トレイ・スウィーニー:ヤンキース・1巡目指名(2021年MLBドラフト)


 2017から当ブログで書いているヤンキースのプロスペクト紹介・レポートのまとめページになります。名前がその選手の記事へのリンクとなっていま...

本日行われた2021年度MLBドラフト1日目において全体20位指名権(1巡目)を持つニューヨーク・ヤンキースはイースタン・イリノイ大学の内野手トレイ・スウィーニー(Trey Sweeney)を指名しました。


トレイ・スウィーニー

Trey Sweeney
22歳3か月:193㎝・90㎏:右投左打:SS
イースタン・イリノイ大学:2年生

ドラフト候補生ランキング
メディア 順位
Baseball America 55位
MLB.com 55位
FanGraphs 63位
The Athletic 89位
ESPN 27位
Baseball Prospectus
50位
Prospect Live 30位
Prospects 1500 46位

高校時代は全くと言ってもいいほど注目されておらず、ドラフト1巡目指名を受けるような大学生選手でここまで高校時代に実績が無いことは非常に稀。当然のことながら2018年のドラフトで指名されるはずもなく、さらに有力大学からのオファーも無かったようで、NCAA1部の弱小~中堅カンファレンスであるオハイオ・バレー・カンフェレンス(OVC)に所属するイースタン・イリノイ大学へ進学することとなります。

大学1年目(2019年シーズン)はカンファレンスワースト7位となるOPS.695に終わり、NCAAシーズン終了後には低レベルなプロスペクト・リーグ(大学サマーリーグ)に参加したもののNCAA下位の選手たち相手に印象的なパフォーマンスを残すことができず。コロナの影響により14試合しか行われなかった2020年シーズンも中堅クラスの成績に。

しかし、2020年のNCAAシーズン終了後にプロスペクト・リーグよりハイレベルな大学サマーリーグであるコースタル・プレーン・リーグに参加すると、打率でリーグ2位に入るなど初めて上位の成績を残し一部メディアで取り上げられ無名選手を脱却。

ただ、リーグ終了後9月のイースタン・イリノイ大学機関誌の記事を読むと(2021年MLBドラフトが20巡目までしたか行われないにもかかわらず)「スカウトは30巡目程度と評価している」と書かれていることから、まさか1年足らずで1巡目指名を受けるようなトッププロスペクトへと成長するとはこの時点で誰一人として夢にも思わなかったことでしょう。

Register Batting
Year Age Tm Lg Lev G PA AB H HR SB CS BB SO BA OBP SLG OPS
2019 19 Eastern Illinois OVC NCAA 55 209 181 49 2 2 2 18 24 .271 .342 .354 .695
2019 19 Lafayette PROS Smr 52 257 212 75 7 10 2 36 25 .354 .453 .524 .977
2020 20 Eastern Illinois OVC NCAA 14 67 57 20 1 2 0 8 9 .351 .439 .456 .896
2020 20 Wilson COPL Smr 17 79 68 27 4 3 1 11 13 .397 .481 .676 1.157
2021 21 Eastern Illinois OVC NCAA 48 226 170 65 14 3 2 46 24 .382 .522 .712 1.234
Coll Coll Coll   College 117 502 408 134 17 7 4 72 57 .328 .437 .517 .954
Othe Othe Othe   Other 69 336 280 102 11 13 3 47 38 .364 .460 .561 1.020

そして、2021年シーズンは開幕3連戦こそ三振とエラーを連発し幸先の悪いスタートをきることとなりましたが、その後は低レベルなOVCのピッチャー相手に無双を続け終わってみればカンファレンスで断トツNo.1の打撃成績。この活躍によりゴールデンスパイク賞(アマチュア最優秀選手賞)のセミファイナリストに選ばれただけでなく、ドラフト候補生としての評価も一気に跳ね上がることとなりました。

