ヤンキースの2024年MLBドラフト1巡目指名候補:その10

2024年MLBドラフトにおけるヤンキースの1巡目指名候補について

今回は抜群の身体能力とマッシブなツールを誇り、アップサイドが魅力的かつリスキーなプロスペクトを取り上げます。



Kellon Lindsey

ケロン・リンジー:18歳9ヶ月(2005年9月生)
188cm:R/R:ハーディーHS(フロリダ州):SS

Draft Prospect Rankings
メディア 順位 更新日
Baseball America 26位 5/30
MLB.com 30位 5/30
Joe Doyle 28位 5/14
ESPN 33位 5/8
The Athletic 24位 5/22
Perfect Game 43位 6/13
Prep Baseball Report 5/3
Azad Earl 44位 5/18

アメフト部のエースQBとしても活躍する俊敏性抜群のアスリート。

昨年夏秋は故障を理由にほとんどのショーケースやイベントを欠場したものの、今年に入ると地元リーグでの活躍によって評価が急上昇。

2024年クラス屈指のレイトライザーとしてドラフト1日目における指名が有力視されています。

Season AB H HR BB K SB BA OBP SLG OPS
2021 86 39 1 15 10 27 .453 .544 .535 1.079
2022 83 34 0 14 5 40 .410 .505 .530 1.035
2023 77 31 1 19 9 33 .403 .510 .597 1.107
2024 67 23 1 24 14 23 .343 .521 .492 1.014

プロファイルにクセがあるプロスペクトですが、高校生を狙う幾つものチームとのリンクが既に噂されていて、特に高校生へ熱を上げているSDP(全体25位指名)をフロアーと考えるエバリュエーターも。

コミット先は強豪フロリダ大学。

Hit Power Run Arm Field
45 40 70 45 50

待球型かつコンタクト志向のアプローチによって出塁を稼ぎ、盗塁へ繋げるリードオフタイプのバッター。

ハイレベルなピッチャーとの対戦経験が少ない点、一般的なイメージ/リポートと異なり昨シーズンから今シーズンにかけて数字を落としている点、完成度が低いエフォートレスなメカニクスなど懸念材料は数多く、現時点では非常にパワーレスですが、何れは高い身体能力と恵まれた体格がRaw Power、そしてフィジカルの成長に伴うメカニクス改造がGame Powerにトランスレートされるはず。

RHBから3秒台の1B到達タイムを叩き出すスピードは数多くのエバリュエーターから80グレードを与えられるプレミアムツール。

そのスピードを活かして、アメフトにおいてもラッシングタイプのQBとして活躍。

MLB Draft Combineにて如何なる数字を残すか注目ですね。

こういったタイプのプレーヤーはMLBデビューまでにSSからCFへコンバートされることが多いものの、Lindseyの場合はSS守備に対して一定の評価を得ており、Trea Turnerと比較されています。


Dakota Jordan

ダコタ・ジョーダン:21歳2ヶ月(2003年5月生)
183cm:R/R:ミシシッピ州立大学:RF

Draft Prospect Rankings
メディア 順位 更新日
Baseball America 33位 5/30
MLB.com 29位 5/30
Joe Doyle 28位 5/14
ESPN 25位 5/8
The Athletic 24位 5/22
Perfect Game 37位 6/13
Prep Baseball Report 38位 5/3
Azad Earl 16位 5/18

アメリカ国内でも特に人種差別が激しいミシシッピ州ジャクソン市で生まれ育ち、野球だけでだけでなくワイドレシーバーとしても上位のパフォーマンスを披露。

2021年夏のショーケースにおける大活躍、特に高校最終年度となる2022年シーズンは数多くのスクールレコードを樹立し、同州のPlayer of the Yearを受賞。

同年のドラフト上位ラウンドで指名を得られたはずですが、地元の強豪ミシシッピ州立大学への強いコミット、そして遅生まれによって年齢が高い点を敬遠され、手を出すチームはありませんでした。

Year Age Tm Lg G PA H HR SB BB SO BA OBP SLG OPS
2023 20 Mississippi State SEC 44 184 47 10 4 25 46 .307 .397 .575 .972
2024 21 Mississippi State SEC 63 290 85 20 3 44 84 .354 .459 .671 1.129

ミシシッピ州立大では野球とアメフトの両方をプレーする予定だったものの、フットボールシーズンを迎える前に野球へ専念。

その並外れた身体能力を武器に、Freshman All-American Teamの2ndチームに選ばれるほどの活躍を披露し、その後のサマーリーグにおける好成績も相まって、一躍ドラフト1~2巡目指名候補に。

さらに、今シーズンは打者不利の本拠地に阻まれることなく順当に数字を伸ばし、1巡目指名候補(アーリーエントリー)として地位を確立しています。

桁外れの身体能力とパワー、そして低レベルかつ粗削りなアプローチの組み合わせは、正しく2024年クラスのSpencer Jonesと言ったところで、今クラス最大の倍率を誇るロッタリーチケット。

