ヤンキースの2022年シーズン入場料収入と過年度記録について


ゲリット・コールの獲得時、上記の記事の2ページ目でヤンキースのファイナンス面について記しました。記事全体の文字数も珍しく1万字を...

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2年前にヤンキースのファイナンス面(入場料収入、放映権料、運営支出など)についてまとめ、その後も毎年記事を更新するつもりだったのですが、コロナ禍によってトーンダウン。

そのまま今日までほったらかしになっていたところ、ニューヨーク地元紙Crain’s New York Businessによる「2022年シーズンにおけるヤンキースの入場料収入」についての報道を目にしました。

そこで今回は、同誌の報道内容を軸にヤンキースの入場料収入を簡単におさらいします。


目次


2022年シーズン入場料収入+2021年

Crain’s New York Businessの報道ソースである格付け会社ムーディーズによると、2022年レギュラーシーズンにおけるヤンキー・スタジアムのヤンキース戦入場料収入(チケット売上、通常席+スイート席)は2億8400万ドルだったとのこと。

ここから更にポストシーズン(ALDS+ALCS)にてホーム開催計5試合が行われたわけですが、2019年ポストシーズンでホーム開催計5試合で6900万ドルを売り上げており、それを踏まえると(ALCSの盛り下がりも加味して控え目に見積もると)2022年のポストシーズン入場料収入は6500万ドル前後、そしてレギュラーシーズンも合わせて3億5000万ドル前後と推測されます。

さらに、格付け会社フィッチ・レーティングスのレポートによると、2021年シーズンの同入場料収入は1億9200万ドル。同シーズンは6月下旬まで観客動員数(入場者数)に制限が課せられており、もし制限が無ければ2022年シーズンと同等の入場料収入を稼ぎ出していたはず。

ちなみに、同シーズンはポストシーズンの前売りチケットを3760万ドル分売り上げていたようですが、アウェイ開催となったワイルドカードでレッドソックスに敗れ去ったため全部パーに…。

入場料収入の年次推移

ヤンキースは新球場の建設及び運営に係りニューヨーク市に対し入場料収入を報告する義務があり、現地メディア(主にニューヨーク・タイムズ誌)は情報公開制度を用いて同報告を入手しそれをソースに報道を行っていますが、私の知る限り2008~2019年の入場料収入が報道を通して公表済み。

また、2008年にニューヨーク・デイリーニュース誌がヤンキースのファイナンシャルレポートやFan Cost Indexをソースに2000~2007年の入場料収入を報道。

それらの値を下記グラフ及び表にまとめました。

ただ、ニューヨーク・デイリーニュース誌の報道内ではポストシーズンを含むか明記されておらず、他メディアの報道などと照らし合わせると恐らく含まれていません。2000~2007年の期間中は毎年ポストシーズンへ進出したわけですから、2008年以降と比較するに当たってはその点に留意してください。

加えてポストシーズンではWCの50%、LDSの第1~3戦及びLCS・WSの第1~4戦の60%の入場料収入が選手分配金にプールされるため、利益率は微妙なんだけどね。

年度 入場料収入
(百万ドル)
入場者数
(万人)
2022 284*
(350?)
314
2021 192 196
2020  ―― ――
2019 336 330
2018 304 348
2017 319 315
2016 231 306
2015 277 319
2014 284 340
2013 295 328
2012 353 354
2011 377 365
2010 384 377
2009 397 372
2008 267 430
2007 188 427
2006 156 425
2005 144 409
2004 123 378
2003 109 347
2002 102 347
2001 98 326
2000 84 306

※⓪青字は旧球場(前球場)、赤字は新球場(現球場)
※①2000~2007年はニューヨーク・デイリーニュースの報道がソース

※②2000~2007年はポストシーズンを含むか不明(恐らく含んでいない)
※③2008年以降はヤンキースがニューヨーク市に報告した値
※④2020年は無観客開催
※⑤2022年はポストシーズンを除く値、()内はPS含推定値

約5万7500座席の旧球場から約5万300座席の新球場へ移ったことで入場者数こそ減少したもののチケット単価の値上げや新球場開場フィーバー、ワールドシリーズ優勝を含むチーム成績好調、ファンを奪い合うライバル球団メッツの低迷によって2010年代当初前後は3億5000万ドルを超える入場料収入を稼ぎ出したヤンキース。

その後は低迷期突入によって収入が落ち込むも、コンテンダー復活により持ち直したことが見て取れるでしょう。

特に2022年シーズンは過去10シーズンにおいて最高値を叩き出していますね😘

ただ、リーマンショック時の2009年を除き1956年以降常に年間インフレ率がプラスとなっているアメリカにおいて、年度ごとの金額を直接比較するのは馬鹿の所業😣

次はインフレも考慮した入場収入に触れましょう。

インフレ補正後の入場料収入

インフレ率(消費者物価指数ベース)調整によって各年度の入場料収入を2022年に換算。

その結果が下記のグラフ及び表となりますが…どうですか?

