MLB年度別最高球速Top5
MLB年度別先発投手平均球速Top3
各年代のMLB(アメリカ野球)最速投手
Baseball Savantにデータが載っている2008年~2018年のMLBシーズン平均球速(速球・マイル表示)をまとめました。速球としてフォーシーム、ツーシーム、シンカーを対象としています。
2008年~2016年はPitch F/X、2017年以降はStatcastの計測結果。また、Pitch F/Xの初速はホームベースから50フィート地点での数値が計測されているのですが、BrooksBaseballのようにBaseball Savantでもリリースポイントでの球速になるように補正されているようです。
2008年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
フアン・モリーヨ | 99.1 | 0.00 | ー | 0.0 | 1.0 |
ジョエル・ズマヤ | 98.2 | 3.47 | 130 | 8.5 | 23.1 |
ブランドン・リーグ | 97.7 | 2.18 | 196 | 6.4 | 33.0 |
ジョナサン・ブロンクストン | 97.6 | 3.13 | 134 | 11.5 | 69.0 |
1位は元楽天のモリーヨ(東日本大震災で勝手に帰国したまま戻らなかった問題児)。ただモリーヨはこの年1試合しか登板していないので実質のトップはズマヤとなります
3位のリーグは投球割合のほとんどがシンカーであり、奪三振率こそ低いものゴロ率では67%を記録し防御率は優秀な数字でした。
2009年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
ヘンリー・ロドリゲス | 99.8 | 2.25 | 211 | 9.0 | 4.0 |
ジョエル・ズマヤ | 99.6 | 4.94 | 92 | 8.7 | 31.0 |
ジョナサン・ブロンクストン | 98.4 | 2.61 | 154 | 13.5 | 76.0 |
フアン・モリーヨ | 98.1 | 22.50 | 23 | 4.5 | 2.0 |
ダニエル・バード | 98.0 | 3.65 | 128 | 11.5 | 49.1 |
ロドリゲスとズマヤが野球史上初のシーズン平均球速160㎞(99.5マイル)越えを達成。ただ、ロドリゲスはたった4イニングしか投げていないので実質ズマヤが2年連続トップとなっています。
また、50イニング以上の平均球速トップは2年連続でブロンクストン。
2010年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
アロルディス・チャップマン | 100.3 | 2.03 | 206 | 12.8 | 13.1 |
ジョエル・ズマヤ | 99.7 | 2.58 | 164 | 8.0 | 38.1 |
ジョーダン・ウォルデン | 99.4 | 2.35 | 174 | 13.5 | 15.1 |
この年MLBデビューを果たしたチャップマンが史上初の平均球速100マイル以上を記録してトップに。
2位のズマヤはまだ25歳でしたがシーズン途中に肘を故障。2度とMLBに帰ってくることはありませんでした。
- 昨年1位のロドリゲスは99.4マイルで第4位。
- 鮮烈なMLBデビューを果たしたストラスバーグが先発ながらも平均97.9マイル(6位)を計測。このシーズン途中にトミージョン手術を受け、復帰後は故障前の球速が戻ることはありませんでした。
2011年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
ヘンリー・ロドリゲス | 98.7 | 3.56 | 108 | 9.6 | 65.2 |
アロルディス・チャップマン | 98.5 | 3.60 | 110 | 12.8 | 50.0 |
ジョーダン・ウォルデン | 98.2 | 2.98 | 127 | 10.0 | 60.1 |
前年に1年目で1位となり初のフルシーズンを迎えたチャップマンですが制球難(四球率7.4)に苦しみ平均球速は大きく下落。結果としてロドリゲスが2009年以来2年ぶりにトップに返り咲きました。
ただ、シーズン最高球速はチャップマンの104.1マイルとなっており、ロドリゲスの最高球速102.1マイルと大きく差があるので、実質的にはチャップマンがMLB最速投手だったとも言えます。
