歴代のMLB最速投手




3ページ目は1970~2010年代の先発投手




先発投手


1970年代

1976年から各球場にスピードガンが本格的に導入されました。

J.R・リチャード

J.R. Richard:右投:1971年~1980年

時代離れした203㎝の巨体から投げ込まれるフォーシームは1978年に100マイル、1980年(オールスターゲーム)を計測。スライダーですら最速93マイルを計測しています。

しかし、1980年の後半戦におけるチームの医療スタッフの診断ミスにより同年の7月が現役最終登板に。

同時代にはノーラン・ライアンもいますが(というかアストロズではチームメイトに)、自分のリサーチの限りではいい勝負かなと思います。(対戦相手などの証言はライアン、スピードガンの記録はリチャードって感じかな。)

他の候補選手

ジョン・ディーアクイスト

John D’Acquisto:右投:1973年~1982年

日本では全くの無名ですが数々の最速伝説を残した知られざる速球投手。先発投手とリリーフ投手のどちらにするか迷いましたが若いころは先発投手だったのでこちらの項に入れています。

ディーアクイストのエピソードで最も有名なのは1974年6月23日の話。ドジャース戦で先発したディーアクイストは6回を3失点で抑えましたが、ドジャースタジアムに設置されていたレーダーガンで102.4マイルを計測したと言われて(自称して?)います。まあ、このレーダーガンがどのようなもので精度がどれほどなのかは全く分かりませんが...。

1975年に肘を痛め手術を受けるも翌年の1976年には98マイルを計測。(詳細は不明なものの)1983年(31歳)にはAAAの試合で100マイルを計測したようですが、このシーズンの序盤でまたもや肘を痛め2度目の手術を受けましたが引退となりました。

引退後は1996年に投資詐欺により懲役63ヶ月の有罪判決。1999年にも更なる投資詐欺の罪により懲役刑55ヶ月を追加されています。

ヴァイダ・ブルー

Vida Blue:左投:1969年~1986年

100マイル近いとも言われた剛速球を武器に活躍した1970年代前半の最速先発左腕。

ノーラン・ライアンのライバルであったピート・ローズはブルーについて「最もハードな投手」とコメントしています。全盛期にまだスピードガンが導入されていなかったのは残念。

フランク・タナナ

Frank Tanana:左投:1973年~1993年

1970年代前半の最速先発左腕がブルーなら1970年代後半の最速先発左腕はこのタナナかロン・ギドリー。明確なソースはありませんが100マイルを計測していたと言われています。

全盛期は前述したようにノーラン・ライアンと剛腕先発1&2番手コンビを組んでおり「Tanana and Ryan and two days of cryin.(タナナとライアンと涙の2日間)」という言葉が生まれたほど。

しかし、20代中盤で急激に劣化(&球速低下)。1980年代以降はノーラン・ライアンと正反対のキャリアを歩んでいます。

ロン・ギドリー

Ron Guidry:左投:1975年~1988年

先程はボブ・ターリーとライン・デュレンのコンビをセベリーノ&チャップマンと比較しましたが、この時代にもギドリーとグース・ゴセージが同じようなコンビを組みました。当時には「ギドリーとゴセージのどちらが速いのか?」というNYタイムズの記事も。

私が知っている限りでは最速98マイル。

デビッド・クライド

David Clyde:左投:1973年~1979年

史上最高の高校生投手とも言われドラフト全体1位で入団するとチームの話題作りのため18歳でMLBデビュー。急ぎ過ぎた育成のためにプロキャリアを通して故障に苦しみ大成することはありませんでした。

今でも当時最速の投手であったと信じる人が多く、日本で言う所の江川卓みたいな感じかな?




