ヤンキースのトレードデッドライン補強の記録と実状


ヤンキースの現状におけるチーム戦力の全体像を把握し、今オフの補強予想を行います。

ヤンキースのオフシーズンの補強を考えるにあたって「別にトレードデッドラインでどうにかすりゃええ話やろ」と浅はかな考えが頭に浮かんだのですが、同時に「そもそもこの金満脳筋球団はトレードデッドラインでいつも何やってんだっけ?」との疑問が湧き、ヤンキースの過去のトレードデッドラインにおける補強を振り返ってみようと思い立った次第。

加えて「ここ2年続けてトレードデッドライン補強でやらかしてるけど、そもそもヤンキースとキャッシュマンは同補強が下手クソなんじゃね?」とも考え、そこら辺についてもチョイと検討してみました。

今回取り上げるのは過去15シーズン・2008年以降のトレードデッドライン。別に2007年以前も含めてよかったのですが、その頃は自分がまだ小学生だったためトレードデッドライン時点の状況等をあまり把握しておらず、あくまでもリアルタイムで追った期間のみを対象としました。


目次


各年度のトレードデッドライン補強

各年度の項では短評に加えて以下を記載しています。

  • 「7月までのチーム勝敗」→「8月以降のチーム勝敗」
  • ヤンキース移籍前後のrWARとfWAR
  • ”主な”ヤンキース側の放出選手
  • 選手名にアスタリスクが付くプレーヤーは”獲得がデッドラインから大きく離れている”または”ウェーバートレード期間に獲得した”場合。

選手名赤色は保有期間が翌シーズン以降も残っていたプレーヤー。

2008年

59勝 49敗(.546) → 30勝 24敗(.556)

選手名 rWAR fWAR
移籍前 移籍後 移籍前 移籍後
ゼイビア・ネイディ 2.5 1.1 2.2 0.8
イバン・ロドリゲス 2.5 -0.8 1.2 -0.3
ダマソ・マーテ 0.9 0.0 1.0 0.4
合計  5.9 0.3 4.4 0.9

放出選手:Jeff Karstens,、Daniel McCutchenRoss OhlendorfJose TabataKyle Farnsworth

レイズの予想外の躍進により旧ヤンキー・スタジアム最終シーズンながらも1994年以来14年ぶりとなるPS脱の危機に扮していた2008年。

当時MLB全体トップ50~100クラスのプロスペクトだったJose Tabataを軸にパイレーツでOPS.900以上を残していたネイディ、そしてタイガースからレジェンド捕手ロドリゲスを獲得するも、ネイディは移籍後OPS.700台、ロドリゲスは控え捕手すら下回る成績に。

結果としてTDLブーストは不発に終わり、ポストシーズンを逃しました。

さらに、ネイディは保有期間を1年残していたものの、故障により2009年シーズンはたった7試合の出場に終わっています。

2009年

62勝 41敗(.602) → 41勝 18敗(.695)

選手名 rWAR fWAR
移籍前 移籍後 移籍前 移籍後
ジェリー・ヘアストン 0.4 0.6 0.3 0.5
チャド・ゴーダン -0.8 1.2 1.8 0.1
エリック・ヒンスキー* 0.4 0.0 0.4 0.3
合計  0.0 1.8 2.5 0.9

放出選手:Eric Fryer

シーズン開幕前の補強がガッチリハマったおかげでトレードデッドライン時点に大したウィークポイントが残っておらず、トレードデッドライン前後に行ったムーブは控えめ。

強いて言えばポストシーズンを見据えてリリーフを補強するべきだったと思いますが、本番では既存メンバーが期待以上の活躍を披露。

2010年

66勝 37敗(.641) → 29勝 30敗(.492)

選手名 rWAR fWAR
移籍前 移籍後 移籍前 移籍後
ランス・バークマン 1.7 -0.3 1.7 -0.1
オースティン・カーンズ 0.9 0.0 1.3 0.2
ケリー・ウッド -0.6 1.5 -0.2 0.4
合計  2.0 1.2 2.8 0.5

放出選手:Mark MelanconZach McAllisterJimmy Paredes

7月上旬にマリナーズとクリフ・リーのトレードに合意するも、ヤンキースが差し出す予定だったプロスペクト3人のうち1人(David Adams)についてメディカル面で揉め、他の代替案を模索するも交渉決裂。

