【メモ】ベースボールの王座陥落

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南北戦争終結から約1世紀に渡りスポーツ超大国アメリカの頂点に君臨していたベースボール。

しかし、第2次世界大戦後のベイビーブーマーの波に乗れなかった結果、約1世紀守り抜いた玉座から引きずり降ろされ、今では2番手の地位すら失ったも同然の状態なのですが、この凋落を語る際に最も引用されるネタが世論調査会社Gallupの「What is your favorite sport to watch」サーベイかと思います。

In general, would you describe yourself as a sports fan, or not? What is your favorite sport to watch? In your opinion, who is currently the greatest male athle...

ただ、この調査について個人的に気に掛かる点が1つあるため、本記事で触れておきたいと思います。



Gallupの調査

Gallup(1935年設立)は他に先駆け1937年に調査機関として初めてスポーツ人気調査を実施。(1937年当時の記事に史上初と書かれていた。本当かは知らん。)

現在と同様に野球、アメリカン・フットボール(以下フットボール)、バスケットボールの3競技がTop 3を占めており、言うまでもなく野球が圧倒的トップでした。

その後もGallupは不定期に同様の調査を計25回行っており、その結果の一覧が下表となります。

ちなみに、最新の2023年調査まで他にTop 3へ食い込んだスポーツは存在せず、80年以上に渡りBig 3が上位を独占中。

Big3の人気推移(単位=%)

Y-M Football Baseball Basketball
1937-3 23 34 8
1948-4 17 39 10
1960-12 21 34 9
1972-1 38 19 10
1972-10 32 24 9
1981-1 38 16 9
1990-2 35 16 15
1992-9 38 16 12
1994-8 35 21 11
1994-9 37 16 13
1995-4 32 16 15
1997-4 30 14 17
1998-11 36 16 12
2000-4 33 13 15
2001-3 28 12 16
2002-12 37 12 13
2003-12 37 10 14
2004-12 37 10 13
2005-12 34 12 12
2006-12 43 11 12
2007-12 43 13 11
2008-12 41 10 9
2013-6 39 14 12
2017-12 37 9 11
2023-12 41 10 9

ここで注意してもらいたいのは、今世紀に入るまで調査毎に調査月がバラついている点です。

調査時期がプロリーグやNCAAのシーズン開催期間(特にプレーオフ)と重なっているスポーツは当然有利となります。

例えば、1972年はスーパーボウル開催直前の1月上旬に行われたのですが、公平性を期すためか同年のワールドシリーズ開催直前にも再度行われ、調査時期の影響によってフットボール/野球の比率が大きくシフトしていることが見受けられます。

また、Gallupの設問は「What is your favorite sport to watch?」となっており、観戦人気の調査が趣旨。

プレー人気の調査は同時に他の設問で行われていて、フィッシングやボーリングといったスポーツが上位に。

加えて、サンプルサイズは成人1000人程度。

まあとにかく、表を眺めるだけでは分かりにくいのでグラフにしました。

Big3の人気推移(グラフ)

こうしてみると特筆すべき点が1箇所あるかと思います。

1961年 → 1972年の唐突な大逆転です。

兼ねてからこれを見て「10年強の短期間でここまで大きな変化が生まれるものなのか?」と疑問に感じていたのですが、それを解消するための簡単なリサーチを行ったので、今回記事にしました。

結論から言うと、期待していたような結果は得られなかったわけですけど...。


Harris Pollの調査

今回着目するのは、Gallupと別にスポーツの人気調査を行っている調査会社Harris Pollのサーベイ。

同社は1965年からアメリカ国内の成人を対象に「If you had to choose, which one of these sports would you say is your favorite?”」との調査を行っています。

この調査は紙面を通し毎回公表されていたため、当時の報道を基に開始から20年間の調査結果を下表にまとめました。

(1966年と1980年は調査未実施。)

Harris Pollの調査結果(単位=%)