1980年代

ノーラン・ライアン

Nolan Ryan:右投:1967年~1993年

言わずと知れた史上最高の速球王。

ライアンの球速記録に関しては以下の記事にまとめているので是非ご覧ください。

ノーラン・ライアンの球速の変遷 1974年~1993年

他の候補選手

ホアン・ベレンゲール

Juan Berenguer:右投:1978年~1992年

180㎝と小柄でぽっちゃり体型ですが剛速球は天下一品。

ダルコウスキーの項でも書いたドキュメンタリー映画「Fastball」の中で、ウェイド・ボッグスは「見た中で最速の投手は誰か?」という質問に対しベレンゲールの名前を挙げ「AAAの試合で101.5マイルを計測した」とコメントしています。恐らく1980年(25歳)の時の試合でしょう。

ベレンゲール本人は99マイルを計測したことがあると2008年のインタビューで語ったことがあるので、とにかく100マイル近い剛速球を投げていた可能性は高そうです。

ちなみに、1985年のスカウティングレポートでは平均90マイル台前半と書かれていたようですし(この頃は先発投手)、1992年のカードには36歳ながら94マイルを計測したと書かれています。

ロジャー・クレメンス

Roger Clemens:右投:1984年~2007年

たしか100マイルを計測したのは1990年代~2000年代のドーピング使用後であり80年代の最速は98マイル程度だったはず。1986年の20奪三振試合でも最速は97マイルでした。

不調だった1989年のホワイトソックスMLBスカウトによるスカウティングレポートでは速球の球速が86~91マイル、20-80スケールで速球の評価が70~75とされてますね。

ドワイト・グッデン

Dwight Gooden:右投:1984年~2000年

クレメンスと同じように初めて100マイルを計測したのは1990年代であり、全盛期の1980年代における最速は98マイルのはず。そもそも1980年代のスピードガンがアレだったんでしょうね。




1990年代

ランディ・ジョンソン

Randy Johnson:左投:1988年~2009年

40歳を超えても102マイルを計測したレフティー・グローブと並ぶ史上最速最高の先発左腕。

2002年(38歳)の時に平均94.1マイルを計測しているので常識的に考えて1990年代のおけるジョンソンの平均球速は95~96マイルと推測されますが、そもそもジョンソンに常識が通用するのか?

上の動画は1994年の試合で最速は98マイル、平均は94マイルとなっていますが、Youtubeにある他の1990年代の試合では球速はもっと遅め。シンプルにジョンソンが最速だったのは4年連続サイ・ヤング賞受賞時だったのかもしれません。より高い位置から投げていたアマチュア時代の方が速かったという眉唾物の話もありますが。

他の候補選手

ケリー・ウッド

Kerry Wood:右投:1998年~2012年

1997年のAAA時代から100マイルを計測しており、もちろんセンセーショナルな活躍を見せたMLB1年目でも100マイルを計測。もちろん史上最高のピッチング・パフォーマンスとも呼ばれる20奪三振試合でも100マイルを計測。この試合では速球は95マイル以下を計測せず平均でも97~98マイル程度だったと記憶しています(どっかの記事で見た)。

ノーラン・ライアンと同じテキサス州アーヴィング生まれであり正真正銘ノーラン・ライアンの後継者だったはずですが1年目ですでに腕を痛め1999年は全休となり球速も低下。それでも、復帰後はMLBトップクラスの平均球速を残していましたね。




2000年代

ウバルド・ヒメネス

Ubaldo Jiménez:右投:2006年~2017

2008年~2010年にジャスティン・バーランダーやフェリックス・ヘルナンデスらを抑え先発投手として3年連続でMLBトップとなった剛腕。この3年間の平均球速は96.5マイル前後であり最速は101.3マイルでした。

(2007年にPITCH f/xで102マイル以上を計測していますが2007年のPITCH f/xは計測記録がMLB全体で明らかにおかしく参考記録として扱うべきです。)

他の候補選手

フェリックス・ヘルナンデス

Félix Hernández:右投:2005年~

18歳(2004年)ですでに97マイルを計測しており、19歳でMLBデビューを果たすとそこから3年連続で平均95.5マイル前後を記録。もちろん100マイルも計測しています。

