クレイトン・ビーター:ヤンキース・プロスペクト


 2017から当ブログで書いているヤンキースのプロスペクト紹介・レポートのまとめページになります。名前がその選手の記事へのリンクとなっていま...

ジョーイ・ギャロのトレードでドジャースから獲得したクレイトン・ビーターについて。

クレイトン・ビーター

Clayton Beeter
1998年10月生(24歳2か月):188cm・90㎏:右投

AA所属:2020年ドラフト2巡目(契約金119万6500ドル)
選手ページ:MiLB公式Baseball ReferenceFanGraphs

フォーシーム : 60/60 (平均95マイル、最速98マイル)
スライダー  : 55/60 (平均86~87マイル)
カーブ    : 65/65 (平均82~83マイル)

チェンジアップ: 40/45 (平均88マイル)
コマンド   : 30/35
総合     : 35/40


レンジャーズの前本拠地グローブライフ・パークから車で20分離れた裕福街コリービルで育ち、年間約30試合も現地観戦を行ったほどのレンジャーズファン。

高校時代は2年次までショートでプレーしていたためか評価が乏しかった(Perfect Gameの州別ランキングにてテキサス州第126位)ものの、地元の強豪校テキサス工科大学へ進学。

2017年入学直前の夏休みに始まる同大学のストレングス・プログラミングによって筋量を増やし、秋の紅白戦では高校時代に最速92マイルだった速球が最速96マイルを計測。しかし、紅白戦での先発登板後に肘を痛め12月トミー・ジョン手術を受けるハメに。さらに、2018年の7月にも術後のフォローアップとして肘関節鏡視下手術を受けており、実質1年目となった2年次の2019年シーズンはフルシーズンをブルペンで過ごすこととなります。

ただ、ブルペンとは言ってもクローザーとして起用されカンファレンス優勝に貢献。翌年にはコントロールが急成長を遂げ、コロナによるシーズン中止までの短期間に支配的なピッチングを披露。

同年ドラフトでは全体20~60位程度の評価を受け、多くのモックドラフトにて1巡目指名が予想されていたものの、本番では2巡目・全体66位のドジャースまでスリップ。

Year Age Tm Lev Aff ERA G GS IP H HR BB SO WHIP H9 HR9 BB9 SO9 SO/W
2019 20 Texas Tech NCAA   3.48 21 0 20.2 12 1 20 40 1.548 5.2 0.4 8.7 17.4 2.00
2020 21 Texas Tech NCAA   2.14 4 4 21.0 13 3 4 33 0.810 5.6 1.3 1.7 14.1 8.25
2021 22 2 Teams A+-AA LAD 3.44 28 27 52.1 38 5 22 78 1.146 6.5 0.9 3.8 13.4 3.55
2021 22 Tulsa AA LAD 4.20 5 5 15.0 10 2 7 23 1.133 6.0 1.2 4.2 13.8 3.29
2021 22 Great Lakes A+ LAD 3.13 23 22 37.1 28 3 15 55 1.152 6.8 0.7 3.6 13.3 3.67
2022 23 2 Teams AA LAD-NYY 4.56 25 23 77.0 64 11 46 129 1.429 7.5 1.3 5.4 15.1 2.80
2022 23 Tulsa AA LAD 5.75 18 16 51.2 48 10 35 88 1.606 8.4 1.7 6.1 15.3 2.51
2022 23 Somerset AA NYY 2.13 7 7 25.1 16 1 11 41 1.066 5.7 0.4 3.9 14.6 3.73

プロ入り後は天下のドジャースも手に負えず再び制球難に陥り、2021年シーズンは25→35→45→55と段階的な投球数制限が設けられ、先発投手と言うよりはオープナーとしてプレー。

続く2022年は開幕から60球程度まで許容されたものの、投球数制限とは別に4.0イニングを超えて投げることを許されず、本人もドジャースの起用法には不満を抱いていた模様。

そして、トレードデッドラインにてジョーイ・ギャロとのトレードでヤンキース傘下に加わるわけですが、ヤンキースでは制限を課せられることなく別人のようなパフォーマンスを披露。

