ショート編:MLB歴代の守備の名手たち


ページ 1 1850年代~1890年代
ページ 2 1900年代~1950年代
ページ 3 1960年代~2010年代


1960年代

Luis Aparicio

ルイス・アパリシオ:1956年~1973年:GG賞 9回
通算 TZR 149 : TZRリーグ1位 3回
ReferenceFanGraphs

好守のショートとしてWWⅡ以前におけるベネズエラ球界最大級のスタープレーヤーであった Luis Aparicio Ortegaを父に持つサラブレッドであり、後に数多く現れる中南米系フィールディングスターの第1号に。

GG賞は歴代3位の9回を数えますが、現行のGG賞がルーキーイヤーから存在していれば二桁に届いていたはずTZRやDefensive Win Sharesなど守備指標においても優秀です。(ただし、FRAAだけは何故かイマイチ。)

他の候補選手

Ray Oyler

レイ・オイラー:1965年~1970年:GG賞 0回
通算 TZR 24 : TZRリーグ1位 1回
ReferenceFanGraphs

規定打席到達は1度もなく、通算成績もリプレイスメントレベルですが、フィールド上でのプレーを生で見た数多くの球界関係者が称賛した知られざる名手。

通算打率.175は歴代ワースト2位の数字であり、現役当時から好守より貧打が話題となるプレーヤーでした。

まあ、それほどの貧打でも現役6年間で500試合以上に出場したのですから、守備力が高く評価されていたことの裏返しでもあります。

Ron Hansen

ロン・ハンセン:1958年~1972年:GG賞 0回
通算 TZR 87 : TZRリーグ1位 3回
ReferenceFanGraphs

現役当時から好守のショートと見做され、実際に守備成績も優秀でしたが、同リーグ所属のLuis Aparicioに阻まれGG賞には届かず。

キャリア終盤には所属チームに加入したAparicioにレギュラーの座も奪われる始末。

1970年代

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Mark Belanger

マーク・ベランジャー:1965年~1982年:GG賞 8回
通算 TZR 238 : TZRリーグ1位 8回
ReferenceFanGraphs

22.5 TZR/1450 IniはOzzie Smith(15.9)やJoe Tinker(17.0)を凌駕。

柔軟性に欠けぎこちない独特なオーバースロー送球は、まるで素人がプレーしているかのようでしたが、何故か常に打球正面へ先回りしており、難しいはずの打球も悠々と処理。

Belanger在籍時のBALはMLB史上最も守備に優れたチームだったものの、全盛期の1970年代中盤にはセカンドにBobby Grich、サードにBrooks Robinsonと共に二三遊トリオを形成。

Robinsonは間違いなく史上最高のサード守備の持ち主、GrichもBAL時代はセカンド守備において歴代最上位の存在であり、もう2度とこれほどハイレベルな二三遊トリオは現れないでしょう。

他の候補選手

Dave Concepcion

デーブ・コンセプシオン:1970年~1988年:GG賞 5回
通算 TZR 48 : TZRリーグ1位 2回
ReferenceFanGraphs

単なる重量級打線ではなくJohnny BenchJoe MorganCesar Geronimoと名手も数多く名を連ねていたBig Red Machineにおいて、守備のスペシャリストとして一際目立つ存在だった1970年代NLのNo.1ショート。

キャリア途中から慢性的な腕の痛みに苦しみ、その影響か1980年代に入ると一気に守備成績が悪化しましたが、6’2”の長身を活かしたレンジとしなやかな強肩は1970年代のショート大型化を象徴するような代物でした。

Bert Campaneris

バート・キャンパネリス:1964年~1983年:GG賞 0回
通算 TZR 71 : TZRリーグ1位 0回
ReferenceFanGraphs

Luis AparicioMark Belangerに阻まれGG賞に輝くことはありませんでしたが、Oakland Coliseumを非常に得意とし、ホームで守備成績を荒稼ぎ。反対に移転前のカンザスシティ時代や他球団移籍後は守備成績も伸びず。