Year Football Baseball Basketball
1965 26 40 9
1967 29 39 10
1968 31 38 10
1969 31 29 10
1970 30 27 11
1971 30 27 15
1972 29 24 15
1973 29 24 10
1974 27 22 9
1975 28 18 14
1976 28 25 10
1977 24 23 10
1978 30 19 9
1979 34 19 12
1981 36 21 12
1982* 34 21 11
1982* 31 23 11
1983 36 19 13
1984 33 21 12
1985 34 23 12

当調査の注意点は下記の通り。

①Gallupと同様に成人のみを対象(例年1200人程度)としているため、ベイビーブーマー時代直後にもかかわらず未成年は対象外に。(例えば、1970年時点では未成年が全人口の34%を占めていた。)

②Gallupと同様に調査時期バラツキがある。(例えば、1982年の1度目は8月、2度目はワールドシリーズ直後の10月末に実施。)

③観戦人気の調査を想定した設問となっているものの、Gallupほど断定的な問いではないため、プレー人気もある程度は影響していると推測される。

④表の調査値は、問いに対し「None」または「Not Sure」と回答した人間を除く調査対象者に占める割合を示している。「None」または「Not Sure」の回答率は調査毎に異なるため、絶対値ではなく相対値を重視する方がベターかも。

⑤1981年からはフットボールとバスケットボールの選択肢がそれぞれプロ/カレッジに分割。そのため1981年以降の調査値はプロ+カレッジの合計値。

まあ、何にせよグラフの方が分かりやすいですよね。

Harris Pollの調査結果(グラフ)

これを見れば、野球が1960年代終盤に「America’s Favorite Sport」の地位を失ったことが一目瞭然かと思います。

ただ、やっぱり変化が急激。

さらに、フットボールが急成長を1960年代終盤に遂げたというよりは、野球が一気に凋落した形に。

フットボールが緩やかな右肩上がりを見せると同時に野球が緩やかな下降線をたどる自然な逆転劇を期待していたのですが、これでますます分からなくなってしまいました。

(特に1968年と1969年は春に行われており、調査時期に大差なし。誤差の範疇も超えています。)

1969年といえば、エクスパンションが行われMLBフランチャイズが20から24へ増加した年ですから、野球人気低下にブレーキがかけられたイメージでした。

それとも1968年シーズンの極端な投高打低が悪影響を与えたのでしょうか?

そもそも、1969年のLCS創設によるプレーオフ拡大や1970年代後半のTV放映枠拡大が、1970年以降において人気低下のストッパーを務めただけで、そこら辺がなければMichael Jordanブーム到来以前にバスケットボールに追いつかれる可能性もあったか?

逆にフットボールが右肩上がりとなった要因は分かりますよ。

1958年プレーオフの全国放送の成功、1960年のNFL/AFLの2リーグ時代の到来、1967年のスーパーボウル開始とプロリーグにおいてポジティブな話題が続きました。

ただ、Gallupの調査と比べ、野球を追い抜いた後に作り出したリードが小さい点も引っ掛かります。

まあとにかく、ベースボール王座陥落のタイミングが何となく分かったので、これで良しとしましょうかね。


最後に

フットボールと野球が逆転した1960~70年代において、両スポーツのファン層に大きな違いが存在していました。

それは年齢層です。

若年層ではフットボールの人気が高く、中年~高齢層では野球人気が高い。

これはGallupやHarris Pollだけでなく他機関のサーベイでも示されている絶対的な違いであり、私が冒頭で野球を「ベイビーブーマーの波に乗れなかった」と評したのもこのため。

