MLBの全放映権契約まとめ

アメリカ大学スポーツと各プロスポーツの収益比較

最近ではスポーツビジネスにおける最大の収益源となっている放映権料。以前に上の記事で各主要プロスポーツとアメリカ大学スポーツの放映権について少し述べましたが、今回はMLB各チームの放映権契約についてまとめました。

基本的にソースはアメリカメディアの報道を用いているので信憑性は・・・。
アメリカメディアの報道がすべて正しいという体で書いていますけど、信じるか信じないかはアナタ次第。
ソース記事などの情報が欲しい方はコメントしてください。

MLBの放映権契約についての予備知識

・MLB機構が各大手テレビ局と結んでいる全体契約と各チームがチーム所在地の地方テレビ局と結んでいるチーム限定契約の2種類の放映権契約がある。前者はMLB機構から全30球団にほぼ均等に分配

・最近ポピュラーとなっているのが放映権契約だけでなくチームが地方テレビ局の株式の一部を獲得するというもの。例えば「20年10億ドル(年平均5000万ドル)の放映権契約+地方テレビ局の株式30%」という内容ならば、年間平均5000万ドルと株式30%からの配当がチーム(オーナー)の収入になるということ。これがポピュラーになっているのは株式からの配当額がMLBの収入分配制度の対象外となることが大きな理由。

・また、株式なら場合によっては自由に売却できますよね。


表の説明

・年数 ⇐ 放映権の契約年数

・総額 ⇐ 放映権の契約総額(保有株式からの収益は含まず)

・年平均 ⇐ 契約総額÷契約年数

・開始年度&最終年度 ⇐ 契約期間

・地方テレビ局名 ⇐ 契約を結んでいる地方テレビ名

・チーム保有株率 ⇐ チームによる地方テレビ局の株式保有

・視聴家庭数 ⇐ 地方テレビ局における1試合当たりの平均試合中継視聴家庭数(2018年のデータ)、視聴者数ではなく視聴家庭数であることには気を付けて



アメリカンリーグ

東地区

ニューヨーク・ヤンキース

年数 30年
総額(ドル) (56億5000万?)
年平均(ドル) (1億8800万?)
開始年度 2013年
最終年度 2042年
地方テレビ局名 YES Network
チーム保有株率 (%) 26%
視聴家庭数 27万7000

ヤンキースがAmazonらと共にYESネットワークを買収!

もちろん初めにヤンキースを取り上げるわけですが、MLBで一番ややこしい放映権契約を結んでいるのがヤンキース。

(上の記事でも書いた内容と同時になりますが、)元々YES Networkはヤンキース(スタインブレナー家)がゴールドマンサックスなどの投資家と共に立ち上げた自前の地方テレビ局。立ち上げ後はヤンキースの恩恵を受け世界第3位のスポーツテレビ局へと成長。2010年前後には1億ドル程度の営業利益を上げていました。

2012年時点でヤンキースは34%の株式を保有していましたが、2012年~2014年にFOXが買収を進め株式保有率はFOXが80%、ヤンキースが20%に。この一連の買収と同時にヤンキースはYES Networkとの新放映権契約を結び(というか新放映権契約が買収の条件みたいなものだった)、詳細は不明なものの2013年からの30年契約。1年目が年8500万ドル~9000万ドルでその後は1年ごとに約5%ずつ年間の放映権料が増えていくタイプの契約だと報道されています。

ということでもし1年目が8500万ドル&年変化率が5%であれば2019年時点で年1億1400万ドル、契約最終年の2042年は年3億5000万ドル、30年間の総額は56億5000万ドル、年平均1億8800万ドルということに。これに株式保有率20%による収益、FOXへの株式売却による収益も加わるわけだったんだけど・・・。

しかしながら、上の記事のように今シーズン前にヤンキースはAmazon、シンクレア・ブロードキャスト・グループ(アメリカ最大のテレビ放送企業)、ブラックストーン・グループ(アメリカ最大級の投資ファンド会社)らとともにYES Networkを34億7000万ドルでFOXから逆買収。これにより株式保有率はヤンキースが26%(筆頭株主)、シンクレアが20%、Amazonが15%となっており、ヤンキースが放送のコントロール権を保有するとのこと。

この買収により既存の放映権契約に変更が加えられる可能性もあり、シンクレアやAmazonが加わったことによりヤンキース戦の全国放送やネット配信が進められることも考えられますね。