その後は投球内容は順調に向上していったものの球速は毎年のように緩やかに低下。ウバルド・ヒメネスと同じように30歳代前半ながらもMLBの平均球速を大きく下回るまで衰えました。

A.J・バーネット

A.J. Burnett:右投:1999年~2015年

2000年代を通して平均95マイル前後を記録した剛腕。

2005年には100マイル以上を17度も計測し最速は101マイル(2002年と2005年に計測)。30歳を超えても100マイルを計測するなど意外と剛速球投手としては息の長い選手でした。




2010年代

この年代からマイナーリーグの剛腕投手の球速計測データなども増えJorge GuzmanやMichael KopechはMLBトップクラスの投手とも比較できるほどの球速を計測していましたが、そもそもマイナーリーグの計測制度はMLBと比べ物になりませんしそういう選手も含めるとキリがないの今回は割愛。

ノア・シンダーガード

Noah Syndergaard:右投:2015年~

2016年シーズンにはPITCH f/xにおいて先発投手史上最速記録となる平均98.5マイルを記録(Statcastでは平均98.1マイル)。その前年には最速102.3マイルを計測(PITCH f/x)しています。

最近はその頃よりも1マイル程度球速が低下し昨シーズンもルイス・セベリーノに僅かに敗れていますが、今シーズンはセベリーノの故障によりシンダーガードがトップを独走している状況。

他の候補選手

ジャスティン・バーランダー

Justin Verlander:右投:2005年~

2000年代か2010年代のどちらにするか迷いましたが球速的には2010年~2011年ごろがベストだったので2010年代に組み込みました。

平均球速ではヒメネスやフェリックス・ヘルナンデス、アレクシー・オガンドらに敗れ先発投手2位には4回もなりましたがトップには1度も立てませんでした。しかし、2009年~2012年の4年間で101マイル以上を46回も計測(PITCH f/x)しておりもちろんMLBで断トツの数字。ここぞという時に最も速い球を投げられる投手と言えそうです。

35歳を超えても先発投手としてMLBトップクラスの球速をキープした選手は(トーピングを除くと)スピードガン時代においてノーラン・ライアンとランディ・ジョンソンしかおらず、バーランダーは速球派先発投手として20年に一度レベルの逸材だったと考えています。

ヨーダノ・ベンチュラ

Yordano Ventura:右投:2013年~2016年

現代の野球界では小柄ともいえる体格(身長183㎝)でしたが、先発投手としてMLB史上初めて平均球速97マイル以上を記録。MLBデビュー戦では先発投手として史上最速となる102.6マイルを記録しています。

ただ、試合が行われたカウフマン・スタジアムのPITCH f/xは明らかに他球場と比べて球速が出やすかったと言われておりカウフマン・スタジアム以外での最速は101.3マイルとなっています。流石のPITCH f/xやStatcastでも球場ごとにそこそこ大きな誤差があることは知られており(球場ごとにマウンドの高さやボールの湿度が違うことも影響しているのかもしれませんが)、そういう誤差も考慮してデータを扱うべきですね。

ルイス・セベリーノ

Luis Severino:右投:2015年~

2017年からMLB最速の先発投手となっていますが今年の春季キャンプでとうとう肩を故障。残念です。

意外なことに101マイル以上を計測したのは1回しかないんですよね。

この他にも2013年からほぼ毎年のように平均97マイル前後を記録し最速102.3マイルも計測したネイサン・イバルディや、1年目に平均球速97.9マイルを記録し故障さえなければほぼ間違いなく2010年代の剛腕投手の象徴となっていたはずのスティーブン・ストラスバーグなども候補に入るかもしれませんね。

次ページは1970~2010年代のリリーフ投手

コメント

  1. バエズ兄貴 より:

    コペックがいないのに大谷がいて草。