反対にフットボールはベイビーブームを追い風に人気を伸ばしたと言えるでしょう。

例:Harris Pollの1967年調査結果

年齢層 Football Baseball Other
18~34 34 25 41
35~49 32 31 37
50~ 22 55 23

ちなみに、1970年時点(総人口約2億人)における18~34歳の割合は約25%、35~49歳は約17%、50歳以上の約24%。

現代(総人口約3億5000万人)の22%、19%、35%を踏まえれば、当時に若年層の間で人気を博すことが如何に重要だったか分かると思います。

また、フットボールファンと野球ファンの間には、学歴や年収についても大きな違いが。

例:Harris Pollの1972年調査結果

最終学歴 Football Baseball Basketball
中学校 15 35 7
高校 28 21 10
大学 37 16 10
 
年収 Football Baseball Basketball
~5000$ 19 30 9
5000$
~9999$
30 21 10
10000$
~14999$
32 17 8

つまり、当時のフットボールファンの特徴は「若者、高学歴、高収入」、野球ファンの特徴は「年寄、低学歴、低収入」だったわけ。

なんかこの特徴の組み合わせ、最近よく目にしたような気がしませんか?

そうです。トランプ信者です。

ってことは、50年前の野球ファンとトランプ信者は同類ということですね。

何だかMLBファンとして感動しました。

やっぱりベースボールは偉大だなぁ。

P.S.

半世紀前はフットボールが「若者のスポーツ」だったならば、今はどういった状況になっているのでしょうか?

Gallupの2023年12調査における18~29歳の調査結果を抽出しました。

Gallupの2023年12月調査(18~29歳)

スポーツ 割合(%)
フットボール 28
バスケットボール 13
サッカー 8
野球 5
アイスホッケー
その他 26
なし/未回答 15

次にMorning Consultの2022年11月の調査。

当調査は1000人のZ世代(当調査では13~25歳と定義)と2210人の成人を対象としており、各スポーツやリーグについて「熱烈なファン(Avid Fan)」または「カジュアルなファン(Casual Fan)」であると答えた割合を集計しています。

Morning Consultの2022年11月調査(13~25歳)

スポーツ/リーグ 割合(%)
Z世代
(13~25歳)
成人
NFL 53 69
NBA 47 50
大学フットボール 41 51
MLB 35 54
大学バスケットボール
34 41
eスポーツ 33 21
NASCAR 32 36
UFC 31 31
NHL 25 37
F1 20 24

続いてはMorning Consultの2024年1月の調査。

当調査は11歳未満の子供を持つ約2007人の親を対象としており、上記調査と同様に各スポーツやリーグについて我が子が「熱烈なファン(Avid Fan)」または「カジュアルなファン(Casual Fan)」であると答えた割合を集計しています。

Morning Consultの2024年1月(11歳未満)

スポーツ/リーグ 割合(%)
NFL 50
NBA 41
MLB 38
大学フットボール 37
大学バスケットボール
32
男子サッカー 32
NHL 30
モータースポーツ 30
UFC 30
eスポーツ 27
女子サッカー 26
ゴルフ 23
WNBA 23
ラクロス 18

半世紀前には年寄のスポーツだったにもかかわらず、この消費社会の現代で未だに上位ランクインを果たす野球。

MLBファンとして誇らしい限りです。

やっぱりベースボールの魅力は凄いなぁ。

コメント

  1. 匿名 より:

    勝手に「元々野球の人気はもっとあってストライキや薬物騒動、ジーターを最後に国民的スター不在で90年台から近年にかけてバスケに抜かれた」と思ってたんですが、90年台半ばにはもう殆ど差はなかったんですね。近年は野球が持ち堪えてるというよりバスケも下がってるという感じですが…。
    NBAのトップ選手の知名度MLBに比べて高いのを前の記事で拝見しましたが日本の大谷や昔のジョーダンレベルは別として「国民が大体知ってる」レベルじゃ競技人気には寄与しないんですかね

    • 管理人 より:

      オールドメディアが寄ってたかって取り上げることでヤラセのスポーツムーブを作り出せる我が国とあちら様は違いますからね。
      ただ、海外にまで波及するほどのNBA大ブームを牽引したMJとは比べ物になりませんけど、Caitlin Clarkのセンセーションは北米スポーツ史に残るレベルだと思います。