ジェイソン・ドミンゲス(Jasson Dominguez):ヤンキース・プロスペクト

2023年シーズン前半戦終了時点におけるニューヨーク・ヤンキースのプロスペクト(有望株)ランキングTOP50を作成

ジェイソン・ドミンゲス

Jasson Dominguez
2003年2月生(20歳10か月):175cm・86㎏:CF

MLB:ドミニカ:2019年国際FA(契約金$5.1M)
選手ページ:MiLB公式Baseball ReferenceFanGraphs

ヒッティング   : 45/50
パワー      : 55/60
ラン       : 60/55
アーム      : 60/60
フィールディング : 35/40
総合       : 45/55


ドミニカ共和国の田舎町エスペランザにて、NYYファンである元野球選手の父親の元に生まれ、当時NYYに所属していたJason Giambiジェイソン・ジアンビ)がファーストネームの由来。ただし、綴りは「Jason」ではなく”s”が1つ多い「Jasson」です。

ドミニカの野球ファン家庭に生まれたからには野球をプレーするは必然であり、8歳になるとリトルリーグにて本格的なプレーを開始。

そしてリトルリーグ卒業後(13歳目前)、ドミニカの首都であるサント・ドミンゴへ移り、かつてInt FAにてARIでスカウトを務める兄と共に不正行為を行ったトレーナーIvan Noboaのアカデミーに加入。

リトルリーグ時代は主にキャッチャーを務めていたドミンゲスですが、Noboaの元ではセンターに移動。

Noboaが他アカデミーとの練習試合や交流戦などオープンなトレーニング形式を好まないためか、例年のInt FAのトップ・プロスペクトと比べネット上に流出するプレー映像はごく僅かでしたが、2018年終盤頃から打球初速度110マイル、60ヤードダッシュ6.19~6.3秒を残すInt FA 2019年クラス最高、そしてワンダー・フランコ以来の逸材としてプロスペクト界隈でポツポツと話題に。

そして、2019年7月のInt FA契約解禁前後になると、マイク・トラウトやミッキー・マントルと比較するスカウトたちのコメントを載せた記事をMLB.comやEPSNなど大手メディアが掲載。Int FA史上に残るトッププロスペクトとはいえ、流石に誇大宣伝であったことは間違いありませんが、結果として一気にライトな層にまで知られる存在となりました。

ちなみに、2019年7月の契約金はNYYのボーナスプール520万ドルに対し510万ドル。同クラスで契約した他のプロスペクトたちは全員がモノになりませんでした。


Year Age Lev G PA H HR SB BB SO BA OBP SLG OPS
2021 18 A-Rk 57 241 52 5 9 27 73 .252 .353 .379 .731
2021 18 A 50 214 48 5 7 21 67 .258 .346 .398 .744
2021 18 Rk 7 27 4 0 2 6 6 .200 .407 .200 .607
2022 19 A-A+-AA 120 530 123 16 37 72 128 .273 .376 .461 .837
2022 19 AA 5 22 2 1 1 3 5 .105 .227 .368 .596
2022 19 A+ 40 184 48 6 17 23 34 .306 .397 .510 .906
2022 19 A 75 324 73 9 19 46 89 .266 .374 .440 .814
2023 20 AA-AAA 118 544 121 15 40 83 133 .265 .377 .425 .802
2023 20 AAA 9 37 13 0 3 6 3 .419 .514 .581 1.094
2023 20 AA 109 507 108 15 37 77 130 .254 .367 .414 .781
2023 20 Maj 8 33 8 4 1 2 8 .258 .303 .677 .980

2019年は公式戦の出場機会こそありませんでしたが、秋にドミニカのInstructional Leagueに参加しホームランを放つなど活躍し、翌2020年のプロデビューへ向けて順調なスタートを切ったはずでした。