2012年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
ケルビン・ヘレーラ | 99.2 | 2.35 | 178 | 8.2 | 84.1 |
カーター・キャップス | 99.0 | 3.96 | 98 | 10.1 | 25.0 |
アロルディス・チャップマン | 98.4 | 1.51 | 274 | 15.5 | 71.2 |
チャップマンを抑えルーキーの二人が1位&2位となりました。とりわけ、シーズン76試合、84.1イニング登板とフル回転したにも関わらず1位となったヘレーラは立派。ただ、ヘレーラが所属していたKCのホーム球場カウフマン・スタジアムのPitch F/X測定システムは球速が出やすかったと言われています。
2位のキャップスは後に変則フォームで有名となりましたが、この頃はまだそこまで変則的ではありませんでした。
チャップマンは制球難が改善してリーグ屈指のクローザーに成長。昨年1位のロドリゲスは平均98.4マイルで第4位でした。
2013年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
ブルース・ロンドン | 100.0 | 3.45 | 122 | 9.4 | 28.2 |
ホセ・ドミンゲス | 99.2 | 2.16 | 173 | 11.4 | 8.1 |
アロルディス・チャップマン | 98.9 | 2.54 | 149 | 15.8 | 63.2 |
ケルビン・ヘレーラ | 98.9 | 3.86 | 107 | 11.4 | 58.1 |
22歳&MLB1年目の新星ロンドンがトップに。史上二人目の平均球速100マイル以上を記録しました。ただ、翌年の春季キャンプで肘を痛めトミージョン手術を受けることとなり、復帰後は2013年の球速が戻ることはありませんでした。
2位のドミンゲスはこの年がMLB1年目ですが、マイナーで禁止薬物使用により2回出場停止になった経験がある選手。
2014年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
アロルディス・チャップマン | 100.9 | 2.00 | 185 | 17.7 | 54.0 |
エリック・コーディエ | 99.9 | 1.50 | 247 | 13.5 | 6.0 |
ケルビン・ヘレーラ | 98.7 | 1.41 | 280 | 7.6 | 70.0 |
ハンター・ストリックランド | 98.7 | 0.00 | ー | 11.6 | 7.0 |
カーター・キャップス | 98.1 | 3.98 | 95 | 11.1 | 20.1 |
3年連続平均球速が98マイル台だったチャップマンが一気に球速を向上させ4年ぶりのMLBトップに。歴代最高記録となる奪三振率17.7を記録しました。
2位と4位にはロクでもない二人がランクイン。どちらもこの年がMLB1年目でした。
2015年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
アロルディス・チャップマン | 100.1 | 1.63 | 244 | 15.7 | 66.1 |
ケルビン・ヘレーラ | 98.8 | 2.71 | 155 | 8.3 | 69.2 |
カーター・キャップス | 98.7 | 1.16 | 274 | 16.8 | 31.0 |
チャップマンが2位以下に大差をつけ2年連続のトップに。Statcastの測定でも平均100.0マイルを記録しています。
2位と3位もお馴染みの二人でしたが、Statcastではコーディエが2位、ヘレーラが3位となっています。
2016年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
アロルディス・チャップマン | 101.1 | 1.55 | 276 | 14.0 | 58.0 |
マウリシオ・カブレラ | 100.7 | 2.82 | 148 | 7.5 | 38.1 |
アルキメデス・カミネロ | 98.6 | 3.56 | 117 | 7.4 | 60.2 |
Statcastにおいて史上最速の105.1マイルを計測しWS優勝も経験。Statcastの測定でも平均100.9マイル(フォーシーム)を記録しており、いろんな意味で彼の自己ベストのシーズンだったのでは?