代わりにレンタルプレーヤーによる打線底上げを行ったものの、補強した野手2人はロクな仕事をせず、よりによってトレードデッドライン後は先発投手陣が崩壊。

ワールドシリーズ優勝の勢いは一気に衰え、レイズに1ゲーム差で地区優勝を掻っ攫われました。

また、放出したMelanconMcAllisterのその後の活躍は言わずもがな。

2011年

64勝 42敗(.604) → 33勝 23敗(.589)

7月終了時点で地区首位レッドソックスから2ゲーム差を付けらていたにもかかわらず、1998年以来13年ぶりにトレードデッドラインを補強皆無で終了。

この頃のヤンキースはMLB最上級のファームシステムを誇っていたこともあり、当然ながらチームの方針を強く非難されましたが、ラッキーなことにレッドソックスが9月に大ブレーキをかましヤンキースが逆転優勝。

ちなみに、ワンディ・ロドリゲス獲得へ向けてアストロズと交渉を行ってはいたのですが、契約負担について揉めて決裂。

2012年

60勝 43敗(.583) → 35勝 24敗(.593)

選手名 rWAR fWAR
移籍前 移籍後 移籍前 移籍後
イチロー 1.5 0.2 1.5 0.8
ケーシー・マギー 0.4 -0.7 0.5 -0.5
スティーブ・ピアース* -0.1 -0.1 -0.1 -0.1
デレク・ロー* -0.5 0.4 1.1 0.1
合計  1.3 -0.2 3.0 0.3

放出選手:Danny Farquhar

イチロー獲得により話題性抜群のトレードデッドラインでしたが、良くも悪くもデプスに大きな穴は無く、前年に引き続き主力級プレーヤーを獲得することはありませんでした。

デプスに穴が無かったというか、主力が高年俸のベテランだらけで身動きが取れなかったと表現する方が正しいのかもしれないけど…。

2013年

56勝 51敗(.523) → 29勝 26敗(.527)

選手名 rWAR fWAR
移籍前 移籍後 移籍前 移籍後
アルフォンソ・ソリアーノ 0.9 2.1 0.8 1.8
ブレンダン・ライアン* -0.1 0.4 0.0 0.0
合計  0.8 2.5 0.8 1.8

放出選手:ーーー

21世紀唯一のワールドシリーズ優勝を果たした2009年前後の補強のツケ、コア4の衰え、プロスペクトの育成失敗が重なり低迷期へ突入した2013年。

トレードデッドライン時点で地区首位まで8ゲーム差、ワイルドカードまで4ゲーム差を付けられていましたが表面的なチーム成績よりも内状は酷く、半ばあきらめ気味にカブスのサラリーダンプへ乗っかりソリアーノを補強。

そのソリアーノもヤンキース移籍直後は期待以上のパフォーマンスを残し、チーム勝率5割超連続記録更新に大きな貢献を果たしましたが、翌シーズンは一気に衰えシーズン前半戦中にリリース。

8月末に獲得したライアンも短期間に好守を連発し、シーズン終了後2年契約で残留を果たしましたが、ソリアーノと同様に翌年以降は💩。

つまり、2013年シーズンにおいては効果的な補強だったものの、翌2014年以降は同補強がチームの足を大きく引っ張ったわけですね。

2014年

55勝 52敗(.514) → 29勝 26敗(.527)

選手名 rWAR fWAR
移籍前 移籍後 移籍前 移籍後
チェイス・ヘッドリー 0.9 2.7 1.1 2.3
マーティン・プラド 1.1 2.1 0.3 1.2
スティーブン・ドリュー -0.1 -1.0 0.3 -1.0
クリス・ヤング* 0.1 1.0 0.0 0.9
ブランドン・マッカーシー -0.6 1.6 0.9 1.7
クリス・カプアーノ -0.3 0.3 0.0 0.7
合計  1.1 6.7 2.6 5.8

放出選手:Yangervis Solarte 、Kelly JohnsonVidal NunoPeter O’Brien

キャッシュマンGMにとってキャリア最高のトレードデッドライン補強。

不調に陥っていたベテラン選手に目を付け、獲得した6人中5人がヤンキース移籍後に大復活。

SolarteNunoの放出については賛否があるでしょうが、プロスペクト温存とチーム戦力大幅アップを両立させた物の見事なムーブでした。

結局のところは田中将大の故障やジーターテシェイラなどベテランの成績低下が重なり、シーズン終盤もチーム全体成績が上向くことはありませんでしたが、この一連の補強が無ければ最終的に負け越していたかもしれません。(こんなタイミングで無駄に成功を収めるとは!さすがキャッシュンや😘)

