去年までシーズン中は馬鹿の一つ覚えのようにプロスペクトばかり取り上げていましたが、今年からは毎月ヤンキースの月間総括と雑感を記していこうかと。
どうせ面倒になって6月ぐらいで止めると思いますけど。
というわけで、4月のヤンキースはレッドソックス→ブルージェイズ→オリオールズ→タイガース→カーディアンズ→オリオールズ→ロイヤルズと対戦相手に恵まれMLB全体トップなる勝率.714(15勝6敗)を記録。
開幕から好調の投手陣を尻目に打線がスランプに陥り21日終了時点で7勝6敗でしたが、打線がスランプを脱し破竹の8連勝で4月を終えています。
目次
野手
質の高い打球を放ち続けるも不運と相手の好守に阻まれ、開幕15試合で48得点と貧打に喘いだものの、その後の6試合で52点を稼ぎ出し、気付けば野手全体成績はMLB3本指に入る(ALではNo.1の)数字に。
ギャロと捕手の2人(ヒガシオカとトレビーノ)を除くレギュラー野手7人全員がwRC+100以上&xwOBA.327以上(MLB平均以上)を残すなどスキは小。守備においてもチーム合計エラー5個はMLB全体で最少となっており、守備力重視の補強が早くも結果に繋がっている印象。
ただ、ロカストロとカイナー=ファレファ以外の全員がスプリントスピードにおいてMLB平均を下回っており走塁成績も下位。現状としては鈍足重量級おバカ打線と言えるでしょう。
指標名 | 4月中の合計 | MLB全体順位 |
シーズン合計 | ||
野手fWAR | 4.5 | 3位 |
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平均得点 | 4.76 | 3位 |
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OPS | .750 | 3位 |
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wRC+ | 124 | 2位 |
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xwOBA | .375 | 1位 |
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アンソニー・リゾー
引張方向へのフライ打球を量産し、MLB全体トップの9本塁打を記録。
もちろんヤンキー・スタジアムでなければスタンドまで届かなかったはずの打球も多く、xHRは実際の数と大きく乖離した5.9(MLB全体8位)。アウェイでの試合が増える5月はペースダウンすることでしょう。
まあxwOBAがMLB全体6位の.434なので、球場関係なく打撃パフォーマンスがハイレベルであったことは確か。
DJ・ラメイヒュー
重心を下げた新打撃フォームと初球やボール球でも果敢にスイングする積極的な新アプローチがハマったのか2019~20年に勝るとも劣らない強打を披露。xwOBA.407はセカンドとしてMLB全体No.1の数字。
ただ、ボール球のスイング率が大きく上昇しているにもかかわらず、ミートボール(”ド真ん中の甘い球”の意)を見逃す機会は多く、ヤンキースの打撃スローガン「Hit Strikes Hard」とは少しズレています。
ジョーイ・ギャロ
ヤンキースがトレードにて獲得する直前から始まったスランプは悪化の一途を辿り、4月終了時点でOPS.570・三振率42.0%。
さらに昨シーズンはゴールドグラブ賞を受賞するなど球界屈指のコーナー外野守備の持ち主であるはずが打球判断からフェンス処理、送球に至るまでミスを連発しており、打撃の不調が守備にまで影響を及ぼしている印象。
fWARとrWARの両方でチームワーストとなっているだけに、4月の逆MVPと呼ばざる負えません。
ジョシュ・ドナルドソン
開幕から頭が狂ったかのようにボール球に手を出し、若手の低脳フリースウィンガー張りの💩アプローチを披露していましたが、4月下旬からはアプローチ系指標が例年通りの数字に落ち着き本来のハイレベルなバッティングを取り戻しつつあります。
また、サード守備では大きな衰えを感じさせていませんが、先発出場18試合中6試合がDH起用。スタントンが先発出場19試合中9試合がDH起用となっており、ヤンキースは全試合の約3/4において2人をDHに置き、残りの約1/4においてジャッジやヒックスなどをDH起用することで他選手の負担を軽減するような運用を行う考えなのでしょう。
ホセ・トレビーノとカイル・ヒガシオカ