タンバベイ・レイズ

年数 15年
総額(ドル) 7億5000万
年平均(ドル) 5000万
開始年度 2019年
最終年度 2033年
地方テレビ局名 Fox Sports Florida
チーム保有株率 (%) 33%
視聴家庭数 4万6000

シーズン前に新契約が結ばれ、年平均5000万ドル以上の15年契約だと報道されています。また、レイズは33%の株式も契約により同時に獲得しており、それも含めると年平均約8700万ドル程度の価値となるそう。

前放映権契約は年平均2500万ドル~3500万ドル(2018年は年3500万ドル)だったので大幅な収益増に。

ただ、2033年までにレイズは球団の半分をモントリオールに移転する可能性もあるので、もしそうなった時に放映権契約がどうなるかは予想がつきません。

(Fox Sports FloridaはシンクレアがFOXから買収済み)

ボストン・レッドソックス

年数 ーーー
総額(ドル) ーーー
年平均(ドル) ーーー
開始年度 2006年
最終年度 ーーー
地方テレビ局名 NESN
チーム保有株率 (%) 80%
視聴家庭数 17万6000

NESNはヤンキースのYES Networkと同様にレッドソックスが自ら立ち上げた自前地方テレビ局。

自前のため詳細は不明ですが2014年3月のForbesの記事では放映権契約の年平均は7000万ドル、株式からの収益も加えると年1億1400万ドルと書かれていましたが・・・。

まあ、自前テレビ局だと観客動員数と同様にチーム成績によって収益が乱高下しますからね。

トロント・ブルージェイズ

年数 ーーー
総額(ドル) ーーー
年平均(ドル) ーーー
開始年度 ーーー
最終年度 ーーー
地方テレビ局名 SportsNet
チーム保有株率 (%) 100%
視聴家庭数 ーーー

ブルージェイズのオーナーであるロジャース・メディアが2001年に買収し全株式を保有。レッドソックスと同様に放映権料の詳細は不明ですが、2012年は1試合当たり22万5000ドル&162試合で年36億5000万ドルだったという報道がありました。

ちなみに、SportsNetはカナダ国内におけるNHLの全国放映権も保有しています。

ボルティモア・オリオールズ

年数 ーーー
総額(ドル) ーーー
年平均(ドル) ーーー
開始年度 2005年
最終年度 2028年
地方テレビ局名 Mid-Atlantic Sports Network
チーム保有株率 (%) 79%
視聴家庭数 2万7000

(これまたややこしい放映契約を結んでいるチーム。できれば取り上げたくない。)

Mid-Atlantic Sports Networkは2005年にオリオールズとナショナルズが共同で立ち上げた自前テレビ局。立ち上げ時点での株式保有率はオリオールズが90%、ナショナルズが10%ですが、1年ごとにナショナルズの株式保有率が1%づつ上がっていくという契約を結んでいるので2019年時点ではオリオールズが79%、ナショナルズが21%。

しかし、2010年代に入るとオリオールズ&ナショナルズ間での放映権分配の争いが激化。2012年にはナショルズが2012年~2016年の5年間で年平均1億1800万ドルの放映権料を要求しましたが、オリオールズは年平均たった3950万ドルをオファー。結局のところ2チーム間の交渉はまとまらずMLBが定めたRevenue Sharing Definitions Committee(RSDC:収入分配決定委員会と訳すべきか)により2014年に5年間でナショナルズが年平均5900万ドル(5年総額2億9800万ドル)を受け取ることとする決定を下されましたが、2015年にニューヨーク州最高裁判所控訴部門がRSDCの決定を棄却し後戻り。

2012年から2016年の5年間はオリオールズのオファー通り年平均3950万ドル(5年総額1億9750万ドル)がナショナルズに支払払われたものの、2017年にニューヨーク州最高裁判所控訴部門は2018年11月と2019年5月に再びRSDCによって決定を下すように指示。

そして、RSDCの再度の検討により当初の決定通り2億9800万ドルが支払われることになり、2億9800万ドルからすでに支払われていた1億9750万ドルを除いた約1億ドルをナショナルズが追加で受け取ることとに。ただ、Mid-Atlantic Sports Networkの収益変化や様々な控除により約6000万~7000万が実際にナショナルズが受け取る金額となるとのこと。(RSDCの決定は8月にニューヨーク州最高裁判所の承認を獲得済み)

