山本 由伸争奪戦での敗北、Blake Snellへの5年$150M提示を経て、Marcus Stroman(マーカス・ストローマン)とFA契約:2年$37M+べスティングOP1年$18M(2025年に140 IP以上)を結んだわけですが…、
いや~、何にしても安い!
2年$37Mの契約条件が目に入った時、最初は2024年終了時にOpt-Out権が付与されているのだろうと思いきや、ストレートに2年保有確定。
じゃあ、Stromanサイドに有利な選手オプションが付与されているのかなと思いきや、実際は140 IP Over/Underというチームにとってリスクが低い条件のべスティングOP。(ただし、140 IP over時は選手オプションに化ける。)
それなら、Stromanのフィジカルに問題があって、各チームが尻込みした結果のディスカント(最たる例に昨オフのCarlos Correa)しか考えられないと高を括るも、フィジカル面に異常があるとの報道は特にありません。
まあ、3つ目に関しては報道が行われていないだけで、実際のところは分かりませんが…。
というわけで、個人的にStromanは顔も見た目もプロファイルも嫌いですが、これだけの安価となると、ほとんど文句はがございません。
年度 | IP | rWAR | fWAR | WARP |
2021 | 179.0 | 3.4 | 3.5 | 1.9 |
2022 | 138.2 | 2.6 | 2.0 | 1.2 |
2023 | 136.2 | 1.6 | 2.7 | 2.0 |
ただ、単に安いと言ってもイロジカルなので、同規模帯のFA契約を手に入れた先発投手と比較してみましょう。
過去3年間(2021-22年オフ、2022-23年オフ、2023-24年オフ)において、同規模帯のローミドル契約を手に入れた先発投手の一覧が下表。
2021-22年オフ(下段の3人)は現在と相場が大きく異なることに留意してください。
過去3年間における先発投手の同規模FA契約
選手名 | 年数 | AAV | 総額 |
Seth Lugo(1) | 3年 | $15M | $45M |
Lucas Giolito(2) | 2年 | $19.3M | $38.5M |
Michael Wacha | 2年 | $16M | $32M |
Sean Manaea(3) | 2年 | $14M | $28M |
Nathan Eovaldi(4) | 2年 | $17M | $34M |
Jose Quintana | 2年 | $13M | $26M |
Carlos Rodon(5) | 2年 | $22M | $44M |
菊池 雄星 | 3年 | $12M | $36M |
Anthony DeSclafani | 3年 | $12M | $36M |
(1) 2年目終了時にOpt-Out権
(2) 1年目終了時にOpt-Out権、条件付き球団OP1年$14M
(3) 1年目終了時にOpt-Out権
(4) 条件付き選手OP1年$20M
(5) 1年目終了時にOpt-Out権
その中でも今オフは…
1歳年上のSeth Lugoが先発再転向1年に2度のIL入り喫するもOpt-Out付きの3年契約をゲット。
Lucas GiolitoはStromanと同格に近い存在ですが、Opt-Outがあるため選手有利な契約。
1歳年下のMichael Wachaの契約詳細は複雑なので割愛しますが、Stroman以上に故障が多く6シーズン連続で規定投球回を逃しているピッチャー。
…と、Stromanほどチーム有利の契約条件を飲んだプレーヤーは皆無。
Stromanのスぺ体質を理由に今回の契約にケチを付ける連中もいますが、上表を見ればWachaをはじめとして純粋なピッチング能力だけでなく耐久性においてもStromanを下回る幾人ものプレーヤーがより有利な条件を手にしており、スぺ体質を否定材料として用いるには些か弱いかなと。
故障履歴
日付 | 故障 | 離脱期間 |
2015/4/5 | 右ひざ前十字靭帯断裂 | 6ヶ月 |
2018/2/27 | 右肩炎症 | ー |
2018/5/11 | 右肩張り | 43日 |
2018/8/19 | 右中指マメ | 15日 |
2019/7/4 | 左肩胸筋痙攣 | 10日 |
2020/7/22 | 左脹脛肉離れ | ー |
2022/5/8 | コロナ感染 | 11日 |
2022/6/7 | 右肩炎症 | 32日 |
2023/8/1 | 右股関節炎症 | 45日 |
上表がStromanの故障経歴となりますが、比較的マイナーな故障が多く、実際にACL断裂を経験した2015年、コロナを理由に辞退した2020年を除く8シーズンで100 IPをクリア。
Carlos Rodonと大きく異なり、投手の生命線である肘肩の故障が少ない点も好印象。
強いて言えば、昨シーズンにおいて右股関節炎症からの復帰後(シーズン最終盤)に球威低下を露呈した点、そして低身長先発投手は20代の間に潰れる場合がほとんどで、30代中盤以降に稼働した事例がごく僅かである点が懸念材料。
2024年シーズンにおいてZiPSでは2.0 WAR、Steamerでは2.1 WAR(先発投手61位)、PECOTAでは2.0 WARP(先発投手37位)を見込まれており、正しく先発2~3番手クラスといったところで、Carlos Rodonと甲乙つけがたい水準。
フロアーが高くギャンブル性に乏しい点は気に食わないですが、同じく2025年シーズン終了後にFAとなるNestor Cortesへのカウンタームーブとしてリーズナブルな補強かと。
また、投打に関わらずNYYがプレーヤーを獲得する度に短絡的な思考回路でヤンキー・スタジアムとの相性を論じるNYYファンベースが嫌いなので、その点については割愛しますが、グラウンドボーラーらしく基本的には低めに集めるピッチング。
ゾーン両サイドのフレーミングを得意としているAustin Wellsと比べ、より低め(特にStromanのようなRHPシンカーボーラーの投球割合が高いLHB外角)を得意とするJose Trevinoとマッチするかもしれません。
今回のムーブとLuke WeaverとのMLB契約によって、Michael King放出の穴を埋め、先発ローテは一通り完成。
ただ、ペイロールも既に昨年の数字をオーバーしていますが、更なる先発投手補強を推し進める可能性があるとのことで、NYYにとって今オフはここ何年間で最もディープなオフシーズンとなりそう。
個人的にこれ以上の補強は必要ないと思いますが、ブルペンに大金さえ叩かなければ…。
Verdugoが不要とはいえ、SotoとGrishamの強力なコンビを獲得した上に、Stromanを安価に抑え、AAAAプレーヤーも上手い事処理したとなると、今オフは勝確なので。