上記の一連の流れがあまりにも短期間のことだったため各媒体で大きく評価は分かれており、記事上部期待の各ランキングを見ても分かるように平均値や中央値は取れば2巡目クラスの評価ですが、ドラフト直前の各媒体のモックドラフト(ドラフト予想)記事では全体20位前後の指名権を持ついくつかのチームが指名候補として名を挙げていると記載。

その中でも特にヤンキースの指名候補として高い頻度で言及されており、アメリカメディアの報道通りの結果となったわけですね。


打撃 パワー 走塁 送球 守備
20/35 35/60 35/40 45/50 30/40

膝頭をベルトの高さまで上げるレッグキックと大きなヒッチ動作を特徴とするハイエフォートなスイングから繰り出されるスイングスピードは間違いなくプラスで、Mason McRae御大によると打球初速度は最速110マイルを超え平均初速度に至ってはNCAA全体でもトップクラス。

また、そのラフなスイングにもかかわらずコンタクトスキルと選球眼にも優れ今シーズンは四球数が三振数の2倍近い数字。身長193㎝(今ドラフトの上位指名候補の大学生野手の中では最長)と体格にも恵まれ、線の細さを考えるとさらに筋量を増やすスペースがあるように感じられます。

反対にバッティング面で最大の懸念材料は高校時代も含むキャリアを通しての対戦相手の質の低さ。特に今シーズンはOVCにて(ニワカに信じがたいことですが)93マイル以上の速球を投じられたのはたった16球しかなく、96マイル以上に至っては1球たりとも無かったとのこと(ソースはベースボールアメリカのJJ・クーパー記者)。よってOVCでの好成績はやはり参考記録程度と捉えるのが自然で、あのスイングと木製バットで95マイル以上の速球を連発するプロのピッチャー相手にして通用するのかは甚だ疑問。

ただ、数少ないドラフト上位指名候補のハイレベルなピッチャーとの対戦ではコンスタントに打球初速度100マイル以上を放つなど好成績を記録したとのことで、トラックレコードが全く無いわけではありません。

プラスレベルのパワーを有するバッティングとは対照的に身体能力に欠け走力は平均未満。

イースタン・イリノイ大学では1年目からショートを守り今シーズンはスキルに大きな向上を見せていたようですが、身体能力の欠如によりプロ入り後はサード(良くてもセカンド)に移る可能性が高いと評されています。

まあ、ヤンキース傘下のデプスを考えるとサードにコンバートされることはまず間違いないでしょう。


雑感

無能スカウトの巣窟と化しドラフトでは独自路線を突き進むことでMLB全体ワーストクラスの結果を残し続けるヤンキース。

2016年に高校生トップクラスの野手と評されていたブレイク・ラザフォードを全体18位で指名して以降は2017年全体16位のクラーク・シュミット、2018年全体23位アンソニー・シーグラー、2019年全体30位のアンソニー・ボルピ、全体38位(戦力均衡ラウンド)のTJ・シッケマ、2020年全体28位のオースティン・ウェルズとオーバーピック(評価以上の順位での指名)を繰り返してきたわけですが、その方向性は豊作と言われた今年のドラフトでも残念ながら変わることはありませんでした。

スウィーニーの評価が割れていたとはいえヤンキースが指名せずとも全体20位台でピックされていたでしょうしハイリスキーなプロスペクトはほど好きなので、スウィーニーをこの順位で指名したこと自体には現地の一部ヤンカス達ほど不満はありません。

ただ、オズワルド・ペラザやアンソニー・ボルピが全体トップ100(一部媒体ではトップ50)に入るほどのブレイクを果たしその他にもジョシュ・スミスやエゼキエル・デュラン、ディエゴ・カスティーヨ、オズワルド・カブレラなど各階級の内野手達は軒並み好成績を残している中で、サードに移る可能性が高いとはいえ大学生内野手を指名するのは???

まあ、スウィーニーとは全体20位のボーナススロット324万ドル未満で契約に漕ぎ着けられる可能性が高く、ドラフト2日目・2巡目以降の指名でオーバースロット指名を狙う可能性も大。


トレイ・スウィーニーの指名は....

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