今回はヤンキース(スタインブレナー家)がチーム運営以外に行っているサイドビジネスについて簡単に記します。
ヤンキー・グローバル・エンタープライセズ
ヤンキースのサイドビジネスを取り上げる前にヤンキー・グローバル・エンタープライセズ(Yankee Global Enterprises、以下YGE)に触れておかなければならないでしょう。
YGEは1999年(先代のジョージ・スタインブレナー時代)に立ち上げられたLCCで、ニューヨーク・ヤンキースを所有するのも同会社。つまり、ヤンキースの直接的なオーナーはあくまでもYGEであり、ハル・スタインブレナーを代表とするスタインブレナー家はYGEを通してヤンキースを所有しているわけ。
YGEは現在スタインブレナー家が約60%を所有しており、ヤンキース(スタインブレナー家)のサイドビジネスは基本的にYGEが大元となって行われます。
YES ネットワーク
ヤンキースのもっとも代表的なサイドビジネスはテレビ局YESネットワークの設立及び運営ですが、これについては本ブログで何度も取り上げているので、以下の過去記事を参照してください。
レジェンズ・ホスピタリティ
2008年にYGE、ダラス・カウボーイズのオーナーであるジェリー・ジョーンズ、ゴールドマン・サックス社が共同設立したコンセッション企業であり、設立当初は3社がそれぞれ1/3(約33%)を所有。
設立以降は順調な成長を続けヤンキースやカウボーイズだけでなくサンフランシスコ・49ers、ダラス・マーベリックス、ロサンゼルス・エンゼルスなどの国内チームに加えレアル・マドリードやマンチェスター・シティFCなど海外のビッグネームも顧客に。更には2028年ロサンゼルス・オリンピックの広告代理店も担当予定。
同社の売上高は2017年に7億5000万ドルへ達しており、2022年現在は10億ドルを超えると思われます。
ただ、ゴールドマン・サックスが所有する約33%を2017年に投資会社New Mountain Capitalが企業価値7億ドルで買収。
さらに、2021年には投資会社Sixth StreetがNew Mountain Capitalの約33%とヤンキース及びカウボーイズの一部、合計51%を企業価値13.5億ドルで買収し支配権を獲得。結果としてヤンキースとカウボーイズの所有率はそれぞれ24.5%へダウン。
ACミラン
2022年に12億ユーロでアメリカの投資会社RedBird Capital Partnersに買収されたACミランですが、YGEも買収に加わりチームのマイノリティを取得したとのこと。
出資率等こそ不明なものの買収に合わせヤンキースとACミランはパートナーシップを結んでおり、将来的にACミランの試合がYESネットワークで放映される可能性もあるとのこと。
ちなみに、Forbesのチーム価値ランキングではサッカー部門にて第14位となっていますね。
ニューヨーク・シティFC
2013年にマンチェスター・シティFCとYGEが設立し、約1億ドルの参加料を支払い2015年からMLSに加わったフットボールチーム。設立当初から変わらずマンチェスター・シティFCが80%、YGEが20%を所有しています。
スポルティコのチーム価値ランキングではMLS第7位にランクインしており、6億9000万ドルと評価されています。
チーム名の通りニューヨークを本拠地なわけですが、専用スタジアム建設が難航しており、ヤンキースの遠征中にヤンキー・スタジアムを間借り。
一時期はヤンキー・スタジアム周辺の不要な駐車場を取り壊し専用スタジアムを据える案も浮上していましたが、とうとう2022年にシティ・フィールドの隣(クイーンズ区ウィレッツ・ポイント)が建設地として決定。
完成は2027年を予定しており、座席数2万5000人のスタジアムだけでなく、周辺に250部屋分のホテルと2500部屋分の集合住宅も建設されるとのこと。
メッツの本拠地周辺が再開発される形になるので、ヤンキースは割を食った印象。
Esports
2017年、YGEはEsportsチームEcho Foxやその他Esports関連企業を所有するVision Esportsへ出資しパートナーシップを締結。ヤンキースの出資内容は不明だったものの、翌年には投資家に加えカージナルスやケビン・デュラント、オデル・ベッカムから総額3800万ドルを調達。
しかし、Esports業界の急激な成長と共に事業を拡大すると思った矢先、経営陣や投資家の間で内紛がスタート。2019年11月にはEcho Foxが解散し、Vision Esportsも空中分解。
先述のサイドビジネスと異なり大失敗に終わりました。
ちなみに、ヤンキースのファンベースはMLB30球団の中で最もEsportsを好んでいるとこのこと。