昨年1月に「MLBの2022年リーグ総収益と年次推移について」と題し、MLBリーグ全体における年間収益を取り上げましたが、毎年お馴染みの内部リークによって新たに2023年の総収益が報道じられており、それを機に今回は前回記事のアップデートを行います。
(本当に毎年のリーク情報が正しいかは別として、)2023年シーズンにおけるMLBのリーグ総収益は116億ドル。
これは、108億ドル強を稼ぎ出した2022年から約7%増となり、当然ながら歴代最高益を更新する形に。
特に入場料収入は前年比15%増と観客動員数(前年比9.6%増)以上の伸びを見せ、さらにユニフォーム広告の解禁に伴いスポンサー収入も前年比23%増。
RSNの経営難という逆風こそあれ、コロナ禍の打撃を克服しリーグ成長を続けているように思えます。
ただ、当ブログで何度も述べているように本分野における実数比較は危険。
ということで、下記のグラフ・表に1995年以降のリーグ年間収益、そしてインフレ調整(CPIベース)を加え2023年時点に換算した値をまとめていますが…さて、どうでしょうか?
赤線を見てもらえば、実質的にはコロナ禍前の水準に達していないことが分かるかと思います。
年度 | 総収益 (億ドル) |
インフレ調整後 (億ドル) |
1995 | 14 | 28 |
1996 | 18 | 35 |
1997 | 21 | 40 |
1998 | 25 | 46 |
1999 | 28 | 51 |
2000 | 34 | 60 |
2001 | 36 | 62 |
2002 | 37 | 62 |
2003 | 39 | 64 |
2004 | 45 | 72 |
2005 | 50 | 78 |
2006 | 56 | 84 |
2007 | 61 | 89 |
2008 | 65 | 91 |
2009 | 66 | 93 |
2010 | 70 | 97 |
2011 | 70 | 94 |
2012 | 75 | 99 |
2013 | 80 | 104 |
2014 | 90 | 115 |
2015 | 95 | 121 |
2016 | 98 | 123 |
2017 | 100 | 124 |
2018 | 103 | 124 |
2019 | 107 | 127 |
2020 | 37 | 43 |
2021 | 96 | 107 |
2022 | 108 | 112 |
2023 | 116 | 116 |
停滞するリーグ成長を改善するため、先述のユニフォーム広告に加え、時短ルール導入やポストシーズン拡大など様々な手を打っているものの、成長どころかコロナ禍前の水準に達することすら厳しいのが現状です。
「じゃあ、MLB以外のリーグはどうなの? 他のリーグも同じような状況では?」と考える人もいるでしょうから、簡単に他北米4大リーグとの比較も行っておきます。
下表は各リーグの10シーズン前(2013/14シーズン)、コロナ禍直前の5シーズン前(2018/19シーズン)の総収益、そして昨シーズン(2022/23シーズン)と比較した増加率をまとめたものです。
(MLBはサマーシーズン制なので2014年・2019年を2023年と比較)
リーグ | 10シーズン前 | 5シーズン前 | 昨シーズン |
MLB | 90 (+29%) |
107 (+8%) |
116 |
NFL | 107 (+74%) |
160 (+16%) |
186 |
NBA | 48 (+120%) |
88 (+20%) |
106 |
NHL | 37 (+54%) |
51 (+12%) |
57 |
端的に言えば、リーグ成長の度合いにおいてMLBは他リーグから大きく引き離されており、そもそも実質的な成長率がゼロまたはマイナスである唯一のリーグとなっています。
特に、中国市場とのゴタゴタを乗り越えたNBAの成長は凄まじく、近いうちにMLBを追い越すことは確実。
”NPB下げ”を行うため都合よくMLBのファイナンス面を持ち上げるファンを度々目にしますが、本来ならMLBは褒められるような存在ではありませんよ。
(こうなってくると32球団へエクスパンションするしかないでしょうけど、それについてもNBAの方が先を越して……)