【小ネタ】藤浪のrWARを弄る&守備指標の影響

Ken WaldichukJP SearsLuis MedinaJames KaprielianDomingo AcevedoなどNYYが低劣な指導を施したプロスペクトたちが存分に猛威を奮っているOAK投手陣。

MLB史上ワースト成績を狙える位置にいますが、実はOAK野手陣もしれっとMLBワーストのDRS-33を記録。

見方によっては稚拙な守備に悩まされる可哀想な投手陣とも考えられます。

しかし、Esteury Ruiz(DRS-14、UZR-6.2、OAA-2)やTony Kemp(DRS-7、UZR+1.1、OAA±0)などDRS特有の大きなダウンスイングに見舞われている選手も何人か見受けられ、実際にチームUZRはMLB全体16位の-1.2、OAAは全体22位の-7。

Shea LangeliersやCarlos PerezのFraming RunもUZRやOAAへ組み込めば結局MLBワースト級になるでしょうし、Baseball ProspectusのDPRでもMLBワースト2位の-11.3となっています。

何にせよ本当にOAKが守備で33点も失っている可能性は高いとは考えられませんね。


そこで今回簡単に取り上げたいのが藤浪 晋太郎の投手rWAR。

rWAR-2.2は言わずもがなMLBワーストの数字ですが、彼のrWARの各コンポーネントは下表の通り。

各コンポーネントが意味するところは当然皆さんご存知なので説明しませんけど、RA9defを見れば先ほど示したチームDRSが効きまくっていることが分かります。

悪い意味でMLB史に名を残そうとしている藤浪にとってRA9defのスイングは目の上のたんこぶ。と言うわけで、厄介で迷惑なDRSをかなぐり捨て、野手fWARのようにUZR+OAAを組み込みrWAR再計算を行いました。


Player Value–Pitching
IP G GS R RA9 RA9opp RA9def RA9role RA9extras PPFp RA9avg RAA WAA gmLI WAAadj WAR RAR waaWL% 162WL%
37.2 24 6 44 10.51 4.75 -0.45 -0.11 0.00 94.4 4.81 -24 -2.3 1.27 -0.3 -2.2 -20 .406 .486

下表はあくまでも藤浪の選手ページから抽出した近似値表なので、再計算ではちゃんと「 WAR data archive」の詳細なコンポーネント値を用いています。

また、OAAについてはSavantから投手個人の被OAA値(藤浪の場合は-1)が得られるので、シンプルにそれを適応。-1と表記されているだけ-0.5~-1.499…まで含みがあるとは言え、その程度は誤差のレベルでしょう。

UZRが担う部分については単にチーム合計値から算出。ただし、UZRはフレーミングを考量しないので、Savantの数値を流用。

その結果、DRSベースで1.89失点(-0.45 RA9def)損していた藤浪は、UZR+OAAベースだと0.33失点(+0.08 RA9def)得している計算に。

(フレーミング得点の分配やら投手守備成績の扱いやらには深入りしません。面倒なので。)

そして、この値をrWAR計算に組み込むと-2.16だった彼のWARは-2.37へ下落。

※ツイートの通り昨日計算した時は-2.42だったんですけど、計算に一部間違いがありました。

まあ大体1.0WAR=10得失点のため、DRSとUZR+OAAの数値差が分かった時点で-0.2程度の差になることは目に見えていたわけですけど…。

21世紀の投手rWARワースト

Query Results Table
Rk Player WAR Season
1 Chad Qualls -2.9 2010
2 Jake Arrieta -2.7 2021
3 Luis Mendoza -2.7 2008
4 Ryan Rowland-Smith -2.6 2010
5 Brad Lidge -2.6 2009
6 Dallas Keuchel -2.5 2022
7 Kyle Farnsworth -2.5 2002
8 Rocky Biddle -2.5 2004
9 Barry Zito -2.5 2013
10 Andy Benes -2.5 2001
11 José Cabrera -2.4 2002
12 Derrick Turnbow -2.4 2006
13 Hideo Nomo -2.4 2004
14 Patrick Corbin -2.4 2022
15 Edwin Jackson -2.4 2019
16 Edinson Vólquez -2.3 2013
17 Manny Parra -2.3 2009
18 Mike Maroth -2.3 2007
19 Brian Matusz -2.3 2011
20 Charlie Morton -2.3 2010
21 Edwin Jackson -2.3 2014
22 Kyle Lohse -2.3 2010
23 Corbin Burnes -2.2 2019
24 Chris Tillman -2.2 2017
25 Alfredo Simón -2.2 2016
26 Shintaro Fujinami -2.2 2023

そうすると、21世紀において投手rWARワースト26位の藤浪は、すでに野茂英雄(ワースト13位)の日本人ワーストに達していると見做すことができます。

さらに、162試合換算値では”-4.55 ➡ -4.98

UZR+OAAを適応すれば1884年NLにて史上ワーストの投手rWARを叩き出したBilly Seradをも下回るペースでチームの足を引っ張っていることになります。(当時は112試合制だったので言葉に語弊があるかもしれませんが…)

ちなみに、1884年NLはプロリーグにて初めてオーバースローが解禁されたシーズン。Seradはオーバースローを採用せずアンダースローかサイドスローで投球していた模様で、ルール変更についていけなかった結果が-4.7 WARだったんでしょうね。

当然ながら、いくらOAKでも成績が良化しない限り藤浪をフルシーズン起用するとは思えませんが、彼の球史に残るピッチングに対しDRSがこれ以上悪さしない事を願います。

歴代の投手rWARワースト

Query Results Table
Rk Player WAR Season
1 Billy Serad -4.7 1884
2 Steve Blass -3.9 1973
3 Tom Fisher -3.9 1904
4 Johnny Babich -3.5 1935
5 Dory Dean -3.4 1876
6 Lon Knight -3.4 1876
7 Frank Bates -3.3 1899
8 Andy Larkin -3.2 1998
9 Flint Rhem -3.2 1933
10 Cal McLish -3.2 1944
11 Dave Tomlin -3.1 1978
12 Dave Hamilton -3.1 1980
13 George Caster -3.1 1940
14 Lloyd Allen -3.0 1973
15 Bill Bailey -3.0 1910

最後に、今シーズンDRSとその他守備指標が最も乖離しているチームはOAKですが、昨シーズンだとTORが挙げられます。

てかTORはずっとDRSとその他守備指標の乖離が大きめ。なんか知らんけどロジャーズ・センターはDRSの測定が狂ってんじゃないっすか?

そういうわけで昨シーズン終了時にDRSではなくUZRを用いてTOR先発ローテのrWARを算出した結果が上記ツイートの通り。(※確か記憶ではフレーミング得点をUZRに組み込み忘れていたはず)

Berriosはリプレイスメントレベルを脱却し、GausmanがよりfWARに近づくだけでなく、Manoahに至ってはDylan Cease(6.4rWAR)を上回りAL投手トップに躍り出ます。

WARを活用するに当たり、守備成績に関しては野手WARへの影響ばかり取り沙汰されていますが、上記のように守備指標の種類やアップ/ダウンスイングによって投手WARが大きく左右されることも念頭に置くべきでしょう。


最終的に言いたかったのはこれ。前半の藤浪の話は単にバカにしたかっただけ。