残念な事実が見えてきたのではないでしょうか?

前章で「2022年シーズンは過去10シーズンにおいて最高値を叩き出した」とポジティブに捉えましたが、実のところパフォーマンスはコロナ過以前の水準に届いておらず、低迷期の2010年代中盤と比べても大差無し。

さらには旧球場晩年との差も縮まっており、同時期はポストシーズンでの主催試合が少なかったことから、レギュラーシーズンに限るとすでに大差はないと考えらます。

また、(後に触れますが)新球場に関してヤンキースが支払っている(返済している)球場建設費及びリース料は旧球場と比べて遥かに高価。

つまり、ヤンキースは新球場から恩恵を受けるフェーズをすでに脱してしまっているのです。たぶん。

年度 入場料収入
(百万ドル)
インフレ補正後
(百万ドル)
2022 284*
(350?)
284*
(350?)
2021 192 211
2020  ―― ――
2019 336 392
2018 304 361
2017 319 388
2016 231 287
2015 277 348
2014 284 358
2013 295 377
2012 353 458
2011 377 499
2010 384 525
2009 397 551
2008 267 370
2007 188 270
2006 156 231
2005 144 220
2004 123 194
2003 109 177
2002 102 169
2001 98 165
2000 84 145

2010年代の放映権バブルにより「MLBは放映権料が高い…」と馬鹿の1つ覚えのようにほざきボールパークビジネスを軽視するファンが大量発生していますが、年間数百万人を動員するMLBにおいて入場料は今も変わらず非常に重要な収入源。

現地観戦離れがヤンキースに限らず世界スポーツ界全体の大きな課題とは言え、ヤンキー・スタジアムの現状を楽観視すべきだとは思えませんね(キリッ)

その他の球場収入と支出について

ここまで入場料収入のみを語りましたが、最後にその他球場運営に付随する収入と支出について簡単に記しておきます。

売店売上

ビールが1杯12~15ドル、ホットドッグが8ドルで販売されるヤンキー・スタジアム球場内の売店は約45店舗。

新球場開場後の売店売り上げについてデータを持ち合わせていないものの、2007年は年間約6500万ドルだったとのことで、その後のインフレや入場者数・収入の推移を踏まえると現在は1億ドル前後と推測します。

結局のところ出店者とヤンキースの契約形態(単に出店料だけが支払われるのか、それとも売り上げの一部がインセンティブとして支払われるのか)が分からないので、ヤンキース自体の利益までは推測しかねるのですが、2016年シティ・フィールドにてメッツが2000万ドルを得ているので、ヤンキースは少なくとも数千万ドルを稼いでいるのではないでしょうか。

駐車場

州と市は新球場建設に合わせ9100台分の駐車場を3億4000万ドル費やして整備。

別にヤンキースは整備及び運営に大きく関わっていないのですが、新球場開場直後から駐車場利用者数は当初の予測を大きく下回り、なんと年間約3000万ドルもの大赤字を計上。運営会社は実質的に破綻し、目も当てられぬような惨状が広がっています。

当然ながら赤字補填のため駐車場料金は値上げを続け、現在のヤンキー・スタジアム利用時の料金は大体45ドル。ヤンキースにとって駐車場利用のハードルが低いほど集客に有利なわけで、ヤンキースが直接的にほとんど関わっていないとは言え、間接的に不利益を被っていると言えますね。

ちなみに、駐車場を取り壊してMLS所属ニューヨーク・シティFCの専用スタジアムを建設する案も浮上していましたが、折り合いが付かず建設予定地はシティ・フィールド隣に変更となりました。

(ニューヨーク・シティFCはヤンキースが20%の所有権を保有。専用スタジアム建設まではヤンキー・スタジアムを仮の本拠地として利用。)

ネーミング・ライツ

メッツのシティ・フィールドが年間2000万ドル、ジャイアンツのオラクル・パークが年間1000万~1500万ドル、レンジャーズのグローブライフ・フィールドが年間1100万ドル、ブレーブスのサントラスト・パークとマーリンズのローンデポ・パークが年間1000万ドルものネーミング・ライツ料を生み出していること考えると、ヤンキースが完全なコントロール権を有しているスタジアムのネーミング・ライツを売り出せば年間3000万ドル以上の利益となるはず。

伝統ある”ヤンキー・スタジアム”の名を捨て去ることに対し反対意見が賛成意見を上回ることは想像に難くありませんが、個人的には球場名なんてものにこだわりは無いので利益を優先すべきだと思いますね。

球場建設費返済

新球場建設費は周辺開発費も含めて合計23億ドルで、そのうち11億ドルがヤンキースの負担。

ヤンキースは2046年まで分割払いで返済することになっているのですが、毎年2月の最終日がその支払日。一昨年度のニューヨーク市産業開発局の報告書には2022年や2023年の支払い額が8400万ドルと記されています。