右肩の故障によりルイス・セベリーノのシーズン残り全休が決定し、先発ローテに穴が空いているヤンキース。
今回のトレードデッドラインでは余りにもの高騰にルイス・カスティーヨへ手が出ず、他にはホセ・キンターナや大谷翔平のトレード交渉を行っているとの報道もありましたが、結果的には大方の予想通りフランキー・モンタスに落ち着きました。
モンタスに加えリリーフ投手のルー・トリビーノも対価として獲得しており、傘下No.1投手プロスペクトであるケン・ワルディチャクをメインピースとしてプロスペクト4人を放出。
4人の詳細なプロフィールについては本記事後半で取り上げています。
ヤンキース | 🔁 | アスレチックス |
フランキー・モンタス | ケン・ワルディチャク | |
ルー・トリビーノ | ルイス・メディーナ | |
クーパー・ボウマン | ||
JP・シアーズ |
初のフルシーズンとなった昨シーズンはサイ・ヤング賞6位に入る大活躍を見せ、オフシーズンには放出が有力視されるも保有期間が2023年まで残っているためかマット・オルソンやショーン・マナエアらを尻目に残留したモンタス。
今シーズンも引き続きローテ1~2番手級の活躍を見せトレードデッドラインの目玉投手の1人となるはずでしたが、7月上旬に肩の炎症を発症し約2週間離脱。
何だかんだデッドラインには間に合ったもののトレードバリューがある程度下落するのは当然の話で、ヤンキースが差し出したパッケージのトータルバリューからもそれが垣間見えます。
登板数 | 投球回 | 防御率 | K/9 | BB/9 |
19 | 104.2 | 3.18 | 9.4 | 2.4 |
WHIP | wOBA | xwOBA | FIP | cFIP |
1.14 | .285 | .301 | 3.35 | 84 |
DRA | SIERA | rWAR | fWAR | WARP |
4.13 | 3.41 | 1.7 | 2.0 | 1.9 |
昨シーズンは防御率3.37に対しxERAが3.98、今シーズンも3.18に対し3.72と実成績⇔期待値に乖離があり、Statcastスタッツ信者の私としては好みでないタイプ。
ただ、今シーズンはシンカー気味のスプリッター改良によりゴロ打球が増加していて、MLB屈指の内野守備力を誇るヤンキースにはマッチ。
低めのコーナーへのコマンドが優れている投手なだけにシェーン・マーフィーのフレーミングに大いに助けられていたはずですが、高めのフレーミングが得意なマーフィーより低めのフレーミングが得意なトレビーノの方が相性〇かも。
決め球のスプリッターに続く第2・第3の変化球であるスライダーとカットボールは複数の種類(グリップ)があるのか一貫性に欠けており、これはピッチデザインを得意とするヤンキースが嫌うところ。遅くとも来シーズンの開幕前までには抜本的改良が加えられることでしょう。
また、今シーズン年俸が500万ドル(ヤンキースの負担分は約180万ドル)、来シーズンの予測年俸が900万~1000万ドルとリーズナブルである点は大きな魅力。
良くも悪くもルイス・セベリーノの来季球団オプション1500万ドル行使の可能性が消えジェイムソン・タイロンもシーズン終了後にFA権を取得する中で、このタイミングに来シーズン先発表ローテの一角を確保したことはポジティブに捉えるべきか?
ルー・トリビーノは今シーズンここまで防御率6.00台と苦しんでいるものの、BA
BIP.451・被DRS-6・と運や守備に恵まれておらず、xERA4.31・FIP3.83・xFIP2.91・SIERA2.88と成績予測に長けたスタッツでは平均以上の数字を記録。
最近のヤンキースが大好きな高速シンカーとスイーパーを武器とするピッチャーですが、約1ヶ月ほど前からカットボールを改造した模様で、保有期間残り2年半の間においてヤンキースはハイクオリティな球種のレパートリーを絞るなどのブラッシュアップを行うことでしょう。
まあ、アスレチックスが放出したのもロースター枠の確保とサラリーダンプが理由と考えられ、ヤンキースにとっても”改造しがいがあるオマケ”みたいな存在でしょうから、ダメそうならシーズン終了後にでも切っちゃえばいいだけ。
ちなみに、6月頃から被打球内容が大きく悪化中。
トレードの良否について
フランキー・モンタスがFAとなる2023年シーズン終了までに残すであろうWARは約4.0(今シーズン残りに1.0、来シーズンに3.0)であり、トレードデッドラインにおいてこの数字を金額に換算すると4000万~4800万ドル。
2023年シーズン終了までにヤンキースが支払うサラリーは上記の通り約1100万ドル。
ここから更に7月の故障によるリスク(数百万ドルぐらいかな?)も差し引くと、今回のトレードデッドラインにおけるモンタスのトレードバリュー(市場価値)は2700万~3300万ドル程度となります。
また、ルー・トリビーノのトレードバリューはゼロに近いので存在を無視しても構わないでしょう。
反対にヤンキースが放出したプロスペクトのトレードバリューはケン・ワルディチャクが2000万ドル(FV50)、ルイス・メディーナが700万ドル(FV45)、クーパー・ボウマンが300万ドル(FV40~42.5)、JP・シアーズが200万ドル(FV40~42.5)と私個人は見積もっていて、ヤンキースが差し出したパッケージ全体のバリューは約3200万ドルかと。
つまり、単純な損益計算上では「モンタスのトレードバリュー」≒「プロスペクト4人のトレードバリュー」となる対価なトレードと考えらます。
ただ、メディーナとシアーズは既にMLBロースターへ追加されているだけでなく、ワルディチャクも今シーズン終了後にルール5ドラフト対象となるなどフレキシブルさに欠ける投手プロスペクトばかり。更に、ボウマンはショートのプロスペクトが充実しているヤンキース傘下において明らかな余剰要員。