2位にはMLB1年目のカブレラがランクイン。Statcastの測定では平均100.4マイル、最速103.8マイルを記録しています。ただ、制球難のためにMLBでプレーしたのはこの年のみ。今年(25歳)もマイナーでは四球率10.9を記録しており、もう2度とMLBでプレーすることはないでしょう。
3位は現巨人所属のカミネロ。日本ではパッとしない成績ですが、MLBでも球速が良いだけで投球内容は平凡でした。ちなみに、この年の平均球速98.6マイル=158.7km、最高球速102.2マイル=164.5kmですが、日本での平均球速は約153㎞、最速162㎞となっています。
2017年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
アロルディス・チャップマン | 100.0 | 3.22 | 142 | 12.3 | 50.1 |
チエゴ・ビエーラ | 99.2 | 0.00 | ー | 9.0 | 1.0 |
ジョー・ケリー | 99.0 | 2.79 | 162 | 8.1 | 58.0 |
トレバー・ローゼンタール | 98.5 | 3.40 | 125 | 14.3 | 47.2 |
チャップマンが4年連続でトップ。
マイナーで104マイルを計測したと言われるビエーラが1試合だけに登板。ただ、最速100.6マイルと個人的には期待外れの内容でした。
また、先発ながらシンダーガードがフォーシームで平均球速98.6マイルを計測しています。(ツーシームも含めると5位以下だったので上の表には含まれていません)
2018年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
ジョーダン・ヒックス | 100.5 | 3.58 | 108 | 8.1 | 77.2 |
アロルディス・チャップマン | 98.9 | 2.45 | 172 | 16.3 | 51.1 |
タイロン・ゲレーロ | 98.8 | 5.43 | 71 | 10.6 | 58.0 |
シンカーボーラーながら新星ヒックスがトップに。ただ、投球内容は大したことありませんから、来年以降は頑張ってほしいところ。
チャプマンは2月に30歳を迎え平均球速に関しては衰えが進行。5年ぶりに100マイルを切っています。
2019年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
ジョーダン・ヒックス | 101.1 | 3.14 | 136 | 9.7 | 28.2 |
アンドレス・ムニョス | 99.9 | 3.91 | 110 | 11.7 | 23.0 |
エマヌエル・クラッセ | 99.3 | 2.53 | 207 | 8.4 | 21.1 |
タイロン・ゲレーロ | 99.0 | 6.40 | 67 | 8.6 | 45.0 |
2018年トップのヒックスが更に数字を伸ばし101マイル台に到達したものの6月にトミー・ジョン手術を受けシーズン終了。MLB復帰は2021年シーズンになるはずですが・・・。
2位&3位にはマイナーで最速104マイルを計測したアンドレス・ムニョスとカットボーラーのエマヌエル・クラッセがランクイン。とりわけクラッセはカットボールでこれだけの球速を計測しているだけに、2000年代のマリアーノ・リベラ⇒2010年代のケンリー・ジャンセンに次ぐ2020年代に新たなカットボーラーの象徴となる可能性も。
ちなみに、チャップマンは平均98.3マイルまで球速が低下。
2020年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
ギャレット・クロシェ | 100.1 | 0.00 | ー | 12.0 | 6.0 |
ブルスダー・グラテロール | 99.2 | 3.09 | 139 | 5.0 | 23.1 |
ドミンゴ・タピア | 98.8 | 2.08 | 241 | 8.3 | 4.1 |
ジェイコブ・デグロム | 98.6 | 2.38 | 178 | 13.8 | 68.0 |
ブレイク・シーダーリンド | 98.4 | 4.5 | 107 | 9.0 | 4.0 |
ハビー・ゲラ | 98.4 | 10.13 | 43 | 8.1 | 13.1 |
短縮シーズンだったためイニング数が少なく参考記録感は否めません。
クロシェの平均100マイル超とデグロムの上位ランクインがハイライトかなと。
2021年
選手名 | 球速 | 防御率 | ERA+ | 奪三振率 | イニング |
エマヌエル・クラッセ | 100.2 | 1.29 | 340 | 9.6 | 69.2 |
ブルスダー・グラテロール |
99.9 | 4.59 | 90 | 7.3 | 33.1 |
アンドレス・ムニョス | 99.6 | 0.00 | ー | 13.5 | 0.2 |
ホセ・アルバラード | 99.4 | 4.20 | 100 | 11.0 | 55.2 |
新星エマヌエル・クラッセがカットボーラーながらもフルシーズンをプレーした選手としてはアロルディス・チャップマン、ジョーダン・ヒックスに続き史上3人目となる平均100マイル超を達成。
このようにまとめてみると、平均球速に関してはやはり20代前半~中盤の若手選手が優秀な数字を残しやすいことが分かりますし、非常に選手の入れ替わりが早いことも伺えます。その中で10年近くに渡ってトップクラスの球速を維持しているチャップマンの希少価値はもっと評価されてもいいのでは?
この記事に合わせて「年度別最高球速」、「年度別先発投手平均球速」についての記事も書こうと思います。