本記事で取り上げてきたプレーヤーの中では珍しいことに、MiLB時代やMLBキャリア序盤は外野手としてプレーする機会も多く、両投げという特異なプロファイルも持ち合わせるなど、非常に器用なプレーヤー。

また、MiLB時代1年目は二刀流を務めており、スイッチピッチングを行うこともありました。

1980年代

Ozzie Smith

オジー・スミス:1978年~1996年:GG賞 13回
通算 TZR 239 : TZRリーグ1位 10回
ReferenceFanGraphs

ショート史上最多となる13回のGG賞に輝いただけでなく、数多くの守備指標(TZR、FRAA、Defensive Win Shares)で歴代No.1の数字を残し、客観的評価及び主観的評価の両方で頂点に立つショート守備のGOAT。

単なる傑出度だけならばBelangerが上位かもしれませんが、30代中盤で急速に劣化した彼とは異なり、40歳近くまで高水準をキープ。

ドーム球場×人工芝全盛期の時代、打球速度が落ちない人工芝や硬いダートの上で、あれほどアクロバティックかつ高負担なプレーを行いながらも、これほどのLongebityを披露するなんて神憑り的

そもそも守備力だけで球界最高年俸に到達するプレーヤーなど2度と現れないのでは?

他の候補選手

Cal Ripken Jr.

カル・リプケン Jr.:1981年~2001年:GG賞 2回
通算 TZR 176 : TZRリーグ1位 5回
ReferenceFanGraphs

内野手歴代最高級の強肩を武器にMark Belangerの後釜として申し分ないパフォーマンスを残すも、時代が大型ショートのパワー系守備に追い付かず、肝心のGG賞タイトルはたった2つ。

キャリア終盤にサードへコンバートされなければ、補殺数で歴代トップに立っていた可能性も。

ちなみに、弟のBill Ripkenも優れたセカンド守備成績を残しており、Cal Ripken Sr.も現役時代(MiLB止まり)は好守のキャッチャー。

1990年代

Omar Vizquel 

オマー・ビスケル:1989年~2012年:GG賞 11回
通算 TZR 84 (86) :  DRS 48: UZR 50.8
ReferenceFanGraphs

CarrasquelAparicioConcepcionGuillenとベネズエラからディケイド毎に歴史的名手が現れてきたわけですが、その長い系譜が20世紀最後に辿り着いた最高傑作。

選手寿命が短いプライマリーポジションにおいてOzzie Smithに匹敵する長寿を発揮し、40歳近くまで最上級の守備成績を残すと共にGG賞も獲得。LongevityにおいてOzzie Smithに肩を並べる唯一の存在です。

HOF投票でも順調に得票率を伸ばし、一時期は将来のHOF入りが確実視されていたものの、DVが発覚した途端にBBWAAも手のひら返し。

他の候補選手

Rey Ordonez

レイ・オルドニェス:1996年~2004年:GG賞 3回
通算 TZR 58 (63) :  DRS -3: UZR 8.1
ReferenceFanGraphs

プロスペクト時代からMiLB最高の守備力の持ち主として”Next Ozzie Smith”と持て囃され(スカウティング評価だけでなく、実際にFRAAもMiLBトップ)、MLB昇格後も期待通りの好守を披露。

2000年シーズン序盤の前腕骨折がなければGG受賞回数が3回に留まることはなかったでしょうが、Rbat+50前後の打撃力を考えると、守備力が衰える前にお払い箱になっていたかも。

Rey Sanchez

レイ・サンチェス:1991年~2005年:GG賞 0回
通算 TZR 116 (108) :  DRS 5: UZR 11.0
ReferenceFanGraphs