”投手プロスペクトの整理が必要であったヤンキース”と”投手プロスペクトが不足しているアスレチックス”のニーズが運よくガッチリハマってしまったようですが、マリナーズがルイス・カスティーヨ獲得に際しレッズへ行ったオーバーベットや近年のトレードデッドラインの市場高騰を踏まえると、やはりヤンキースは上手く立ち回ったように感じますね。
ちなみに、Baseball Trade Valuesではヤンキースが大きく得をしたと評価されていますが、ケン・ワルディチャクが明らかに過小評価されており、正しい損益計算とは思えません。
放出した4人のプロスペクトについて
ケン・ワルディチャク
24歳6か月:左投先発:AAA
選手ページ:MiLB公式・Baseball Reference・FanGraphs
2022年夏ランキング:第3位
FB | SL | CB | CH | Cmd |
60 | 60 | 40 | 45 | 40 |
FB/be | FB/vel | SL/vel | CB/vel | CH/vel |
98 | 94~95 | 82~84 | 78~80 | 82~84 |
コロナ休止中に急成長を見せ昨シーズン大ブレイク。さらに、今シーズンは平均超のスライダーをプラスピッチのスイーパーへ改良し、フォーシームの球速も1~2マイル程度上昇。
AA~AAAにて支配的なピッチングを続け、ヤンキース傘下No.1投手プロスペクトと評されるトッププロスペクトへ変貌を遂げました。
ただ、投球フォームの再現性に欠けるためかコマンドに苦しむ登板日も多く、リリーフ投手に落ち着くリスクが高いピッチャーとして評価が大きく分かれているのも事実。
個人的には昨シーズンまでリリーフ向きだと考えていたものの、今シーズンの急成長を受け”先発投手適正アリのFV50・全体トップ75~100級プロスペクト”だと手のひら返しました。
何せよ投手のFV50級プロスペクトがいないアスレチックス傘下では引き続き傘下No.1投手となりますね。
ルイス・メディーナ
23歳3か月:右投先発:AA
選手ページ:MiLB公式・Baseball Reference・FanGraphs
2022年夏ランキング:第9位
FB | SL | CB | CH | Cmd |
70 | ー | 65 | 55 | 35 |
FB/be | FB/vel | SL/vel | CB/vel | CH/vel |
102 | 97 | ー | 80~82 | 90~92 |
若干15歳で100マイルを計測したマイナーリーグ屈指の剛腕。
フォーシーム、カーブ、チェンジアップ3球種のクオリティは間違いなく最上級ですが、平均を大きく下回るコマンドに向上の兆しは見られず、ワルディチャクと比べても遥かにリスキー。
結局ヤンキースは7年かけても大成させられなかった訳ですが、アスレチックスが何の計算も無しに彼に手を出したはずはなく、スカウティングの中で何かしらの改善策を見出しているのでしょうね。
クーパー・ボウマン
22歳6か月::セカンド:High-A
選手ページ:MiLB公式・Baseball Reference・FanGraphs
2022年夏ランキング:第17位
Hit | Power | Run | Arm | Field |
40 | 40 | 65 | 40 | 55 |
走攻守においてハイフロアーな堅実型。
今後の成長のカギは、ポップフライなどのウィークフライが多くそのプラス以上の走塁をインプレーにて活かすことができない過剰に高弾道なバッティング改善ですが、野球IQが高い選手ですから今からでも十分間に合うと思いますね。
ショートのプロスペクトが充実しているヤンキース傘下ではセカンド起用を受けており、”アスレチックス傘下でショートに再挑戦させてはどうだろうか?”みたいな意見も目にしましたが、肩が弱いのでショートは無理だと思います。
JP・シアーズ
26歳5か月:左投先発兼リリーフ:MLB
選手ページ:Baseball Savant・Baseball Reference・FanGraphs
2022年夏ランキング:第24位
FB | SL | CB | CH | Cmd |
50 | 35 | - | 40 | 60 |
FB/be | FB/vel | SL/vel | CB | CH/vel |
97 | 94 | 81 | - | 84 |
コロナ休止明け後に球速アップを見せ傘下トップ30級のプロスペクトに。
今シーズンはMLB昇格を果たすと便利屋として幅広いロールにて好投を披露し、AAA降格時の投球内容も同クラストップ級。シーズン前半戦にガチガチの先発ローテを誇っていたヤンキース所属でなければ、MLB先発ローテに定着しても驚きではありません。
ただ、今回のパッケージの中では圧倒的に堅実なプロスペクトですが、良くも悪くも天井は見えていますし、アナリティクスやピッチングデザインに興味がないタイプの選手なのでヤンキース指導陣との相性が✖の可能性も。
ハイパフォーマンスを披露している今のうちに放出して正解だと思いますね。
コメント
ブログ主さんのランキングでいえばワルディチュク、ウェズネスキ、メディーナ放出後の傘下ナンバーワン投手はウィル・ウォーレンになるでしょうか。順調にいけば来季後半にもメジャー昇格も有り得ますかね?
世間的ではヨエンドリス・ゴメスがNo.1と見なされているかもしれませんが、個人的には彼のスぺ体質とトラックレコード欠如が信用できません。
反対に完成度とフロアーが高いウォーレンのETAは2023年でしょうね。
個人的には可もなくかな
可もなくでしょ