本日行われた2022年度MLBドラフト初日において1巡目・全体25位指名権を持つニューヨーク・ヤンキースはヴァンダービルト大学の外野手スペンサー・ジョーンズ(Spencer Jones)を指名。
ジョーンズは上記の「ヤンキースの2022年MLBドラフト1巡目指名候補:その3」にて取り上げていたドラフト候補生であり、当記事内では”全体25位に相応しくない”とディスってしまいました。しかしながら、その後に新たなトラッキングデータやアナリティクスデータを知り、身勝手ながら完全に手のひらを返しているので悪しからず。
というわけで個人的には満足な指名です。
スペンサー・ジョーンズ
Spencer Jones
21歳2か月(2001年5月生):201cm・102kg:左投左打
ライト/センター/ファースト:ヴァンダービルト大学(3年生)
ドラフト候補生ランキング | |
メディア | 順位 |
Baseball America | 49位 |
MLB.com | 51位 |
FanGraphs | 28位 |
The Athletic | 79位 |
ESPN | 20位 |
Prospect Live | 28位 |
Mason MacRae | 12位 |
Tieran Alexander | 18位 |
2016年全体1位指名のミッキー・モニアクを輩出したラコスタ・キャニオン高校にて、高身長のハイシーリングな二刀流として全米上位の高い評価と知名度を獲得。
ドラフト対象であった2019年当時はリスクの高さや春に受けた肘の手術を理由に1~3巡目まで大きく評価が分かれていましたが、強豪ヴァンダービルド大学進学の意志が強くプロ入りへ方向転換させるには多額の契約金が必要と噂され、実際にドラフト本番では上位にて指名されることはありませんでした。
高校時代は野手よりも投手としての評価が高かったわけですが、同大学進学後にトミー・ジョン手術を受け打者に専念。
1年目(2020年)は開幕から低調なパフォーマンスが続くと、コロナにより開幕1ヵ月程度でシーズン終了。
2年目(2021年)もパフォーマンスが大きく向上することはなく、シーズン終盤にはスタメンから外されるほどの有様で、大学進学は大失敗に終わるかと誰もが思っていはず。
Year | Age | Tm | Lg | Lev | G | PA | H | 2B | HR | SB | BB | SO | BA | OBP | SLG | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2020 | 19 | Vanderbilt | SEC | NCAA | 14 | 42 | 7 | 4 | 0 | 0 | 4 | 7 | .206 | .333 | .324 | .657 |
2021 | 20 | Vanderbilt | SEC | NCAA | 34 | 107 | 26 | 5 | 3 | 4 | 7 | 33 | .274 | .346 | .421 | .767 |
2021 | 20 | Brewster | CCBL | Smr | 25 | 92 | 24 | 4 | 3 | 6 | 8 | 28 | .312 | .424 | .481 | .904 |
2022 | 21 | Vanderbilt | SEC | NCAA | 61 | 272 | 85 | 21 | 12 | 14 | 32 | 64 | .370 | .460 | .644 | 1.103 |
しかしながら、NCAA2021年度シーズン終了後に参加したケープコッド・リーグ(木製バットを使用)にて強打を披露すると、3年目となる今シーズンにとうとうバッティングが開花。
前年から出塁率が約.100、長打率が約.200も向上し、NCAAにてこれまで誰も見たことがなかったようなモンスター級の打球初速度を計測。さらに、MLBドラフトコンバインにおいてもトップクラスの数字を残し話題に。
現時点としてリスクの高さを理由にプロスペクトとしての評価がエバリュエーターによって大きく分かれていますが、ドラフト直前のモックドラフトでは大学生外野手指名が有力視されたヤンキースを初めとして1巡目後半~戦力均衡ラウンドAでの指名が予想されていた次第です。
ヤンキースとしてはトレイ・スウィーニーに続き2年連続となるリスキーな大学生野手の指名。傘下のプロスペクトデプスが投手とショートに偏っている中でジョーンズの加入は大きなアクセントとなりますね。
打撃 | パワー | 走塁 | 送球 | 守備 |
