ドリュー・ソープ:ヤンキース・プロスペクト


2023年シーズン前半戦終了時点におけるニューヨーク・ヤンキースのプロスペクト(有望株)ランキングTOP50を作成

ドリュー・ソープ

Drew Thorpe
2000年10月生(23歳2か月):193cm・96㎏:RHP

AA:2022年ドラフト2巡目(全体61位:契約金$1.1876M)
選手ページ:MiLB公式Baseball ReferenceFanGraphs

フォーシーム : 40/45(平均92マイル、最速96マイル
カッター   : 35/40(平均88マイル)
スライダー  : 45/50(平均82~84マイル)

チェンジアップ: 60/60(平均83マイル)
コマンド   : 60/65
総合     : 35/50


自然公園や国立保護区に囲まれたユタ州の田舎セントジョージ市で生まれ育ち、これまで1人としてプロ野球選手を輩出していなかった無名校を卒業するなど、トッププロスペクトとしては異色の経歴の持ち主。

その高校時代は二刀流として活躍プレーする中で、7回21奪三振無四球ノーヒッター(味方のエラー1個)を達成するなどピッチングにおいて才能を発揮。

無名校所属ながらもユタ州屈指のピッチャーと評されオールステートチームの常連だったようですが、所詮は高校野球の層も質も低いユタ州でデカい顔していただけで、全国的には評価されておらず、2019年ドラフトにおいても指名漏れ。

しかし、NCAA1部の中堅カンファレンス(Big West カンファレンス)に所属するカリフォルニア・ポリテクニック州立大学(通称カルポリー大)の野球部コーチの目に留まり、同大学進学を果たしました。

フレッシュマンイヤーの2020年はCovid-19によって短縮シーズンとなるも、先発ローテの一角として限られた登板機会の中で好投。

初のフルシーズンとなる翌2021年はNCAAだけでなくケープコッド・リーグにおいても活躍。

シーズン終了後には大学ナショナルチームに選出されたものの、紅白戦で8 IP・11 R・19 H・4 HRとチームワーストの成績に。

そして、ドラフトイヤーの2022年は所属カンファレンスで頭1つ抜ける圧倒的パフォーマンスを披露。wOBA(.175)においてNCAA1部全体トップ、奪三振数(149)において全体2位指の数字を残し、全登板を4失点以内で纏め上げるなど安定感も〇。

ドラフト・プロスペクトランキングでは大方60~70位程度にランクインし、NYYが前評判通りの順位(2巡目・全体61位)で指名を行いました。


Year Age Lev ERA G GS IP H HR BB SO WHIP BB9 SO9 SO/W
2020 19 NCAA 3.21 4 4 28.0 27 0 7 31 1.214 2.3 10.0 4.43
2021 20 NCAA 3.79 16 15 90.1 78 4 38 104 1.284 3.8 10.4 2.74
2022 21 NCAA 2.32 15 15 104.2 65 5 25 149 0.860 2.1 12.8 5.96
2023 22 A+-AA 2.52 23 23 139.1 99 13 38 182 0.983 2.5 11.8 4.79
2023 22 A+ 2.81 18 18 109.0 84 10 33 138 1.073 2.7 11.4 4.18
2023 22 AA 1.48 5 5 30.1 15 3 5 44 0.659 1.5 13.1 8.80

春季キャンプでの登板を経て、A+の先発ローテ3番手として開幕。

シーズンが進むにつれ尻上がりに調子を上げ、6/4~7/9の約1ヶ月間には6 GS・40.2 IPを投げ許した失点はたった1。

その勢いのまま8月上旬にはAAへ昇級すると、K-BB%が35%を超えるなど同クラスNo.1のパフォーマンスを披露。

残念ながらシーズン最終盤にIL入りを喫し、そのままシーズンエンドとなったものの、奪三振(182)・xFIP(2.90)・K-BB%(26.9%)はMiLB全体トップ。

シーズン終了後には、MiLBやBaseball Americaのマイナーリーグ最優秀投手に選出され、プロスペクト・ランキングTop100へランクインさせるメディアも増加中。

完成度の高さを踏まえると2024年シーズン中のMLBデビューが期待されますが、ウインターミーティングで放出される可能性も。


ローエフォートなショートアームのオーバースロー・メカニクスはディセプションが非常に優れ、リピート性も抜群。

クイックが素早いため盗塁阻止能力も高く、被SBや被SB%はNYY傘下でも下位の数字です。

フォーシーム:40/45(平均92マイル、最速96マイル

2022年シーズンのNCAAにおいて平均90.5マイルを計測したフォーシームは、2023年シーズンに入ると平均92マイルまでスピードアップ。

約2200rpmとスピンレイトも並みの数字ですが、アームアクションが鉛直的なためにスピン・エフィシェンシーが高いようで、水平方向成分はミニマム。IVBも18インチ程度とのことです。

NYYのコーディネーターはメカニクス修正による更なる球速上昇を見込んでおり、体格的にもその可能性を十分に感じますが、本人にとっては現在の力感がベストフィールなのでは?

カッター :35/40(平均88マイル)
スライダー:45/50(平均82~84マイル)

2500prm程度のスライダーは第2の変化球の及第点をクリア。

縦スラとスイーパーの2種類を投げ分け、RHB相手への空振り率〇。LHBの内外角にもコンスタントに投げ込んでいます。

投球頻度が少ないカッターのクオリティはスライダーから後れを取っており、コマンドに優れたピッチャーでなければレパートリーから外していることでしょう。

チェンジアップ:60/60(平均83マイル)

ドラフト時にNCAA最高級と評されたチェンジアップは、今でも多くのエバリュエーターからダブルプラスと見做されているマネーピッチ。

ただ、トラッキングデータを見る限り単純なムーブメント量は大したことなく、一般的なサークルチェンジと比べグリップが特殊で、水平成分が抑えられているのが特徴。

彼の優れたコマンドとディセプションがあってこそ活きるピッチです。

コマンド:60/65

コマンドは間違いなくNYY傘下No.1の代物。

積極的にストライクゾーンへ投げ込むタイプではないため、ストライク率やBB%が特段優れているわけではありませんが、内外角へのボールの出し入れなどは見事。

球威に乏しいことで繊細なコマンドが生命線となっているだけに、かつてマイケル・キングへ施したような球速上昇にかまけたメカニクス改造は改悪となり得る予感。

また、シーズン後半戦に入って被HRが大幅に増加したのは、単にHR/FB%の収束が要因となっただけではなく、疲労蓄積によるコマンドの僅かな乱れなどがあったのかも。

総合:35/50

ドラフト2巡目指名選手がルーキーイヤーにこれほどの成績を残したならば、50 FVクラスと見做すのが自然。

昨日取り上げたチェイス・ハンプトンの方が上位のプロスペクトだと思いますが、これほど完成度が高ければ、ハンプトンより先にMLBへ到達するのではないでしょうか。

また、50 FVクラスの投手プロスペクトが先発ローテ5番手以内に入る可能性は50%程度であり、フロアーが高いソープであれば、それ以上の可能性が見込めるはず。