2017年以降がどうなっているかは不明ですけどね。



中地区

ミネソタ・ツインズ

年数 12年
総額(ドル) 4億8000万
年平均(ドル) 4000万
開始年度 2012年
最終年度 2023年
地方テレビ局名 Fox Sports North
チーム保有株率 (%) 0%
視聴家庭数 7万3000

スモールマーケットのわりに視聴率が高く視聴家庭数も少なくはないツインズですが、MLB放映権バブルの直前に契約を結んでしまったため金額は休め。(厳密なことを言うと契約時点ですでにバブルはチョットだけ始まってたんだけどね。)

ちなみに、前契約は2004年~2011年の8年間で年平均1200万ドルだったので、一応新契約で放映権料は3.3倍増となっています。

クリーブランド・インディアンズ

年数 10年
総額(ドル) 4億
年平均(ドル) 4000万
開始年度 2013年
最終年度 2022年
地方テレビ局名 SportsTime Ohio
チーム保有株率 (%) 0%
視聴家庭数 9万9000

元々SportsTime Ohioは2006年にインディアンズのオーナーであるドーラン家が立ち上げた自前テレビ局でしたが、2013年シーズン前にFOXへ2億3000万ドルで売却。

この売却と同時に現在の10年4億ドルの放映権契約を結んでいます。

インディアンズもツインズと同様にスモールマーケットのわりに視聴率が高いので年4000万ドルはやっぱり安い印象。

シカゴ・ホワイトソックス

年数 5年
総額(ドル) ーーー
年平均(ドル) ーーー
開始年度 2020年
最終年度 2024年
地方テレビ局名 NBC Sports Chicago
チーム保有株率 (%) 40%(20%)
視聴家庭数 2万2000

2004年~2019年&年平均4000万~5000万ドルの放映権契約が終了し、この10月から新放映権契約(5年契約)がスタートする予定ですが契約内容などは不明。

最近のホワイトソックスはチーム成績が低迷し同じシカゴのカブスにファンを奪われてボロボロなので大した契約にはならないはず。

ちなみに、ホワイトソックスのオーナーであるジェリー・ラインズドルフ(NBAのシカゴ・ブルズも所有)がNBC Sports Chicagoの株式40%を保有していますが、形式上はホワイトソックスが20%、ブルズが20%という形になっているそう。

カンザスシティ・ロイヤルズ

年数 12年
総額(ドル) 2億4000万
年平均(ドル) 2000万
開始年度 2008年
最終年度 2019年
地方テレビ局名 Fox Sports Kansas City
チーム保有株率 (%) 0%
視聴家庭数 4万4000

2008年ならばスモールマーケットとして妥当な契約を結んだものの、その後の放映権バブルに置いて行かれたロイヤルズ。今オフにチームが売却されるのは間違いなく、オーナー交代後に放映権契約が結ばれるはず。ジェフ・パッサンによると年平均5000万ドル前後&10年ちょっと、MLB.comのロイヤルズのバンキシャによると年4800万~5200万ドル&10年~15年契約になると予想されるようです。

オーナーが代わり新放映権契約がスタートすれば、貧乏チームばかりのアメリカンリーグ中地区で面白い存在になるのでは?

デトロイト・タイガース

年数 3年
総額(ドル) 3億?
年平均(ドル) 1億?
開始年度 2019年
最終年度 2021年
地方テレビ局名 Fox Sports Detroit
チーム保有株率 (%) 40%(20%)
視聴家庭数 4万8000

2009年~2018年の10年5億ドル(年平均5000万ドル)の契約が終了し2019~2021年&年平均約1億ドルの3年契約で契約延長を行っています。

契約延長がなぜたった3年だったかというとオーナーのイリッチ家が新たな自前テレビ地方テレビ局の立ち上げを計画しているため。イリッチ家はNHLのデトロイト・レッドウィングスも所有しているので、タイガース&レッドウィングスの二枚看板でやっていくようですね。



西地区

ヒューストン・アストロズ

年数 5年*
総額(ドル) 13憶2000万
年平均(ドル) 7300万
開始年度 2016年
最終年度 2032年
地方テレビ局名 AT&T SportsNet Southwest
チーム保有株率 (%) 0%
視聴家庭数 11万1000

元々アストロズはNBAのヒューストン・ロケッツと提携してFox Sports Houstonと放映権契約を結んでいましたが2012年に契約を解除し、新たにコムキャストと連携して半分自前の新テレビ局ComcastSportsNet Houstonを2012年10月に立ち上げ。

