「1931年のPublic Ledgerによる投票」、「1942年のSporting Newsによる投票」に続き、今回は1950年のAP通信が行った”The Greatest Athlete of the past 50 years”投票です。
これは文字通り”20世紀前半における最高のアスリート”をスポーツ記者及びラジオキャスターの投票により選出するもので、全米から393名もの記者とキャスターが参加する大々的な企画。
各投票者が競技に関係なく1位から3位まで選出し、1位=3点・2位=2点・3位=1点のボルダ式得点法により総合得点を比較する形式がとられており、その投票結果(総合18位まで)が下表となります。
投票結果
Name | 競技 | 1位票 | 総得点 |
Jim Thorpe | Multi-Sport | 252 | 875 |
Babe Ruth | Baseball | 86 | 539 |
Jack Dempsey | Boxing | 19 | 246 |
Ty Cobb | Baseball | 11 | 148 |
Bobby Jones | Golf | 2 | 88 |
Joe Louis | Boxing | 5 | 73 |
Red Grange | Football | 3 | 57 |
Jesse Owens | Track and Field | 0 | 54 |
Lou Gehrig | Baseball | 4 | 34 |
Broncho Nagurski | Football | 1 | 26 |
Jackie Robinson | Baseball | 2 | 24 |
Bob Mathias | Track and Field | 0 | 13 |
Walter Johnson | Baseball | 1 | 12 |
Glenn Davis | Football | 0 | 11 |
Bill Tilden | Tennis | 0 | 9 |
Glenn Cunningham | Track and Field | 0 | 8 |
Glenn Morris | Track and Field | 0 | 8 |
Cornelius Warmerdam | Track and Field | 0 | 7 |
ポイントを獲得したアスリートは総勢56名。
アメリカ国内の記者とキャスターに投票を募ったため国外のアスリートが冷遇されるなど非常に偏りある内容であり、ラインナップから陸上・野球・フットボール・ボクシングがこの時代における4大競技であったことが分かります。
その中で1位に選ばれたのは当時すでに神格化されていたJim Thorpe。約2/3が1位票を投じるほどの圧倒的大差を付けトップに。
そして、野球選手としては最高順位となる全体2位にBabe Ruthがランクイン。Ty Cobbが野球2番手として続きます。
1931年や1942年の投票では1位だったCobbと3位だったRuthが逆転する結果となったわけですが、単に業界におけるRuthの評価が時を経て上昇しただけでなく、Cobbの現役時代を知る同業者が投票権を与えられた過去投票と有権者のタイプが異なることも大きな要因の一つでしょう。
さらにRuthの盟友(迷友?)Lou Gehrigが野球3位に。(今度取り上げますが)同時期の同種の投票でも上位2名に次ぐ3位にランクインしており、バスケットボール界のKareem Abdul-Jabbarのようなポジションに収まっていたようです。
また、前年にMVPを受賞していたMLB4年目Jackie Robinsonの上位ランクインは特筆すべき点。より上位の黒人アスリートがJoe LouisとJesse Owensのみであり、1位票を獲得は前者だけであることを考えると、Robinsonが巻き起こしたセンセーションが如何なるものだったか想像に難くありません。
ピッチャーが冷遇されていた1931年や1942年の投票と対照的にWalter Johnsonが1位票及び二桁ポイントを獲得している点も注目に値。
ちなみに、他にポイントを獲得した野球選手は下記の9人。
- Joe DiMaggio
- Stan Musial
- Mickey Cochrane
- Rogers Hornsby
- Rube Waddell
- Carl Hubbell
- Ted Williams
- Honus Wagner
- Christy Mathewson
やはり、依然としてCy Youngは得票を得られず。この約6年後にピッチャー最高の名誉として”Cy Young Award”が誕生するとは信じられません。