ただ、シーズン終了後のプラド放出やヘッドリー4年契約残留は話が別。

ちなみに、フィリーズがマーロン・バードのトレード交渉においてアーロン・ジャッジまたはルイス・セベリーノを要求したとの話も。本当ならイカれてるよな。

2015年

58勝 44敗(.569) → 29勝 31敗(.483)

選手名 rWAR fWAR
移籍前 移籍後 移籍前 移籍後
ダスティン・アクリー 0.2 -0.2 -0.6 0.4
合計  0.2 -0.2 -0.6 0.4

放出選手:ーーー

トレードデッドラインまでは地区首位を快走し復活を遂げたと目されていたヤンキース。

肝心のトレードデッドラインではクレイグ・キンブレル獲得へ向けてパドレスにアプローチを行い、最終的に「ホルヘ・マテオ+金銭 ↔ キンブレルジェド・ジョーコ」をオファーするもパドレス側が拒否。

アロルディス・チャップマンの争奪戦にも加わっていたようですが、結局のところ大物リリーバー獲得は実現せず、新たにチームへ加わったのはダスティン・アクリーのみ。

すると見事にチーム成績は低迷し、デビッド・プライストロイ・トゥロウィツキらを補強したブルージェイズへ8月下旬に地区首位を明け渡すこととなりました。

2014年の有能ムーブは何だったんだと。

2016年

52勝 52敗(.500) → 32勝 26敗(.552)

ヤンキースがちんけなプライドを捨てセラー側に回った記念すべきトレードデッドライン。

しかしながら、アロルディス・チャップマンアンドリュー・ミラーカルロス・ベルトランイバン・ノバとのトレードで獲得したプロスペクトの育成には軒並み失敗。

前途ある若者たちに低次元な指導を施し、彼らだけでなく野球界全体の足を引っ張っただけでした。

肝心のヤンキース自体は8月にMLBへ定着したゲーリー・サンチェスの活躍によって、またもや勝率5割超えを果たしていますね。

2017年

57勝 47敗(.548) → 34勝 24敗(.586)

選手名 rWAR fWAR
移籍前 移籍後 移籍前 移籍後
トッド・フレイジャー 1.8 1.1 1.5 1.6
ソニー・グレイ 1.5 1.1 2.2 0.5
デビッド・ロバートソン 1.1 1.8 0.8 1.1
トミー・ケインリー 0.9 0.8 1.4 0.7
ハイメ・ガルシア 1.3 -0.1 1.6 0.3
合計  6.6 4.7 7.5 4.2

放出選手:Jorge MateoBlake RutherfordJames KaprielianDustin FowlerTyler ClippardIan ClarkinZack Littell

アーロン・ジャッジルイス・セベリーノが大ブレイクを果たし前途洋々だった2017年。

トレードデッドラインでは、ダブついてたプロスペクトを一気に放出し、翌年以降も見据えた大補強を繰り広げましたが、取り敢えず短期的な成果は◎

先発ロースターの穴埋めとして獲得したガルシア以外はヤンキース移籍後も引き続き活躍を続け、ポストシーズンでも重要な戦力となりました。

しかし、その後はグレイのピッチングデザインに失敗した挙句、ケインリーはスぺり倒し、ロバートソンもチームスタッフの嫌われ者に。

放出したプロスペクトがさほど大成しなかったとはいえ、長期的に見ると一概に成功だったとは思えません。

2018年

68勝 37敗(.648) → 32勝 25敗(.561)

選手名 rWAR fWAR
移籍前 移籍後 移籍前 移籍後
ルーク・ボイト 0.1 1.3 0.1 1.6
アンドリュー・マカッチェン 2.0 0.8 1.1 0.8
アデイニー・エチェバリア 0.5 0.0 0.4 -0.1
J.A.・ハップ 1.8 1.4 2.0 1.0
ランス・リン 0.1 0.3 0.7 2.0
ザック・ブリットン 0.3 0.3 0.0 0.1
合計  4.8 4.1 4.3 5.4

放出選手:Giovanny GallegosBrandon DruryBilly McKinneyTyler AustinChasen ShreveDillon Tate

トレードデッドライン後に獲得したマカッチェンも含め主力級のレンタルプレーヤー4人全員が移籍後に活躍を見せたうえ、それまでAAAAプレーヤーだったボイトが一大センセーションに。