制球難が再発しなければ2023年シーズン中にMLBへ到達することでしょう。


フォーシーム : 55/60(平均95マイル、最速98マイル)

ドジャース傘下時代にチームメイトだったボビー・ミラーを彷彿させるルーズなオーバースロー・メカニクスは再現性に欠け制球難の元凶と化しているだけでなく、アームアクションとグリップが打者に丸見え。ただ、スライドステップについては2020年から着実に改良が加えられており、実際に2021年は52.1回で9盗塁を許したものの2022年は77.0回でたった2盗塁に抑えています(A+クラスとAAで牽制等のルールが異なる点には注意)。

で、上記のフォームから投げ込まれる平均95マイル・2300~2400rpmのフォーシームは、オーバースローによりスピン効率とライディングアクションに優れたプラスピッチで、ハイゾーンにて空振りを量産。

もちろん同ピッチの特性とコマンド難も相まって一発病の発症原因となっていますが、将来的にショートリリーバーへ専念すれば常時96~97マイル程度を期待できるはず。

スライダー  : 55/60 (平均86~87マイル)
カーブ    : 65/65 (平均82~83マイル)
チェンジアップ: 40/45 (平均88マイル)

嘗てブレーキングボールは1種類だけでしたが年々差別化を進めスライダーとカーブの2種類に。差別化を行ったとは言えスライダーとカーブのグリップは同じで、単に投球時の強度を調整し投げ分けているだけのようですが…。

本人が決め球と自称するスライダーは常時86~87マイル・2700rpmを計測する縦スラ。2022年から投球割合を増やしていますが、個人的にはカーブより劣る印象で、まだ1段階向上の余地があるかと。

ドラフト時に2020年クラス最高の変化球と称されたこともあるカーブは、常時82~83マイル・2800rpmを計測するプラス~ダブルプラスピッチ。

チェンジアップはスライダーやカーブと比べクオリティが落ちるためドジャースが投球頻度を抑えていたものの、ヤンキースは反対に投球を勧め投球割合増加。現在も改良を進めているとのことですが、ウィークコンタクトを誘発するタイプのピッチ。本人曰く、チェンジアップによって打たせて取るピッチングが可能となり、ヤンキース移籍後の球数及び与四球減少に一役買っているとのことで、移籍後のゴロ率増加もこれが理由かもしれませんね。

コマンド : 30/35

移籍前後で与四球率やストライク率が大幅に改善されたものの、ヤンキースは彼の投球フォームを弄ってはいないようで、上述のチェンジアップの件など投球スタイル、アプローチ面にテコ入れを加えた模様。

ただ、それでもコマンドは依然として平均を大きく下回っており、個人的には特にスライダーのコマンドに難があるかと。

本人は当然ながら先発投手起用を希望していますが、登板中にコマンドへのフィーリングを突然失うタイプのピッチャーであるため、先発投手として大成するイメージは余り湧きません。

ただ、、不器用なピッチャーの印象があるものの学生時代は学業も優秀で、高校時代は卒業生総代に選ばれ、テキサス工科大学の機械工学科にてGPA3.95を獲得。恐らく最新のトレーニングやピッチデザインについて一定以上の理解力を有しているのではないでしょうか。

総合 : 35/40

プラスピッチのフォーシームとクオリティが高い3つの変化球を有するピッチャーは稀で、リリーフのプロスペクトとして球界屈指の存在。

個人的には40FVのハイエンドといった印象で、50thパーセンタイルの将来形はブルペンのアッパーパート。

リリーフプロスペクトの標準的なアップサイドデプスについてまだ答えを見出せていないので、彼の51th~99thパーセンタイル将来形を設定するのは現時点で困難ですが、ワンチャン(5%ぐらいの確立?で)先発ローテ入りもあり得るわな。

プロスペクト評価 Future Value(FV)の目安
FV 70:全体No.1プロスペクト
FV 65:全体2~5位程度
FV 60:全体6~20位程度
FV 55:全体21~50位程度
FV 50:全体51~125位程度
FV 45:全体126~275位
            球団別ランキング10位以内程度
FV 40:全体276~850位
            球団別ランキング30位以内程度