20/40 | 60/80 | 45/60 | 50/65 | 30/50 |
超高長身バッターの性とも言えることですがコンタクトスキルに難があり(コンタクト率72%)、三振率23.5%は上位指名選手として危険水準。積極的なアプローチ(スイング率45%超)により四球率も11.8%と褒められた数字ではなく、BABIPが0.468と非常に高かった点も無視できません。また、左投手との対戦成績もボロボロ。
ただ、ファストボール・ヒッターであり変化球への対応に問題があるとされていますが、対変化球の空振り率は平均レベルの35%。また、ゾーン内/ゾーン外スイング率では71.9%/26.6%と優秀な数字を残していることから選球眼は平均以上だと考えられ、アプローチの改良により四球率の改善は可能でしょう。(高身長だからトラッキングシステムのストライクゾーン設定などが正しいのかは疑問だけど。)
そして、大学球界史上最高クラスと称されるローパワーは文句無しの80グレード。
今シーズンはトラッキング時代のNCAA最高記録となる打球初速度119.1マイルを計測しており、これは大谷翔平やオニール・クルーズなどMLBでも規格外のプレーヤーのみ残すことができる数字。平均打球初速度も94.5マイルに上り、全打球の10%以上が110マイル超。当然のことながらMLBドラフトコンバインでも同イベント最高となる111.2マイルを叩き出しました。
しかしながら、ロフトに欠けるレベルスイングによって低弾道に喘いでおり、平均の打球角度はたったの6°。ゴロ、ライナー、ポップフライ打球が全打球の93%もを占めるとのことで、シーズン12本塁打に終わりBABIPが高止まりしたのもこのため。
最近のMLBではSSWを活用したシンカーやスライダーによってウィークコンタクトを誘発する”打たせて取る”ピッチングへの再帰がトレンドとなっているだけに、プロ入り後のスイング改造は必要不可欠でしょう。
また、これも超高長身バッターにとってはあるあるですが引張方向への打球が少ないとのことで、そういった点も含めてやはり全体的に覚醒前の大谷翔平や現在のオニール・クルーズに似通っているなと。
(まあ引張方向に凡フライを連発するジョーイ・ギャロのようになられても困るけど。)
(https://lodensports.com/use-case/mlb-draft-spotlight-spencer-jones-an-outlier-athlete/)
この6月に受けた身体能力テストにて上位1%未満の数値を叩き出すなど、文字通り規格外の身体能力を誇るアスリート。
高校時代に60ヤード走6.7秒を計測していますが、MLBドラフトコンバインの30ヤード走では全体3位となる3.60秒を叩き出したとのことで、これらの数字はプラスツールに値。10ヤードのスプリットタイムでも1.71秒を計測していることから、巨体にもかかわらず走り出しのスピードが優れていることも分かります。
もちろん高校時代に投手として最速94マイルを計測した強肩もプラス以上のツールであり、ヴァンダービルト大学ではチームメイトにエンリケ・ブラッドフィールドがいるためライト起用を受けていたものの、本人はセンターでのプレーに自信を持っている模様。
センターでのプレー経験は少ないはずですが、確かに上記の驚異的な身体能力と強肩を考えればアーロン・ジャッジのようにプライマリ・ポジションでのプレーを期待しちゃいますね。
早生まれであるため同級生の選手たちより少し若い点も魅力の1つ。
雑感
最近のヤンキースがトラッキングデータやアナリティクスデータ重視のドラフトを行っていることは有名で、(昨年のトレイ・スウィーニー指名にも同じことが言えますが、)ジョーンズの持つ多大なリスクを客観的に評価した結果がコレだったのでしょう。
また、ドラフト直前には高校生野手指名の噂も流れていたわけですが、上位指名候補がみなヤンキースの指名順位までに消えてしまっているため、ジョーンズ指名がプランAだったのかは???(全体14位指名のジェット・ウィリアムズ、全体17位指名のジャスティン・クロフォード、全体21位指名のコール・ヤングなど)
2巡目にハイフロアーな大学生投手であるドリュー・ソープを指名していますが、リスキーな大学生野手とハイフロアーな大学生投手の組み合わせは昨年のスウィーニー&ブレンダン・ベックと全く同じ。
恐らく今年も3巡目辺りでオーバースロットが必要な高校生を指名し、それ以降は大学生の青田買いを行うことでしょう。
下記の記事にはお世話になりました。
盗作と言われても否定はでません…