そして、残念ながら2020年はコロナ禍によりMiLBが完全中止となり、ドミンゲスもドミニカでリモート・トレーニングを受けるハメに。

こういった状況でも本来はチームがしっかりとグリップを握って効果的なトレーニングを授けるべきなのでしょうが、ご存知の通りNYYの指導は穴だらけの手抜き。

コロン休止期間中にハードワーカーであるドミンゲスは筋力の大幅な増強に勤しみ、野球選手には相応しくないボディビルダー体型を築き上げてしまう有様。

結局のところ2021年シーズン前にNYYがドミンゲスへ筋量減を命じたため現在の体型に至るわけですが、約1年間を無駄にしたと言っても過言ではないでしょう。

紆余曲折を経て2021年6月にFCLでプロデビュー。約1週間程度でAクラスへ昇級を果たし、昇級から9試合連続でヒットを放つなどスタートダッシュ〇。

ただ、所属のフロリダ・ステート・リーグ(FSL)では同年からStatcastによる機械判定のテストが行われており、7月下旬にストライクゾーンの設定サイズを変更したのですが、これが逆効果となったのか7月末から勢いが止まり、バビったにもかかわらずwRC+はリーグ平均(100)前後を推移。K%が30%、GB%が54%を超えるなど危険水準に達し、最速111.7 mph EVを残すも平均EVは85.8 mphに留まりました。

翌2022年シーズンは開幕から前年を下回る低調なパフォーマンスを残し、私を始め早とちりな無能ファンがバスト叩きを続ける中、5月から人が変わったかのように良化。

最速112.7 mph EV、平均88.1 mph EV、47 GB%と大幅に打球クオリティを向上させるとともに、それまで20%を超えていたK-BB%が5月以降は10%を下回るなどアプローチ面も急成長。

2年連続の出場となったフーチャーズ・ゲームではホームランを放ち、シーズン後半戦開幕直後にA+昇級を果たしましたが、昇級後も勢いは止まるどころか更に数字を伸ばすなど加速。昇級直後からwRC+は150前後を推移し、シーズン最終盤9月にはAAへと到達。

シーズン開幕前から夏頃にかけてはトップ100から外すメディアが相次いだものの、多くのエバリュエーターが手のひら返しを余儀なくされました。

レギュラーシーズン終了後に参加したAFLにてリーグ全体ワーストの打撃成績(.159/.250/.217)を残し、成功に終わるはずだった2022年シーズンに泥を塗るも、翌2023年STでは4本塁打、.455/.520/1.045のセンセーショナルなパフォーマンスを披露。

前年の活躍も相まって大ブレイクを予感させましたが、開幕から低BABIPに苦しみ2年前のようにリーグ平均を行ったり来たり。(盗塁数でリーグ上位を争うなど走塁成績は良好)

さらに、過去2年間は全ての試合においてセンターをプレーしたものの、エバーソン・ペレイラジェイソン・ロザリオに押し出される形で約4割の出場機会がレフト起用に。(サンプルサイズは別として、)守備成績も芳しくありませんでした。

もちろん20歳とAAでは最年少の部類に入る存在であり、対戦投手の全てが年上だったとはいえ、スペンサー・ジョーンズエバーソン・ペレイラを上位と考えるエバリュエーターが増えたのも事実。

しかし、後半戦に入るとBABIPの揺り戻しもあり復調。8月下旬AAAへ昇級するまでの33試合においてwRC+は160を超え、コンタクト率が約10%上昇したことにより30%近かったK%も20%未満に良化。

さらにAAA昇級後、8月31日までの9試合においてBarrelを1本しか打てなかったものの、8.1 K%、16.1 BB%、19.0 Chase%、96.1 Z-Con%と驚異的なアプローチを見せ、.419/.514/.581の好成績を記録。

セプテンバー・コールアップに備えチーム内部ではMLB早期昇格に消極的な声もあったようで、恐らくキャッシュマンもその1人だった可能性が高いと思いますが、ハル・スタインブレナーからゴーサインが出し9月1日にMLBデビュー。

そのデビュー戦初打席でバーランダーから放ったホームランを含め8試合で4ホーマーを記録し、ありとあらゆるファクターが下振れした2023年NYYの数少ない明るい話題となったものの、右肘UCLを損傷しトミー・ジョン手術に。

体型のわりに故障が少ないプレーヤーだったので尚更ショッキングなニュースでしたが、2024年シーズンは後半戦に実戦復帰を果たし、終盤戦にMLBへ再昇格するような段取りとなることでしょう。