立ち上げと同時にアストロズは2013年~2022年の20年で総額16億ドル・年平均8000万ドルの大型放映権契約を締結。加えてComcastSportsNet Houstonの株式を45%も保有。

しかし、立ち上げ直後から経営状況は非常に厳しくAT&Tやタイム・ワーナーなどの大手ケーブルテレビ業者との交渉にも失敗。放送可能エリアの40%の家庭しかカバーできず視聴率&視聴家庭数は大低迷。2013年シーズンにはアストロズに支払わなければならない年間放映料5600万のうち2900万ドルしか捻出できず、9月にはアストロズの試合中継で視聴率0.0%を記録。結果として2013年9月下旬に立ち上げから1年も満たないにもかかわらず破産申請を行いました。

破産申請後はAT&Tが買収。最終的にAT&T SportsNet Southwestと名前を変え現在に至るわけですね。

で肝心の放映権契約ですが、AT&Tの買収後に18年(2016年~2034年)で総額13億2000万ドル・年平均7300万ドルの新契約を結んだとのこと。また、2016年~2024年の契約前半は年平均6360万ドルであり、2024年シーズン終了後に再交渉を行うことができるオプションがついているようです。

最近のアストロズはMLB最強チームに成長してチーム人気もウハウハなわけですが、その前に結んだ契約ですから内容は微妙ですよね。そもそも破産⇒AT&Tによる買収時にアストロズ保有の株とかどうなったのかもよく分かりません。経済学は素人なんで。

オークランド・アスレチックス

年数 21年*
総額(ドル) 9億4500万?
年平均(ドル) 4500万?
開始年度 2009年
最終年度 2029年
地方テレビ局名 CSN California
チーム保有株率 (%) 0%
視聴家庭数 2万6000

現契約は年平均4300万~4800万ドルの21年契約。2023年オフにオプトアウト権(契約解除)がアスレチックス側にあるので、実質的には15年契約ですかね。

アスレチックスのチーム人気のわりに2009年ごろの放映権契約としては条件の良い内容ですが、サンフランシスコというビッグマーケットをカバーしていることを考えるとやはり物足りない数字か。

テキサス・レンジャーズ

年数 30年
総額(ドル) 16億
年平均(ドル) 8000万
開始年度 2015年
最終年度 2034年
地方テレビ局名 Fox Sports Southwest
チーム保有株率 (%) 10%
視聴家庭数 2万6000

2010年に新しくオーナーとなったレイ・デイビスを代表とするオーナーグループが2010年のシーズン終了直後に決めたメガディール。この契約からMLBの放映権バブルが始まりました。

当初はUSAトゥデイが20年30億ドルと報道したのですが、実際には年平均8000万ドルの20年契約だったよう。ただし、10%の株式も獲得しているので、それも含めると本当に20年30億ドルクラスのバリューになるとのことです。(USAトゥデイも初めからそういう意味合いで報道していたのかもしれませんね)

実際にレンジャーズは2016年に10億ドル分の株式売却を模索しているとブルームバーグに報道されていました。

ロサンゼルス・エンゼルス

年数 20年
総額(ドル) 30億*
年平均(ドル) 1億5000万*
開始年度 2012年
最終年度 2031年
地方テレビ局名 FOX Sports West
チーム保有株率 (%) 25%
視聴家庭数 8万

2006年にFOX Sports Westと結んだ10年5億ドル(年平均5000万ドル)の大型契約を2010年にオプトアウト権を用いて契約解除。その後、新たに20年総額30億ドル・年平均1億5000万ドルという更なる大型契約を同地方テレビ局と結びました。

ただし、総額30億ドル・年平均1億5000万ドルという数字は株式25%も含めての数字のようで、実際の年平均放映権料は1億ドル弱。全体的にみるとテキサス・レンジャーズの放映権契約とほぼ同規模の内容ですね。

シアトル・マリナーズ

年数 17年
総額(ドル) 20億
年平均(ドル) 1億1800万
開始年度 2014年
最終年度 2030年
地方テレビ局名 DirecTV Sports Networks
チーム保有株率 (%) 71%
視聴家庭数 8万3000

2007年にFox Sports Northwestと2011~2020年の10年で年平均4500万ドル(総額4億5000万ドル)の契約を結びましたが、オプトアウト権を用いて新たにDirecTV Sports Networksと17年総額20億ドルの大型契約を結びました。(メディアによっては18年18億ドル程度との報道も)

加えてDirecTV Sports Networksの株式71%も獲得しており、それらも含めれば総額25億ドル程度の価値があるようです。