角田云々でChristian Hornerがレイシストと炎上しているのを見て、Ichiroが低成績を理由にMIAからお払い箱となった時のJeterを思い出しました。
目次
野手
Juan SotoとAaron Judgeがスマッシュしているだけで、他の面子はシーズン前の期待値に近い打撃成績。
ただ、Anthony Volpeはバビっている(.346 xwOBA、.310 xwOBA)おかげで、リーグ上位のrWAR&fWARを残しています。
指標名 | 5月中の合計 | MLB全体順位 |
シーズン合計 | ||
野手fWAR | 7.4 | 1位 |
13.7 | 2位 | |
平均得点 | 4.82 | 5位 |
4.83 | 7位 | |
OPS | .798 | 1位 |
.768 | 1位 | |
wRC+ | 129 | 1位 |
122 | 1位 | |
xwOBA | .365 | 1位 |
.347 | 1位 |
Aaron Judgeのスイング修正
Judgeと言えば、2021-22年オフにお抱え打撃コーチRichard Schenckと共にフォーム改造を行い、2022年シーズンの大活躍へ繋げたことはあまりにも有名。
そして、その結果はトラッキングデータにも如実に表れており、2018~2021年は35.4~38.5を推移していたVBAが2022年シーズンから40をオーバー。2022~2023年の2年間において、月間VBAが39.9を下回ることはありませんでした。
しかし、スランプに陥っていた今年4月は38.8と外れ値を記録。
スイングが異常な状態に陥っていたことは、この点からも明らかです。
Avg VBAの推移
2021 | 2022 | 2023 | 2024 | |
4月 | 5月 | |||
38.5 | 40.6 | 41.3 | 38.8 | 39.9 |
しかし、5月に入るとVBAは2022~2023年の水準付近へ見事に復活。
それに従い、4月は46パーセンタイル(本来のJudgeにとっては有り得ないような数字)に位置していたAttack Angleも、5月には無事90パーセンタイルを超え、2023年の98パーセンタイルへと着実に近づいています。
このことから、Judgeが5月中にスイングの修正に成功したことで、以前のパフォーマンスを取り戻したことが逆説的に証明されるわけです。
下表には、VBAやAttack Angel、Statcastスタッツ等から導き出されるスイングパスの評価指標である”SG Path Score”を記していますが、上述した内容と同様にJudgeのスイング修正についてポジティブな結果が見て取れるでしょう。
SG Path Score(パーセンタイル)の推移
2021 | 2022 | 2023 | 2024 | |
4月 | 5月 | |||
88 | 98 | 98 | 70 | 95 |
ここまでの内容はSwingGraphsから引っ張り出してきたデータとなりますけど、下記投稿のように最近導入されたBaseball SavanのBat Speedメトリクスにおいても同じような傾向が示されています。
Aaron Judge
4月 vs 5月 pic.twitter.com/g5EOKnDLU7— Fordy Ballgame (@ironhorse0619) May 13, 2024
ここでもう1つ問題となるのは、Judgeのスイング修正が誰の手柄によるものなのか?
当ブログでも何度も述べているように、そして現地メディアや元所属プレーヤーから幾度となく批判されているように、NYYはバッティング指導陣に大きな問題を抱えているチーム。
今回の手柄がコーチングスタッフの指導によるものであれば嬉しいところですが、Fox Sportsを報道を見る限り、Judge本人主導によるフィクスのような雰囲気…。
Juan Sotoのスイング改造についても
その並外れた選球眼とスイングスピード、バットコントロールとは裏腹に、そして球界最高級のスイングを持つJudgeとは対照的に、理想的から大きくかけ離れる非効率的なスイングパスを持つことで有名だったSoto。
特に2021年からスイングパスが大きく悪化しており、その改悪によってxwOBAconなどコンタクトクオリティが低下し、低弾道に苦しんでいました。
しかし、今シーズンはAttack Angleがコロナ禍以降初めて50パーセンタイルを上回っており、SweetSpot%やLA分布が大幅に向上。それに連れてxwOBAconやBarrel%も202 wRC+を記録した2020年シーズンと同水準に達しています。
つまり、浮き沈みを経験するJudgeの陰でSotoもスイング改造に着手していたわけです。
彼ほどのバッターが遂にまともなスイングを取り戻したわけですから、パフォーマンスが向上するのも当然の話で、現在の好成績は単なる一過性のものではないと考えるべきかと。
ニワカは「後ろにJudgeがいるからだ」とか「ヤンキー・スタジアムのおかげだ」などと馬鹿の1つ覚えのようにほざくでしょうけど。
Avg Attack Angle(パーセンタイル)の推移(2020年除く)
2019 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
85 | 9 | 48 | 24 | 66 |
SG Path Score(パーセンタイル)の推移
2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
55 | 39 | 38 | 53 |
前回の「2024年ヤンキースの総括と雑感:4月編」で記したようなプルサイドへの打球増も、単にヤンキー・スタジアムの特性を意識しているだけではなく、スイングパス変化によるHAA増大等が生じていることも要因か?