結局のところサービスタイム1年到達は2025年に持ち越しとなり、早期昇格云々はあまり関係なかったわけですね。


プロ入り前に報じられていた身長は5-11だったはずですが、プロ入り後の公称身長は5-10。さらに、2023年からは5-9へと引き下げられました。

ちなみに、21世紀においてレギュラーの座を射止めた5-9以下の両打外野手はQuinton McCrackenBilly BurnsLeury Garciaの3人のみ。それほどドミンゲスのようなプレーヤーは希少な存在です。

ヒッティング : 45/50

左打席については、アマチュア時代から2023年にかけて非効果的なコックやヒッチを削ぎ落し、より低重心かつリピータブルなメカニクスに。

決してコンタクトスキルが優れたバッターではありませんが、右打席と比べ左打席の方が同スキルに長けており、より積極的なアプローチを見せます。

MLB初ホームランのように外角球を逆方向へ強打する技術を兼ね備えていますが、基本的にはプルサイドへの打球割合が高く、プルヒッターと言っても過言ではありません。ただし、プロ入り後は一貫として低弾道に苦しみ、GB%は常に高め。

外角球と反対に反対にクロスファイアの内角球は苦手としており、特に2021~22年シーズンはウィークコンタクトを量産。2023年シーズンに入り大幅に改善されていますが、楽観視はできませんね。

また、球種別成績は典型的なファストボール・キラーの傾向を示しているものの、SIやCHなど外角低めやゾーン外へ逃げるピッチに対してフォームを崩してまで追っかける様なスイングは行わず、バットが届く範囲外は仕方ないと割り切っている印象。

ただし、プロ入り後3年間は一貫としてSLに対し打ち損じが多く、スイッチヒッターの利点を十分に活かしているとは思えません。別にSLの投球頻度なんて限られていますけど。

右打席においては毎年のように左打席を大きく下回る数字を残しており、左打席と同様にクロスファイアの内角球に対して柔軟性に欠けるスイングを披露。

また、上半身が先行し突っ込んでしまうことが多く、限られたコース以外に対してはロフトスイングをキープすることができず、本来はフライやラインドライブを意識すべきゾーン内(特に高め)のピッチに対してもゴロを量産。

本人も右打席に自信がないのか消極的なアプローチを行うことが多く、自らをレイトカウントに追い込み墓穴を掘っている印象があります。

とは言っても、スイッチヒッターを止め左打席に専念すべきほど右打席が劣っているわけでもなく、そもそも右打席なんて左打席と比べて圧倒的に打席数が少ないからね。メカニクスも左打席以上に改善の余地があるわけで。

てなことで、両打席共にコンタクトより選球眼がウリのバッター。バッティング(アプローチ)の成熟度は同年齢帯でもトップクラスであり、数年前の誇大宣伝によって作り上げられた色眼鏡を外してみれば、ハイフロアーなバッターと呼べるのではないでしょうか。

また、パフォーマンスがプロデビューから今日までアップダウンを繰り返しており、エバリュエーターやファンの頭を悩ませ続けている存在でありますが、上述したように2023年はシーズンが進むに連れコンタクト率が向上しており、現時点では追い風が吹いていますね。

パワー : 55/60

プロ入り前の時点で年齢離れしたマッスルボディと身体能力を兼ね備え、15歳の時には110 mph EVを計測するなど、パワー面に関しては非常に早熟なプレーヤー。

2020年の異常な筋トレでボディバランスを崩した時期もありましたが、2021年のXST(当時18歳)では打撃練習にて117 mph EVを計測。別日にも115.9 mphを叩き出しており、ローパワーは文字通り規格外。

公式戦においては2022年の112.7 mphが最速ですが、2年連続で平均EVの自己ベストを更新しており、2023年シーズンは91 mphに到達。

90パーセンタイル EVについても、2022年は107~108 mph、2023年は106 mph前後と55~65スケール級の数字を記録。

このようにEVは同年齢帯のバッターの中で最上位に位置付けられます。

しかし、ヒッティングの項でも述べましたが、長らく低弾道に喘いでおり、GB%は45~50%と平均超のレンジで推移。その上、スプレーアングルに偏りがあるため、シフト対策も容易。