勝率7割前後を推移するレッドソックスには及ばなかったものの、2009年以来となるシーズン100勝に到達。

ただ、前年の補強とは異なりポストシーズンで彼らが機能せず、ALDSではレッドソックス相手に歴史的大敗を喫しました。

また、シーズン終了後はブリットンに大型契約を与えたうえに、愚かにもリンをスルーしハップと契約。トレードデッドラインでのお釣りを全てオフに吐き出す形となりました。

肝心のボイトのトレードについても、放出したGallegosがカージナルスにてリリーフエースばりの大活躍を披露しており、考え方次第ではヤンキースの負け。

2019年

68勝 39敗(.636) → 35勝 20敗(636)

6月中旬にエドウィン・エンカーナシオン獲得の先手を打ち、地区レース独走状態で迎えたトレードデッドラインでは、ポストシーズンを見据えた先発補強を見込まれていたものの、2011年以来8年ぶりとなる補強ゼロで終了。

ただ、先発獲得に向けて様々なアプローチを行っていたようで、ダイヤモンドバックスとロビー・レイのトレード交渉を行うも、クリント・フレイジャークラーク・シュミットを要求され断念。

さらに、FA直前だったザック・ウィーラーのトレードにメッツと合意するも、パッケージに含まれるプレーヤー(詳細は不明)がフィジカルテストに引っ掛かかり実現せず。

フィジカルテストに引っ掛かったのがヤンキース側のプレーヤーだとすると、恐らくジョナサン・ロアイシガだったのではないかと。

2020年

60試合短縮シーズンのため省略。

2021年

55勝 48敗(.534) → 37勝 22敗(.627)

選手名 rWAR fWAR
移籍前 移籍後 移籍前 移籍後
ジョーイ・ギャロ 4.2 0.5 3.7 0.5
アンソニー・リゾー 1.2 0.5 1.7 0.4
アンドリュー・ヒーニー 0.8 -0.5 1.6 -0.5
クレイ・ホームズ 0.0 1.3 0.2 0.9
ジョエリー・ロドリゲス -0.6 0.3 0.3 0.4
合計  5.6 2.1 7.5 1.7

放出選手:Ezequiel DuranJosh SmithGlenn OttoTrevor HauverKevin AlcantaraLuis CessaDiego CastilloHoy Park

シーズン前半戦に数多くのプロスペクトが頭角を現し、補強に加えプロスペクト整理に意味合いも強かったトレードデッドライン補強。

リリーフの2人は期待以上の活躍を披露したものの、主力級の3人は全員が期待未満のパフォーマンスに。

さらに、保有期間を1年残していたギャロは翌年も引き続きクソを垂れ流し、放出したプロスペクトも半数以上が順調。

ホームズが現在の活躍を今後も続けたとて、ギャロのマイナス分を補うには不十分なのでは?

また、トレードデッドライン後にチーム成績が大きく向上していますが、新加入メンバーのおかげではなく既存メンバーが頑張っただけです。

当時の投稿

2022年

69勝 34敗(.670) → 30勝 29敗(.508)

選手名 rWAR fWAR
移籍前 移籍後 移籍前 移籍後
アンドリュー・ベニンテンディ 2.5 0.7 2.0 0.8
ハリソン・ベイダー 1.2 -0.1 1.5 -0.1
フランキー・モンタス 1.7 -0.6 1.9 0.1
スコット・エフロス 0.7 0.4 1.2 0.1
ルー・トリビーノ -0.9 0.7 0.0 0.2
合計  5.2 1.1 6.6 1.1

放出選手:Jordan MontgomeryKen WaldichukLuis MedinaHayden WesneskiJP SearsJoey GalloT.J. SikkemaBeck WayChandler Champlain

4分の5が赤色に染まっていることからも分かるように、翌年以降も保有期間を有するプレーヤーに焦点を当てた補強。

そのため真価が問われるのは来シーズンとなりますが、取り敢えず今のところ🤮🤮🤮

”補強”ではありませんがギャロとのトレードで獲得したクレイトン・ビーターが好調だったことは唯一の救い。

当時の投稿


移籍前後の成績推移について

※ここからはrWARとfWARを区別せず、両WARの平均値を用いて話を進めます。

前章では各年度のトレードデッドライン補強をおさらいしましたが、次はそれを踏まえデッドライン前後の補強選手の成績推移について記します。

まず、「”移籍前のWAR”÷”7月31日までの試合数”×”8月1日以降の試合数”=”見込みWAR”」として、移籍前のWARからトレードデッドライン後の残り試合で見込まれるWARを算出。