ただ、インサイダー情報によると今のところはNYYの指名候補に挙がっていない模様。

Hit Power Run Arm Field
35 65 60 50 50

Bo Jakcsonを彷彿させるような豆タンク体型から、NCAA最高級のサイズ離れしたバットスピードを披露。

特にEVスタッツは99パーセンタイルに位置しており、Max EVは118.6 mph(昨シーズンに計測)。90th EVも昨シーズンから今シーズンにかけて112.6 mph → 111.4 mphと高水準で推移。

体格(身長)に対するRaw Powerの傑出度はCharlie CondonJac Caglianoneを上回っています。

反対にバットコントロールは言うまでもなく✖。

Contact%は過去2シーズンで69%→64.9%と低迷し、Chase%も22.1%→28.2%と悪化。

昨シーズン何とか80%台(80.8%)に載ったZ-Con%も恐らく今シーズンは70%台に落ち込んでいることでしょう。

あれだけのバットスピードを誇りながらも、スピードあるFBを苦にしているとのことで、特にLHPのクロスファイアが苦手。

強豪校と対戦する機会が多かった4~5月にスランプへ陥ったのですが、ハイレベルな(球速が速い)ピッチャーを相手にしたことが理由かも。

また、スイングパスがフラットなことで低弾道にも苦しんでおり、プロレベルでもRaw Powerに見合うGame Powerを発揮できるかは疑問。

高校時代に60ヤード走6.44秒を計測したスピードは本来ならプラス超ツールのはずですが、盗塁を企画する機会は非常に少なく、ワイドレシーバー経験者ながらOF守備も平均レベルの評価。

守備走塁において身体能力の割に高いバリューが見込まれていない状況です。

まあ、このように多くの懸念材料を抱えるギャンブル度が高いプロスペクトとは言え、アーリーエントリーによって指名対象となっているだけで、まだ大学2年生であることを忘れてはいけませんね。


Boston Bateman

ボストン・ベイトマン:18歳9ヶ月(2005年9月生)
203cm:アドルフォ・カマリロHS(カリフォルニア州):SP/LHP

Draft Prospect Rankings
メディア 順位 更新日
Baseball America 79位 5/30
MLB.com 49位 5/30
Joe Doyle 86位 5/14
ESPN 48位 5/8
The Athletic 47位 5/22
Perfect Game 81位 6/13
Prep Baseball Report 44位 5/3
Azad Earl 5/18

過去にRandy ElliottMike Parrott、そして2003年全体1位のDelmon Youngと3人ものドラフト1巡目指名を輩出した名門アドルフォ・カマリロ高校に在学し、父親EricはNFLにも在籍した身長201㎝のフィジカルアスリート。

巨体のパワーヒッターとしても一定の評価を得ていますが、ピッチングの水準には及ばず、今シーズンは投球成績を大きく伸ばしています。

  ERA W-L IP H K BB K% BB%
2022 1.40 3-1 20.0 10 41 19 45.6% 21.1%
2023 1.70 2-1 37.0 14 60 21 41.7% 14.6%
2024 0.54 11-1 64.1 10 130 37 52.4% 14.9%

開幕前に5巡目クラスだった評価は今シーズンの印象的なパフォーマンスによって2~3巡目クラスまで上昇。

そして、1巡目のスリーパーピックとして注目を集める中で、NYYとのリンクが報じられています。

強豪LSUへコミットしているだけに、スロットバリューを上回るボーナスが必要となる可能性も高く、1巡目指名候補というよりは寧ろ1巡目でボーナスを抑えられた場合の2巡目指名候補と見做すべきかもしれません。

FB SL CB CH Cmd
55 45 55 40 40
FB/be FB/vel SL/vel CB/vel CH/vel
97 92~93 82~83 77~78 84~85

6-7&240 lbの巨体を活かし、Rel Zが高いオーバースローから最速97 mphのFFを投げ込むパワーピッチャー。

そのFFはスピンに欠けるもののHBが抑えられており、Upper Zoneに多投しています。

2700 rpm前後の12-6 CBは変化量が大きな高校球界上位のピッチ。RHB/LHB関係なくプットアウェイ・ピッチとして使用。

球速が5 mph程度速いSLは完成度と変化量に欠け、実際に実戦ではあまり投じていませんが、CBへのスピンフィールを考量すると、将来性を軽んずるべきではないでしょう。

SLと同様にCHのピッチクオリティも悪く、現状として機能している変化球はCBのみ。

また、高身長ピッチャーの性と呼ぶべきかもしれませんが、長らく制球難に苦しんでおり、コマンドがSPの及第点をクリアする可能性は微妙。

試合後半にメカニクスが崩れる傾向にある点も気に掛かります。