プロ通算323試合で40 HRに留まっているのも、単純なパワー不足ではなく低弾道が要因です。

本来ならプラス超のローパワーをダイレクトにゲームパワーへトランスレートできず、ゲームパワーがプラスレベルに収まってしまっているイメージ。

最近はハイrpm・ハイIVBのフォーシーム・ブームがひと段落して、効果的なVAAを意識したシンカー系への回帰が始まっているわけで、このままでは少なくとも右打席がYandy Diaz(CLE時代)の下位互換となっていましいます。

ラン : 60/55

Noboaのトレーニングにて60ヤードダッシュ・6秒台前半を計測し、パワーだけでなくスピードに関しても非常に早熟。過去2シーズンは3試合に1個のペースで盗塁を決めています。

体格が豆タンク型ということもあり、早い段階でスピードが落ち込むと見込まれていますが、MLBデビュー後の限られた出場機会の中ではBolもを記録しており、鈍足集団NYYの中で俊敏な部類に入る存在。

ただ、積極的(かつ脳筋気味)なベースランニングはギャンブル性が高く、盗塁成功率も並みの数字。

ベースランニングの指導・意識付けが下手糞…というか、ハナからヤル気がないNYYがまともに手綱を握ることができるとは到底思えず、ボルピ―のような良好な走塁成績は期待すべきではないかも。

また、フットスライディングとヘッドスライディング共に技術が稚拙なため、一つ間違えばケガに繋がりそうな酷いスライディングプレーが後を絶ちません。

アーム      : 60/60

アマチュア時代から送球についても平均以上の評価を受けており、実際にMLBのStatcastにて外野送球は最速98.9 mphを計測。これは、MLB全体でも90パーセンタイル前後に位置する数字です。

また、低弾道送球を心掛けているためホップスローのような送球ミスも少なく、レフトでは勿体ないツール。

ただ、送球に備えた打球への入り方や捕球姿勢が下手で、キャッチ&スローに要する時間も長め。

トミー・ジョン手術の影響も不安です。

フィールディング : 35/40

これまで取り上げた4つのツールについては平均以上のクオリティと将来性を有していますが、兼ねてから当ブログで何度も述べているように外野守備は懸念材料。

バッティング以上に好不調の波が大きく、ダウンスイング時は初歩的なミスを連発。

打球判断がハマればプラスのスピードを活かし優れた守備範囲を披露するも、Jumpの段階でミスを犯すことが多々あり、Jump後については左中間後方に対する背走が苦手。

前方の打球に対してもダイビングキャッチを躊躇して中途半端な処理を行うことが多く、キャッチングとバウンド処理におけるグラブ捌きも稚拙なため、打球を取りこぼして余計な進塁を許す場面も少なくありません。

実際に2023年からはレフトでの起用も増え、NYYがコーナーへのコンバートを視野に入れていることは間違いなし。

2024年シーズン終盤の復帰時はセンターでの出場機会が得られるはずですが、ベルドゥーゴがいなくなる2025年はグリシャムがセンター、ドミンゲスがレフトを守ることでしょう。

また、当然ながらフィールディング40グレードはセンターとしての評価。コーナーならフリンジレベルの扱い。

総合 : 45/55(FV)

体格が完成されており、同年齢帯のプロスペクトと比べ成長の余地は限らている…つまりシーリングが低いと考えられますが、年長プレーヤー相手に平均以上の成績を残してきた点は評価に値。

近年において20歳でAAに定着したプレーヤーのほとんどがMLB昇格後も戦力となっているので、フロアーは思っている以上に高水準なのかもしれません。

NYY所属、選球眼に優れたスイッチヒッティング、パワーとスピードのコンビネーション、外野守備への懸念を踏まえると、Bernie Williamsと比較すべきかもしれませんが、当然ながら球団史に残るスター選手には遠く及ばず、現実的な50パーセンタイルのアウトカムはJose Cruzのイメージ。