本来なら予測システムの移籍時点における日更新予測値が手に入ればいいんですけどね、仕方ないので上記のような雑な方法を採用します。どっかに過去ログが転がってるかもしれないけど…。

もちろんデッドラインは毎年7月31日に設定されていたわけでなく、補強選手の中にはトレード日がデッドラインから大きく前後しているプレーヤーもいますが、そこまで厳密にやるのは面倒ですし7/8月でスパッと切った方が集計作業において楽なので手抜きします。

次に「”移籍後実際に残したWAR”ー”見込みWAR”=”差分”」として見込み(期待値)と実測の関係を洗い出し、下表に15シーズン分(実質12シーズン)まとめました。

(差分がプラスであれば、見込み以上の数字を残したことを意味する。)

年度 移籍前 見込み 移籍後 差分
2008 5.2 2.6 0.6 -2.0
2009 1.3 0.7 1.4 0.6
2010 2.4 1.4 0.9 -0.5
2011
2012 2.2 1.2 0.1 -1.2
2013 0.9 0.4 2.0 1.5
2014 1.5 0.8 6.8 6.0
2015 -0.2 -0.1 0.1 0.2
2016
2017 7.1 3.9 4.5 0.5
2018 4.6 2.5 4.8 2.3
2019
2020
2021 6.6 3.8 1.9 -1.9
2022 5.9 3.4 1.1 -2.3
合計 37.5 20.6 24.2 3.2

単純に言えば、過去15年間・12回のトレードデッドライン補強においてヤンキースの獲得選手は見込みよりも3.2WAR優れたパフォーマンスを記録

ただ、神憑り的な成功を収めた2014年の+6.0WARという異常値を除けば、残り11回の合計は▲2.8WARと喜ばしくない数字にとなります。

で、この+3.2WAR(▲2.8WAR)という数字ですが…………良いのか悪いのか分からん🤪

なんかヤンキースは成功と失敗を繰り返しゼロへ収束に向かっているような気がしますが、他のチームの数字も調べてみないとMLB全体におけるヤンキースの立ち位置を把握し様がありません。

そもそも+3.2WARを12で割ってシーズン単位の差分を弾くと約+0.27WAR。WARのような複雑かつ不正確な指標においては誤差の範疇であって、この結果から過去15年間におけるヤンキースのトレードデッドライン補強の是非を導き出すのはちと厳しい。

そもそも上表は補強選手全員をレンタルプレーヤーと扱っていて、翌年以降のパフォーマンスは一切考量してないからね。それについて調べれば悪い結果が得られる可能性は高いけど…….。

まぁ何にせよここ2年間はクソだわ。

2020年シーズンがコロナで半分逝って良かったかもな。そうじゃなければ今頃チームにロクでもない不良債権がまた1・2人増えてたんじゃない?

デッドライン前後のチーム成績変動について

次はトレードデッドライン前後におけるチーム成績の変動についてです。

「”8月1日以降の勝数”ー”8月1日以降の試合数”×”7月31日までの勝率”=”勝数差分”」として、「トレードデッドライン後における実際の勝数」と「トレードデッドライン後もデッドライン前と同じ勝率を残した場合の勝数」の差分を求めました。

つまり、勝数差分が大きいほどトレードデッドライン後(8月1日以降)に期待以上の成績を収めたというわけです。

年度 TDL前勝率 TDL後勝率 勝数差分
2008 .546 .556 0.5
2009 .602 .695 5.5
2010 .641 .492 -8.8
2011 .604 .589 -0.8
2012 .583 .593 0.6
2013 .523 .527 0.2
2014 .514 .527 0.7
2015 .569 .483 -5.1
2016 .500 .552 3.0
2017 .548 .586 2.2
2018 .648 .561 -4.9
2019 .636 .636 0.0
2020 - 
2021 .534 .627 5.5
2022 .670 .508 -9.5
合計 .580 .567 -10.9

ほぼ毎年のようにトレードデッドラインにて補強を行いチーム戦力とデプスを整えているはずですが、TDL前勝率>TDL後勝率の結果に。

これは常にFA補強を行い年齢層が高くなりがちなヤンキースの性なのか、それともセプテンバーコールアップの活用方法がマズかったのか、他のコンテンダーも同じような傾向を示しているのかは分かりませんが、トレードデッドラインで補強を行ったとしてもチーム成績の向上を期待すべきではないかもしれません。逆に期待すべきは補強に失敗したライバルチームの成績悪化?

