晩年のタイ・カッブが語った「現代最高の野球選手」

アメリカ議会図書館のオンラインアーカイブにて過去の野球記事を漁っていたところ、日曜新聞付録マガジン「The Week Magazine」にて記者が読者からの質問に答えるコーナーを目にしたのですが、その中で1958年5月18日付の同誌で「タイ・カッブ以降の最高のプレーヤーは誰か?」という質問に際し、わざわざジョージア州の自宅を訪問してタイ・カッブ(当時71歳)本人に回答を求めていました。

正直なところインタビューの中身は在り来たりな定型文が連続しているのですが、最後にチクっと老害発言をかますなど”彼らしさ”が垣間見える部分も。

よくよく考えると開幕からヤンキースについてしか書いていないので、そろそろ今シーズン初の非ヤンキースネタもブっ込んでおきましょう。



以下、タイ・カッブのインタビュー全文訳

私が30年前にグローブを置いて以来、長き年月を経て数多くの素晴らしいプレーヤーが現れ、そして消えていった。

何事においても「最高」を決めることは、選ばれなかった何百もの選択肢を傷付けてしまう。しかし、「最高のプレーヤー」を「最高のプレーヤーたち」と読み替えて構わないのであれば質問に答えよう。

私の考えでは、現代野球は現役でプレーする3人の真のスーパースターを輩出している。テッド・ウィリアムズスタン・ミュージアル、そしてミッキー・マントルだ。

3人の中でもウィリアムズミュージアルは長年に渡り活躍を見せており、その2人を超える可能性があるもののマントルはまだ神童の範疇にいる。

マントルは怪我に悩まされ続けているが、もし現在のペースを維持することが出来れば、史上最高のプレーヤーとして歴史に名を残すことだろう。

当然ながらテッド・ウィリアムズは現代のビッグ3に選ばれるべきであろう。長打は放つことに関しては恐らく史上最高の打撃職人であり、現役でただ1人唯一シーズン打率4割を記録したプレーヤーなのだからファーストチョイスで然るべきだ。

第二次世界大戦、朝鮮戦争、そして故障によって何シーズンも失うことがなければ、彼がさらにどれだけの偉業の達成したか知る由もない。しかし、39歳にして6度目のAL首位打者に輝いたこの男は間違いなく歴代最高のプレーヤーの1人だ。

そして、私が選ぶ最後のプレーヤーもちろん、現役選手の誰よりも数多くのレコードを保持しているカーディナルスの偉大なスター”スタン・ミュージアルである。

この3人が私にとってのビッグ3であるが、他にも数多くの偉大なプレーヤーが私の引退以降後に現れた。特にジョー・ディマジオは無視できまい。また、投手の名前も挙げろと言われれば、カール・ハッベルボブ・フェラーディジー・ディーンの3人を私は挙げたい。

私の時代から野球は大きく変化した。もしラリー(ナップ)・ラジョイがこのライブボール時代(現代)にプレーすればきっと打率.450を残すだろうし、シューレス・ジョー・ジャクソンベーブ・ルースのホームラン記録を脅かすであろう。

だが、現代ではウィリアムズミュージアルマントルの3人がそう(ベスト)であることには確信があり、考えてみれば、彼らはどの時代でプレーしても偉大な選手となったはずだ。

1957年シーズンまでの通算成績



後書き

カッブは晩年まで高打率かつ守備走塁(特に走塁)に隔てた選手を好んでいたはずですが、当時すでにレジェンドとして確固たる地位を築いていた2人と、1956~57年の2年連続でMVPに輝き球界最大のスターに上り詰めていたマントルという当たり障りのないチョイス。さらに選出理由も在り来たりの内容で、はっきり言ってツマらん😒

ただ、当時の彼はライブボール(飛びやすい球)、ホームラン偏重による盗塁・バント・ヒットアンドラン軽視、走攻守に渡るメカニクスの変化などを理由に現代野球を気に入っておらず、ウィリアムズ以下を褒め称えた最後にキチンと老害ムーブをかましてくれました😘

でも「自分が現代でプレーすれば…」の最悪なパターンではないだけマシか🤔 ラジョイジャクソンも首位打者争いでカッブ相手に一度も勝てなかった選手だけどね🤫

また、”タイ・カッブ以降の選手”を”自らの引退後にデビューした選手”を捉え、(憎き?)ライバルのベーブ・ルースルー・ゲーリッグレフティ・グローブらは選択肢に含まれていなかったよう。(ただし、カール・ハッベルカッブ引退年の1928年にMLBデビュー。)

ちなみに、同年の8月ヤンキー・スタジアムを訪れた際も、現代野球についてインタビューを受けていますが、その中では”1910~30年代でも同じくスターになったであろう現役選手”として3人の他にウィリー・メイズハンク・アーロンエディ・マシューズアル・ダークホワイティ・フォードの名を挙げています。

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