ベン・ルートベットの故障によりシーズン開幕直前になって急遽獲得したトレビーノですが、球界屈指のフレーミングを遺憾なく発揮し、限られた出場機会の中で最上級のフレーミング成績を記録中。ヤンキース投手陣との相性が良いのか捕手防御率は驚異の1.51(ヒガシオカは3.43)。
また、表面的な打撃成績はイマイチですがxwOBA.393と打席内容も👍
対して春季キャンプにて7本塁打・OPS1.695の大活躍を見せブレイクが期待されたヒガシオカはジョーイ・ギャロにも劣らないお粗末なアプローチを続けており、守備においてもリーグトップのパスボール3個を記録しフレーミング成績が低下するなどパリッとしません。
何にせよゲーリー・サンチェスもトレビーノの対価となったアルバート・アブレイユも無残な数字を残しているからね・・・。
投手
ロクな投手補強を行わなかったこともあり世間的には評価されていなかったものの、実は各成績予測システム(FanGraphsやBaseball Prospectus)にて30球団最高の予測値を叩き出していたヤンキース投手陣。
春季キャンプが短縮され調整期間が十分に確保できなかったことを理由に4月中のみロースター枠が26人から28人に拡大。
それに伴い充実のリリーフ陣をさらに2人増やし(ロン・マリナチオとJP・シアーズ)、リリーフゴリ押し特攻戦法によりその真価を遺憾なく発揮。fWARにてMLB全体3位、rWARにて2位の数字を残しています。
指標名 | 4月中の合計 | MLB全体順位 |
シーズン合計 | ||
投手fWAR | 3.4 | 3位 |
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防御率 | 2.70 | 2位 |
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FIP | 3.16 | 5位 |
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xwOBA | .288 | 3位 |
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ジョーダン・モンゴメリー
下記にリリースポイントの座標値X(一三塁方向)、Y(エクステンション)、Z(リリース高さ)を記していますが、昨シーズンから今シーズンにかけて投球フォームを改造しエクステンションを長く and リリースポイントを低くしてることが分かります。
モンゴメリーは本来長身を生かしたオーバースローによって高い位置から投げ下ろすピッチングスタイルがウリのピッチャーであったはずで、今シーズンの変更は非常に印象的。(ちなみに、昨シーズン後半戦からフォーム改造の兆候は既に見られていた。)
年度 | X | Y | Z |
2021 | 0.52 m | 1.98 m | 2.07 m |
2022 | 0.59 m | 2.04 m | 1.98 m |
さらに、フォーム改造によってリリース時のアーム角が傾いたためか変化球の回転軸も変化しており、その効果か下記の表の通り各球種の変化量が増加していることが分かります。
表に記した回転方向はリリース時のものであり、軌道上(プレート上)における回転方向も絡めるとアメリカ球界で大ブームとなっているSSW(Seam-Shifted Wakes)に話を繋げられるのですが、流石に話が長くなるのでここまでにしておきましょう。
2021年 | 回転方向 | 縦変化 (vs平均) |
横変化 (vs平均) |
シンカー | 10:52 | -1.0cm | +3.3cm |
チェンジアップ | 10:26 | -9.1cm | -5.6cm |
カーブ | 5:04 | -17.3cm | -14.0cm |
2022年 | 回転方向 | 縦変化 (vs平均) |
横変化 (vs平均) |
シンカー | 10:40 | +1.5cm | +7.3cm |
チェンジアップ | 10:10 | -6.6cm | -4.8cm |
カーブ | 4:36 | -13.2cm | -11.9cm |
ゲリット・コール
例年と比べ腕の振りを鉛直方向に傾けたためか制球難とスランプに陥ったコールですが、今シーズンから新たにレパートリーに加えたカットボールが早くも機能。
空振り率が30%を超えているだけでなくウィークコンタクトを量産し、被wOBA.114・被xwOBA.188は共にMLB全体5位の高水準。