そして、”本章で導き出した勝数差分”と”前章でまとめた補強選手移籍後の合計WAR(以下移籍後WAR)”の比較を実施。

その結果が下記グラフとなりますが、移籍後WARと勝数差分の間にわずかな正の相関関係が見受けられます。ただ、いくら何でもサンプル数が少な過ぎるので、これ以上話を進めるべきではないでしょう。

前章と本章の内容はトレードデッドライン補強の履歴を調べたついでにやった事なのですが、”ついで”から得られた結果なんて大して使えないですね。やっぱり事前にある程度のゴールは設定しておかないと。

そもそも選手補強なるものはロースターの置換行為であって、新規獲得プレーヤーの単なる成績ではなく既存プレーヤーとの収支が重要。

本当なら各年度毎の補強スポットの既存プレーヤーもチェックして、新規獲得プレーヤーと既存プレーヤーの収支をチーム成績変動と比較すべきなのでしょうが、更にそんなメンドクサイ事を追加でやりたくないからもう終わる。

総括と雑感

まず、ヤンキース(キャッシュマンGM)がトレードデッドラインにてゲームチェンジャー級のスター選手を獲得することはありません。もちろん2010年のクリフ・リー獲得未遂に加え2004年にエステバン・ロアイザ、2006年にボビー・アブレイユを補強していますが、現在はリーズナブルな中堅クラス補強にてウィークスポット埋めるアプローチを徹底しています。

毎年のようにファンは目玉級のトレード候補について騒いでいますが、どうせそんな一級品に手を付けることはないので無視して構いませんね。(オフシーズン補強ではスター選手獲得をガンガンかましています。)

また、非レンタルプレーヤーの補強は最終的に失敗に終わる場合が多く、レンタルプレーヤーについてもシーズン終了後の取捨選択(残留or退団)が上手くいっている印象は△。

かつては意外にもトレードデッドラインにおけるプロスペクト放出を渋っていたようですが、最近はロースター管理上ダブつくプロスペクトの安売りも目立っており、プロスペクトという名の補強資産の活用法に改善が必要なのでは?

(オフシーズン開始直後にアップするような内容じゃないわな。半年後にやれば良かった。)

最後にfWARだけのバージョンについて

移籍前後の成績推移について」では、考え無しにrWARとfWARの平均値を用いて議論を進めました。

しかし、(あくまでも感覚的な話ですが)投手においてはRA9、野手においてはDRSの影響によってrWARの短期間における変動性がfWARよりも大きく、移籍前後のパフォーマンスの挙動を評価するにアレな気がしたため、両WARの平均値とは別にfWARオンリーで移籍前後の成績推移や期待値との差分を算出。

すると……なんということでしょう!!!

ご覧ください。見込みWARと移籍後WARの差分はたった0.2となりました

年度 移籍前 見込み 移籍後 差分
2008 4.4 0.9 2.2 -1.3
2009 2.5 0.9 1.4 -0.5
2010 2.8 0.5 1.6 -1.1
2011
2012 3.0 0.3 1.7 -1.4
2013 0.8 1.8 0.4 1.4
2014 2.4 5.8 1.2 4.6
2015 -0.6 0.4 -0.4 0.8
2016
2017 7.5 4.2 4.2 0.0
2018 4.3 5.4 2.3 3.1
2019
2020
2021 7.5 1.7 4.3 -2.6
2022 6.6 1.1 3.8 -2.7
合計 41.2 23.0 22.8 0.2

ここからはあくまでも全て「fWARを根拠に話をすれば」という注釈付きになりますが、結局のところヤンキースが補強した選手なんて移籍後も前所属時代と同じようなパフォーマンスを残しているというわけ。

選手を獲得する度に「ヤンキー・スタジアムなら…」「ヤンキースの指導スタイルにハマれば…」「不運によって低成績に甘んじているだけで…」「コンテンダーに移りモチベーションが向上して…」だとかファンは口々に言っちょるけど、長期的に見れば別にパフォーマンスなんて変わっとらんのよ。

もうテキトーな理屈を並べて獲得選手にあらぬ期待を抱き、その期待通りにならなければ自分勝手に批判するような愚かな行為を、今後は極力控えることにしますわ。

ただ、ヤンキースの補強が下手っぴなだけで、他のコンテンダーは本当により優れたパフォーマンスを引き出してるのかもしれんけど。

コメント

  1. 匿名 より:

    このような記事待ってました……!!