Jim Bowden、Rob Biertempfel、Mark Feinsandらがパイレーツ🔁ヤンキースのブライアン・レイノルズトレード案について議論していますが、個人的には気に喰わない内容。
加えて現地ヤンキースファンのトレード案はさらに無茶苦茶な代物です。
別にジャッジが突然スぺらない限りレイノルズ獲得などあり得ず、今さら検討する必要もないのですが、念のためにレイノルズのトレードバリューとヤンキースの必要対価について触れておきます。
レイノルズのバリュー
レイノルズは2021-22年オフにスーパー2の対象となり、年俸調停寸前に2年1350万ドルにて契約。2023シーズン年俸は675万ドルで、2025年シーズン終了後にFA権を取得。
ルーキーイヤーから1年毎に好不調を繰り返しているため実力を測りづらいプレーヤーではありあますが、各プロジェクション・システムによる2023年成績予測は下記の通り。
(もちろん各システムによってWARの中身が異なりますが、便宜上直接比較を行います。)
- 3.5 WAR:ZiPS
- 4.0 WAR:Steamer
- 3.2 WAR:Marcel(私個人の算出)
- 4.7 WAR:THE BAT X
- 4.3 WAR:THE BAT X
各システムにて1.5WARのレンジが発生していますが、本記事ではそ中央値及び平均値である4.0WARをレイノルズの2023年シーズン予測成績に設定。
レイノルズは今月中に28歳となりますが、現代LB主力級プレーヤーのエイジングカーブの頂点は29歳前後であるため、2024~2025年シーズンも2023年シーズンと同様のパフォーマンスが見込まれると捉えて差し支えないかと思います。
よってレイノルズはFA権取得までに12WARを稼ぎ出すと仮定。
今オフは1WAR=1050万ドル程度のレートでFA契約が結ばれており、レイノルズの予測WARを金額に換算すると12WAR×1050万ドル=1億2600万ドルに。
また、2023~2025年の3シーズンの合計年俸は約4500万ドルと推測されるため、1億2600万ドルー4500万ドル≒8000万ドルがレイノルズのバリュー(余剰価値)となります。
プロスペクトのバリュー
レイノルズ相手のトレードパッケージのメインピースとなり得るヤンキースのプロスペクトはアンソニー・ボルピ、オズワルド・ペラザ、ジェイソン・ドミンゲスの3人。
個人的にはアンソニー・ボルピ=60FVのミドルクラス、オズワルド・ペラザとジェイソン・ドミンゲス=50FVのアッパーハーフ。
さらに、FanGraphsやDrivelineがFVベースのプロスペクト評価額を算出しており、先述の現FA市場における相場を当てはめると、3人のバリューは以下となります。
選手名 | FV | バリュー (ドル) |
アンソニー・ボルピ | 60 | 6000万 ~ 6500万 |
オズワルド・ペラザ | 50+ | 3000万 ~ 3500万 |
ジェイソン・ドミンゲス | 50+ | 3000万 ~ 3500万 |
また、同様に45FVの野手プロスペクトは1200万ドル、投手プロスペクトは900万ドル程度に。
現地のトレード案のほとんどがペラザやドミンゲスをメインピースに据えていますが、彼ら単体ではレイノルズのバリューの半分も満たせず。もちろん2人を55FVのロウワーハーフと評価する媒体も数多くあり、その場合は4000~4500万ドル程度になるとは言え、45FVを3~4人パッケージに追加してやっとレイノルズのバリューに及ぶ形。
ボルピですら45FVが1~2人程度必要な計算となりますが、ボルピ+ペラザ or ドミンゲスだと過剰。
ちなみにヤンキースの45FVプロスペクトは、”甘く見積もると”下記のメンバーに。
野手 | 投手 |
オースティン・ウェルズ | ウィル・ウォーレン |
エバーソン・ペレイラ | ヨエンドリス・ゴメス |
トレイ・スウィーニー | クレイトン・ビーター |
スペンサー・ジョーンズ | ドリュー・ソープ |
オズワルド・カブレラ | ランディ・バスケス |
現況を踏まえた加減
上記でレイノルズとヤンキースプロスペクトのトレードバリューを示しましたが、あくまでも両チームの現況を踏まえていない、言わばネットバリュー。
よって、ネットバリューに対する現況を踏まえた加減についても考える必要があります。
元はと言えばレイノルズのトレード市場流出は契約延長交渉決裂による本人のトレード要求が発端であって、パイレーツからすればマストではないムーブ。パイレーツが過剰な要求を行っているのは当然の話。
さらに、ヤンキースの他にレンジャーズ、マーリンズ、ブレーブス、ロッキーズ、レッドソックス、マリナーズがレイノルズに興味を示したと報じられており、主力級FAプレーヤーの去就が全て決まったこのタイミングでパイレーツが本腰を入れれば争奪戦は必至。
上記の2点を踏まえればネットバリュー+αの対価が必要となる可能性が高いでしょう。
さらに、パイレーツの若手&プロスペクトデプスを踏まえるとボルピ、ペラザ、ドミンゲスの3人がニーズにマッチしているとは考えられず、実際にチームは投手のトッププロスペクトを要求中。
それによってヤンキースの”+α”は更に膨れ上がります。
昨トレードデッドラインにマリナーズがネットバリューの約1.5倍(2000~2500万ドル分オーバー)を叩いてルイス・カスティーヨを獲得しましたが、ヤンキースがレイノルズのトレードを成立させるには8000万ドル+α=1億ドル以上の対価が必要と考えるのが自然ではないでしょうか。
つまり、ボルピ+ペラザ or ドミンゲス+45FV投手のような豪華パッケージが必要となるわけです。
最後に
キャッシュマンはスタインブレナーの茶々が入らない限りネットバリューから大きく逸脱したトレードを行わないシビアなGM。
パイレーツだけでなくヤンキースにとってもマストではないレイノルズ獲得を推し進める可能性は限りなく低いでしょうし、万が一実現したとしてもヤンキースは大きな犠牲を払わなければいけないはず。
そもそも1年間以上もの間、ショートという名のプライマリー・ポジションにトッププロスペクトを据えるため、補強市場の大型ショートに目もくれずチーム編成を進めてきたのに、今さらレフトを埋めるためにボルピ、ペラザを放出するなど論外。
ちなみに、Baseball Trade Valuesでも金額こそ違えどレイノルズとボルピ、ペラザ、ドミンゲスのバリュー比は本記事の評価額とほぼ同じ。
やはり、各ライターやファンのトレード案はレイノルズを過小評価し補強市場やチーム状況を取り違えていると言わざるを得ません。
コメント
なんとなくポルピ1人でも過剰だと思ってましたが、足りないんですねー。やっぱりプロスペクトって過大評価しがちになっちゃいますね。