粘着物質抜きでこれまでのようにサイ・ヤング賞を争うことは難しいでしょうが、31歳にもかかわらずエフェクティブな新球を開発し早々と習得してしまう点はさすが年俸3600万ドルの男。
アンヒッタブルな3人
4月野手MVPはアンソニー・リゾーとアーロン・ジャッジの2択ですが投手MVPはネストル・コルテス、マイケル・キング、クレイ・ホームズの3択。
Name | Age | ERA | G | IP | H | HR | BB | SO | FIP | WHIP | BB9 | SO9 | SO/W |
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Nestor Cortes | 27 | 1.31 | 4 | 20.2 | 15 | 1 | 3 | 28 | 1.44 | 0.871 | 1.3 | 12.2 | 9.33 |
Michael King | 27 | 0.61 | 7 | 14.2 | 10 | 0 | 3 | 22 | 0.70 | 0.886 | 1.8 | 13.5 | 7.33 |
Clay Holmes | 29 | 0.84 | 11 | 10.2 | 7 | 0 | 2 | 11 | 1.87 | 0.844 | 1.7 | 9.3 | 5.50 |
まず、ネストル・コルテスはメインピッチをフォーシームから2020年シーズンに習得したカッターに変更。更に投球フォームにも変更が加えられており、より優れたコマンドやディセプションに繋がったのか、快投の連続によって昨シーズンの活躍がフロックではなかったことを証明しています。
昨シーズン終盤に球速上昇を見せただけでなく旧スライダーを捨て去りコーリー・クルーバーから習った新スライダーをアウトピッチに据えたマイケル・キングは開幕からその真価を発揮しMLB全体でNo.1のリリーフ成績を記録。
ピンチの場面で投入されチャンスを尽く摘み取っただけでなく、そのままロングリリーフを任されるという非常にタフな起用法を受けながらもこれだけの数字を残しているのは驚異的。
ゾーン両端から外れたボール球に対しストライク判定を受けることが多々あったのですが、ただ単に運が良かったのか、それともトレビーノやヒガシオカのフレーミングのおかげか、はたまたキングが審判を惑わすほどの球を投げ込んでいたのか?
昨シーズンを通して改良を行っていたSSWスライダーがとうとう完成したクレイ・ホームズはゴロ率82%と驚異的な数字を残し、当然ながらヒット性の当りは少なくリリーフ投手MLB全体オ3位のxERA1.24を記録。
ホームズ獲得時にケチをつけていたウンコカスの私が言うのもなんですけど、彼を魔改造して球界屈指のグラウンドボーラーに変貌させられるなら、ザック・ブリットンなんかに大金叩くなよと。
年度 | 回転方向 | 縦変化 (vs平均) |
横変化 (vs平均) |
2021 | 8:08 | +10.4cm | -2.8cm |
2022 | 7:28 | +10.7cm | +10.4cm |
ジョナサン・ロアイシガ
SSWの考えに重きを置き投手陣の変化球を改造しつくしているヤンキースですが、その改造が”改良”ではなく”改悪”となってしまったと考えられるのがロアイシガ。
昨シーズンの大ブレイクの要因となった高速カーブ(スライダー)の変化量を減らし、スライダーどころかカットボールに近いピッチに改造したものの、旧カーブのように空振りを奪えず右打者から痛打を受けました。
もちろんシンカーの球速が1マイル程度下落していることも影響しているのでしょうが、シンカーとチェンジアップの2球種で勝負する左打者相手には好投しているわけで、今回のカーブ改造は悪手だったのでは?
年度 | 回転方向 | 縦変化 (vs平均) |
横変化 (vs平均) |
2021 | 8:08 | -20.3cm | +9.7cm |
2022 | 9:00 | -25.4cm | +1.5cm |
ブレット・ガードナー
行方不明
マイク・フォード
4月19日に人種差別球団にてMLB昇格を果たすも出場機会を全く与えられないまま25日にDFA。そして故障者続出中のジャイアンツがセレクト。
早速ながら昨日の試合でスタメン出場を果たしタイムリーヒットを放っています。
コメント
ギャロの打撃はこのまま改善されないままシーズンを終えてしまうのでしょうか
表面上の成績と異なりxwOBAは優秀で、肝心の表面的な数字も良化しているのでそこまで打撃面に悲壮感は感じません。どちらかと言えばGG賞・DRS+2桁級の守備力が大劣化していることの方がマズい印象です。