VizquelOrdonezなど守備のスーパースターに勝るとも劣らない守備成績を残すも、派手なダイビングキャッチを嫌うスタイルのおかげかGG賞には届かず。

NYY移籍時にはDerek Jeterにセカンドへ追いやられる珍事も。

Baseball ProspectusのFRAAではOzzie Smithに次ぐ歴代2位となっており、スぺ体質に苦しむことがなければ他の守備指標においても歴代最上位に位置していたはず。

2000年代

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Adam Everett

アダム・エベレット:2001年~2011年
通算 DRS 119 : UZR 77.0
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MLB定着と時を同じくして誕生したUZRやDRSにおいて、頭1つ抜ける圧倒的な数字を残したゾーン系指標の申し子。

本来なら守備だけで飯を食っていけるプレーヤーのはずでしたが、チームメイトとの衝突によって足を骨折すると、守備だけでなく走攻守の全てにおいてパフォーマンスが低下し、30代前半で現役を引退。GG賞を受賞することもありませんでした。

また、守備成績がバツグンといっても、守備指標が市民権を得る頃には劣化していたためか、2010年代以降に再評価を受けることもなく、単にDreke Jeterを馬鹿にするためのオモチャとなっていた印象。

他の候補選手

Jack Wilson

ジャック・ウィルソン:2001年~2012年
通算 TZR 20 (9) :  DRS 116: UZR 43.7
ReferenceFanGraphs

信じ難い事にEverettと同じくGG賞の受賞経験はありませんが、低重心を活かした数々の派手なハイライトリール・プレーが脳裏に焼き付いており、記憶にも記録にも残るプレーヤーといった印象。

PIT退団以降の守備成績低下は度重なる故障が最大の要因であることは確かですけど、PIT時代はホームとアウェイの守備成績に大きな乖離があったので、故障云々以前にPNCパークがフィットしていたのかも。

Neifi Perez

ネイフィ・ペレス:1996年~2007年
通算 TZR 11 (13) :  DRS 29: UZR 5.7
ReferenceFanGraphs

年齢詐称や薬物検査陽性による出場停止など不祥事が絶えなかったプレーヤーですが、キャリア前半は球界最高級のショート守備の持ち主として持て囃される存在でした。

ただ、2002年には肝心の守備成績が下振れして歴代ワースト級のシーズンスタッツに。

2010年代

Andrelton Simmons

アンドレルトン・シモンズ:2012年~2022年:GG賞 4回
通算 DRS 201: UZR 114.0: RAA 63
ReferenceFanGraphs
Savant

2010年MLBドラフトにて同クラス最高の守備力の持ち主と称され、MiLB時代には”第2のRey Ordonez”と持て囃されるなど、10年に1度の逸材とも呼べるほどの存在でしたが、MLBでは期待以上のショート守備を発揮。

2010年代トップの座へ彼を据えることに異論がある愚かな人間はいないでしょう。

ただ、30代に入ってからショート守備の衰えが着実に進む傍らで、それ以上にバッティングの衰えが早く、Rey Ordonezと同様に30代前半でMLBからフェードアウト。

他の候補選手

Brendan Ryan

ブレンダン・ライアン:2007年~2016年:GG賞 0回
通算 DRS 101: UZR 53.8
ReferenceFanGraphs

全盛期だけならばSimmonsに匹敵するでしょうが、スぺ体質も相まって選手寿命は短く、NYYでもこれといって好守を披露することなく退団。

Eric Stamets

エリック・ステイメッツ:2019年:GG賞 0回
通算 DRS -1: UZR -0.1: RAA 1
ReferenceFanGraphs

MLB出場はたった15試合しかありませんが、2010年代MiLBにおける守備成績No.1ショートストップ。(ただし、より短期間であればSimmonsNick Ahmedが上位。)

BPのDRPでは+72.3、Clay DavenportのFRAAでは+89を記録しており、将来のGG賞との評価を受けることもありましたが、残念ながらMLBに到達した時点で守備力の全盛はとうの昔。