また、Judgeと異なりSotoがメカニクスを弄った時期はシーズン開幕前の可能性が大。
そうなるとNYYの指導によるものではない可能性が高いかもしれません。
(スイングデータを見ると、実は2023年シーズン終盤にフォーム改造の可能性を感じさせる数字が並んでいました。)
(これでSwingGraphsの受け売りを終わります。)
チームの除け者 Trent Grisham
.043と桁違いのBABIPを残し、表面的な打撃成績が大きく低迷しているGrisham。
とうとうRHP先発試合だけでなくLHP相手にもAlex Verdugoがスタメン起用を受ける形となり、現状として点差がある試合の守備固め要因に成り下がっています。
本来なら限られた出場機会の中で結果を残すため、後述するデブのように打ち急いで積極的なアプローチを行ってしまいそうなものですが、彼の場合は吹っ切れたかのようにバットを振るのを止め、超が付くほどパッシブなアプローチに。
指標 | 2023 | 2024 |
Swing% | 41.6 | 29.6 |
Z-Swing% | 60.3 | 47.0 |
Chase% | 21.6 | 9.2 |
Zone% | 51.6 | 54.0 |
CSW% | 29.2 | 33.8 |
対戦ピッチャーもそれに気付いたのか、Zone%は上昇の傾向を示していて、現在のアプローチを取り止めるのが先か?、それとも放出されるのが先か?
RHP専打者 Anthony Rizzo
MLBでも数少ないLHP相手に強打を発揮するLHBとして名を馳せてきたTony Rizzo。
脳震盪によるパフォーマンス低下に苦しんだ昨シーズンですら好成績を残したものの、今シーズンのvs. LHP成績は散々な数字。
そもそもRHP/LHPのスプリット成績はバラツキが大きく、偶然にもパフォーマンスがダウンスイングしているだけの可能性もありますが、反対にサンプルサイスがより大きなvs. RHP成績は例年と大差ないわけで…。
vs. LHP成績
指標 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
PA | 171 | 140 | 87 | 67 |
OBP | .395 | .343 | .402 | .254 |
SLG | .503 | .550 | .423 | .210 |
OPS | .901 | .893 | .825 | .463 |
xwOBA | .384 | .357 | .340 | .227 |
EV mph | 90.2 | 87.3 | 87.9 | 85.3 |
HH% | 42.2 | 38.8 | 31.3 | 22.9 |
Z-Con% | 87.4 | 92.2 | 84.9 | 87.8 |
Chase% | 29.4 | 33.1 | 31.0 | 27.6 |
JudgeやSotoと対照的に、実は下表の通り負の方向へスイングが変化しているRizzo。
ここで示されているようなスイング劣化によって、”彼のVBAやAttack Angle、HBA”と”LHPのVAAやHAA”との相性が悪化している可能性も考えられるのではないでしょうか。
スイングスタッツの推移(パーセンタイル)
指標 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
VBA | 31 | 66 | 64 | 40 |
AA | 56 | 89 | 81 | 40 |
SG Path | 40 | 56 | 66 | 37 |
何にせよ、この傾向が続くようであればDJ LeMahieuとのプラトーン起用も検討すべきでしょう。
守備のチーム?
