの期待値は大きく劣ります。
(45 FVの投手プロスペクトがSPローテ6番手以内に入る可能性は約35%、5番手以内なら約20%、4番手以内なら10%程度ですが、リスキーなかつ45 FVのBottom Line付近に位置するHessの場合はそこら辺の確率も下がってくるはず。)
個人的には相手の頭部に死球をぶつけても全く動じないメンタリティに好印象を受けました。
2巡目クラスかつ大学生のHessであれば、全体26位のスロットバリュー≒$3.33Mを大幅に節約できることは当然の話で、2巡目(全体53位)における高校生のオーバースロット指名が期待されましたが、期待に反しヴァンダービルト大学のエースであるBryce Cunninghamをピック。
NYYが1・2巡目で連続して大学生ピッチャーを指名するのは史上初の出来事。
ただ、HessもCunninghamも個人的に好みのプロスペクトではなく、かといって3巡目にオーバースロットで狙える魅力的な高校生プロスペクトはほとんど残っていません。
ハッキリ言って最悪に近いドラフトといった印象です。