Baseball Prospectusが新たなる守備指標RDAを導入!


Baseball Prospectus has a new flagship defensive metric.
Answers to your every burning query. Probably. If not, ask away!

これまで投手指標DRA、打撃指標DRC+などの画期的なツールを開発し選手評価に一石を投じようとするも、一部のモノ好き以外からは相手にされてこなかったBaseball Prospectus

上記指標では試合中の気温や湿度、対戦相手など多種多様なコンポーネントを考量するなど緻密なアプローチを行っていますが、守備指標においてはClay Davenportが20年以上前に開発したレンジ系指標FRAAのアップデートを行うに留まっており、他のスタッツサイトから大きな後れを取っていることは明らか。

そして、今日の守備指標界隈ではSports Info Solutions(John Dewan主導)のDRS、FanGraphs(Michael Lichtman主導)のUZR、Baseball Savant(Tom Tango主導)のOAAがビッグ3のような存在と見做されていたものの、とうとうBaseball Prospectusが重い腰を上げ新たなる守備指標を発表。

その名もRange Defense Added(RDA)

これはDRSのPART SystemやOAA本体と同様に野手の安打阻止(アウト奪取)能力を得点化した指標であり、守備全体における守備得点はRDAに送球指標(BRR_Arm、OF_AST)を追加したDeserved Runs Prevented(DRP)で表現されます。

RDA ↔ 各守備指標コンポーネントの関係性は以下の通り。

「RDA」
 ≒「PART System(DRS)」
 ≒「Range Runs+Error Runs(UZR)」
 ≒「OAA」

RDAの概要やコンセプト、有用性の証明等については記事最上部のBaseball Prospectusの記事に記載されているところで、本来ならばここからはその内容を翻訳や要約なりすべきなのでしょうが、そんなことができるようなアウトプット力は持ち合わせていません。だからサラッと要点だけを記します。

まともにRDAを理解したいならオリジナルの記事を読むか、そこら辺の有能ファンが取り上げるのを待って下さい。内容の難易度的には「RDA Questions, Answered」→「Introducing Range Defense Added」の順で読む方がおススメですが、何にせよ指標体系は至ってシンプル。


RDAの要点

基本概要

DRSやUZRなどゾーン系指標とは異なりレンジ系指標へ大分される。

DRSやOAAが1プレー毎にアウトカムを評価するのに対し、RDAは選手毎にアウト成功率を算出。同ポジションのMLB平均値と比較することで確率差Range Out Scoreを導き出し、アウト(得点)の増減にコンバートする。根本的にはOAAの「Success Rate」「Estimated Success Rate」「Success Rate Added」のアプローチに近い。

Statcastデータを使用するため2015年シーズン以降にのみ適用し、2014年シーズン以前は引き続きFRAAを使用。

利点

DRSではビデオ解析、OAAでは一般に公表されていない野手の位置座標データを使用するなど高度なメソッドが用いられているものの、RDAは一般的に入手可能なデータのみで算出することができる。

また、DRSやOAAとは異なり守備時のポジショニングも包括。

ショートへの追加指標

守備範囲が広くタフプレーに直面しやすいプレーヤーと守備範囲が狭くルーティンプレーの割合が高いプレーヤー間の有利不利を是正するため、通常の守備レンジのエッジエリアにおける守備機会をレート化したAttempt Rangeを用いてRange Out Scoreを補正。

ただし、現時点ではカバーエリアが大きくRange Out Scoreの個人差が大きなショートのみに優先して適用。今後は他ポジションへも拡大予定。

エラーの扱い

外野手については公式記録のエラーを使用するが、内野手については無視。独自に内野打球のアウト成功率を算出する。

シフトへの対応

Baseball Savantから抽出したシフトデータを使用。

他守備指標との比較(オリジナル記事要参照)

守備指標は単一シーズンなど短期間における変動が大きく一般的には3年程度のサンプルが必要だと考えられているもののDRS、UZR、OAAらと比べ年度間相関は優秀

この点がRDAについて一番大事。

ホークアイによる好影響

MLBは2020年からStatcastにおけるボール測定のメインシステムをトラックマンからホークアイへ移行。

ホークアイによりボール測定精度が著しく向上したと考えられており、実際に2021~2022年シーズンにおけるRDAの年度間相関は格段に向上している。

チームメイトの影響

守備指標においては少なからずチームメイトの守備力が影響を及ぼすものの、RDAではその影響が小さい。


中身はシンプルですが非常に有用性が高いと考えられ、fWARコンポーネントからOAAに半分追い出されるなど寿命が近づいているUZRに取って代わり、メインストリームで用いられる可能性も。

当ブログや個人のTwitterでも兼ねてからDRS、UZR、OAAを三種の神器として用いてきましたが、今後はUZRの使用を止めDRPに切り替えることとします。

ただ、DRAやDRC導入時もそうでしたがBaseball Prospectusは新規指標を知らぬ間にアップデートすることが多く、現在サイト上で公開されているRDAやDRPの値も近いうちにガッツリ修正されるかもね。