Anthony RizzoとGleyber Torresがバッティングだけでなくフィールディングでもチームの足を引っ張る一方、他プレーヤーたちのパフォーマンスは絶好調で、前回叩いたOswald Cabreraも無事に復調。
結果としてMLB最高級の守備成績を残しています。
この数字が本当に純粋な実力を表しているかは微妙ですが、取り敢えずこのまま行けばVerdugoはGG賞ですね。
SotoのDRS&rWARダウンスイングを期待していた身としては残念な状況ですけど。
指標 | チーム合計 | MLB全体順位 |
DRS | +30 | 3位 |
FRV | +18 | 1位 |
DRP | +24.3 | 1位 |
(5月末ではなく6月4日までの数字)
クソが…
Mike Ford DFA
Christian Encarnacion-StrandのIL入りを受けて、CIN昇格を果たしたデブ。
持ち前の待球アプローチをかなぐり捨てた結果、.232 xwOBA・.288 xwOBAconと貧打に喘ぎ、案の定たった3週間でDFAに。
去就は未だ決まらず。
投手
好調な野手陣とは対照的に、投手陣はシーズン前の期待値と大差ない中途半端なパフォーマンス。
指標名 | 5月中の合計 | MLB全体順位 |
シーズン合計 | ||
投手fWAR | 3.2 | 7位 |
6.2 | 8位 | |
ERA | 2.48 | 1位 |
2.79 | 1位 | |
FIP | 3.64 | 7位 |
3.77 | 10位 | |
xwOBA | .309 | 11位 |
.308 | 7位 | |
SIERA | 3.62 | 7位 |
3.82 | 15位 |
Luke Weaverのフォーシーム
シーズン開幕直後はハードヒッティングを喰らっていたWeaverですが、シーズンが進むに連れFFのパフォーマンスが向上
単にピッチクオリティが向上しているだけでなく、プレートの踏む位置を変えHAAに変化を持たせるなど工夫も。
また、Upper Zoneを攻めるだけでなく、Lower Zoneに投げる機会も増やし、タネリングの相乗効果によってCHのパフォーマンスも上昇傾向を示しています。
FFのスタッツ 4月 vs. 5月
指標 | 4月 | 5月 |
Avg Velo | 94.6 mph | 95.8 mph |
Spin Rate | 2423 rpm | 2461 rpm |
IVB | 18.0″ | 18.7″ |
HB | 6.3″ | 7.0″ |
Whiff% | 19.7% | 39.5% |
Z-Whiff% | 14.3% | 34.0% |
CSW% | 25.0% | 38.8% |
Rel Z | 5.75 ft | 5.76 ft |
Rel X | 1.52 ft | 1.67 ft |
当記事の執筆中にChris KirschnerがWeaverのFFグリップ&メカニクス改造を取り上げました。
Marcus Stromanのリザレクション
NYYの指導によってゾーン外を徹底的に攻めるアプローチを試していたStroman。
それによってWhiff(三振)が大幅に増える代わりに、持ち前のウィークコンタクトが失われていたのですが、結局のところNYY加入前のようなアプローチへ逆戻り。
ただ、アプローチ回帰に伴い全体的な投球成績は回復傾向を示していて、NYYの挑戦は失敗として片が付きそうな雰囲気。
まあ、ERAは常に良好な値で推移しているので、大抵のファンにとっては知ったこっちゃない話かもしれませんが。
Stromanは結局のところ素直にIn Zoneを攻めるのが正解だったってオチかな? pic.twitter.com/HWLNVzZJ7b
— Fordy Ballgame (@ironhorse0619) June 1, 2024
Clarke Schmidt 死亡回避
懐かしの故郷(IL)へ帰郷したSchmidt。
アームスロットの水平化は故障の前兆だよと。特にリリーフ。
Using Pitch-Tracking Data to Identify Risk Factors for Medial Ulnar Collateral Ligament Reconstruction in Major League Baseball Pitchershttps://t.co/q9Ns2CcrS7
— Fordy Ballgame (@ironhorse0619) September 23, 2022
Neal ElAttracheの診断を受けていると報道された後にRel Zの大幅な低下を認識した時は「とうとう肘が逝ったか」と身構えましたが、実際は良くも悪くも右広背筋の損傷でした。
ただ、メカニクスに明らかな異常を来している中で、100球以上投げさせたのはどうかと思います。